9話 ギルドマスターに会った
「すいません。査定終わりましたか?」
冒険者ギルドに戻ってきた暁は、ギルドの出入口でキョロキョロしている光莉を見つけ、声を掛けた。
「あっ!オオカミさん。探していました!!査定は終わっているので、急いで着いてきてください」
光莉は暁を見つけると、暁の手を掴んで引っ張っていく。
暁は光莉に引っ張られエレベーターに乗せられた。
光莉はエレベーターに乗ると、最上階の20階を押した。
「北条さん。今どこに向かっているんですか?」
嫌な予感がした暁は光莉に質問する。
「冒険者ギルド日本支部、ギルドマスターの所です」
「帰ってもいいですか?」
光莉は暁の嫌そうな雰囲気を感じ取ったのか、慌てて説得してくる。
「大丈夫です!決してオオカミさんにとって悪い事にはなりませんから!絶対大丈夫ですから!」
「いや、でも...」
「絶対に!絶対に大丈夫です!」
今にも泣きそうな顔で説得してくる光莉を見て、暁は諦めた。
「分かりました。でも何かあれば直ぐに帰りますよ」
「ありがとうございます!」
暁と光莉が話している内に、エレベーターは最上階に到着した。
光莉は暁を先導し、豪華な扉の前で止まる。
コンコンコンコン
「入りたまえ」
「失礼します」
光莉がノックすると中から男の声がした。
光莉は扉を開け、暁に入室を促す。
暁が部屋に入ると部屋の奥のデスクに1人の男が座っており、その横には春香が立っていた。
「君が仮面の冒険者か。いや、ギルドには登録していないんだったな。まぁ座りたまえ」
暁はデスクの手前に設置されているソファーに腰を下ろす。
デスクに座っていた男が暁の前のソファーに座る。
光莉と春香は男の後ろに立たったまま話を聞いている。
「まずは自己紹介からしよう。私の名前は南重信。ここ、日本冒険者ギルドのギルドマスターをしている。後ろの南春香の父親だ。春香からある報告を受けて君を呼んでもらった」
ギルドマスターは春香に指示を出し、机の上にいくつかのアイテムを持ってきた。
春香が持ってきたアイテムは、先程暁が査定をお願いしたアイテムだった。
「いくつか質問させて欲しい。まずこれはどこで手に入れた?」
ギルドマスターはキングブラックウルフを毛皮を指差し質問してきた。
「もちろんダンジョンのモンスターからドロップしました」
「春香は鑑定のスキルを持っている。鑑定は珍しくて、アイテムの査定ができる人がなかなかいなくてね。春香には査定場で働いてもらっている。春香に聞いたが、これはキングブラックウルフの毛皮と出ていた。しかし、冒険者ギルドでギルドブラックウルフという名のモンスターは確認されていない」
暁は内心驚き、焦っていたが仮面のおかげでバレる事はなかった。
「名前からしてブラックウルフの上位種だがブラックウルフも現在確認されているモンスターの中でかなりの強さだ。その上位種を倒すことの出来るものは限られるだろう」
暁はギルドマスターの話をただ無言で聞く。
「そしてこの獣王の魔石だ。私は今までギルドマスターをしてきてこれ程の大きさの魔石を見たことが無い」
ギルドマスターは暁の目を見つめ質問を続ける。
「君は一体どこでこのアイテムと魔石を手に入れたんだい?」
「答えられません」
「何故だ?」
「俺は自由に冒険者として活動したいと思っています。このアイテムの事を話したらそこから色々とバレそうなので」
「なるほど。だからギルドにも登録していないということか」
「そういう事です」
ギルドマスターはため息をつくとさらに質問を続ける。
「冒険者ギルドは個人情報を外部に漏らす事は無い。君が活動する上で冒険者ギルドに所属するメリットは大きいぞ」
ギルドマスターは暁を説得しにくる。
「例えばランキングに合わせてギルドのランクが上がり、ランクが上がればアイテムの買取価格も上がるし、ダンジョンの詳細な地図も手に入る」
ギルドマスターの話を聞き暁は悩んでいた。
ダンジョンの詳細な地図は欲しい。
地図があれば危険も減り、攻略も早くなる。
暁が悩んでいる事に気づいたギルドマスターはさらに説得してくる。
「他にもギルドに所属すれば他からの勧誘もギルドが壁になって守れる。ギルドは世界で運営している組織だ。それ故にどの国、どの組織にも属していない。君が望まなければ自由は守られる。ギルドは冒険者に対しての命令権は無いから無理やり仕事をさせられる事は無い」
「ひとつ質問してもいいですか?」
「ああいいぞ」
「なぜギルドマスターはそこまで俺を勧誘するんですか?」
暁の質問にギルドマスターは答える。
「日本はダンジョンが出来た際、動き出しがかなり遅かった。その所為で日本の冒険者の実力は他の国に比べてかなり低い。獣王やキングブラックウルフの魔石を見る限り君はかなりの実力者の様だから、ぜひギルドに登録してほしい」
暁は悩んだ末、答えを出した。
「分かりました。ギルドに登録します」
「ほんとうか!!では早速...」
「待ってください。登録の前に一つお願いがあります」
「分かった。私に叶えられることならば大丈夫だ」
「では、俺とギルドマスターで契約をしてください」
「契約?その内容は?」
「俺の望まない情報を公表しない事です」
「個人情報は基本的に外部に漏らす事は禁じられているから問題ないはずだ」
「念の為、契約書を書いて下さい」
「分かった。こちらからも契約内容でお願いしたい事があるのだが1ついいか?」
「内容によります」
「君が手に入れたアイテムを売る時、冒険者ギルドに優先的に回してもらえると助かる。もちろん、冒険者ギルドよりも高値を付ける者がいる場合はそちらに売ってもらってもいい」
暁はギルドマスターの提案を受ける事にした。
「分かりました。では俺の情報を公開しない対価としてアイテムは冒険者ギルドに優先するようにします」
「ああ、それで頼む。春香、契約書を持ってきてくれ。それと冒険者登録の紙も頼む」
こうしてギルドマスターとの契約は結ばれ、暁は冒険者になった。




