4話 ダンジョン脱出
ブラックタイガーを倒した暁は、そのまま広場で休憩することにした。
「いったいどれぐらい深いんだ?」
現在、世界で最も攻略が進んでいるダンジョンは、アメリカのワシントンにあるダンジョンである。
そのダンジョンは今、35階層を攻略していると報道されていた。
「もしかしたら35階層よりも深いってこともあるよな。そんなに深い階層で戦えてるのっ
てやっぱり当たり判定補正と隠密のおかげだな」
ダンジョンに落ちた時の暁のランキングが325位、今は197位だった。
「ランキングの上がるスピードが早すぎる。って事は今までのモンスターがかなり強いって事だよな」
モンスターを倒すと経験値のような物が貰える。そしてその経験値によって人並み外れた力を手に入れる事が出来る事は暁も知っていた。
まさにゲームのようにレベルアップしていくのだ。
もしも、強くなる以前の暁がキングブラックウルフと戦っていれば、たとえスキルがあったとしても勝つことは不可能だったであろう。
「考えても答えは出ないな。幸いこのダンジョンは一本道で迷う事も無いし、スキルのおかげでモンスターも問題ない。どんどん進んでいくか」
暁は休憩を終え、階段を登っていく。
◇
ブラックタイガーを倒してから20階層程登った。
上の階層に行くにつれてモンスターは弱くなり、階層の広さも狭くなっていった。
それにより、暁の進行スピードもどんどん早くなっていく。
「人の声か?」
ここにたどり着くまでまる1日掛かった。
暁は念の為、隠密を発動させ階段を上がる。外がどういう状態になっているか分からないからだ。
階段を上がると明るい光が目を指す。
「やっと外に出られた」
外はダンジョンの入口を武装した自衛隊が取り囲んでいた。
周りにはテントやアンテナの様な物もあり、モンスターが外に出てこないように監視しているようだ。
「自衛隊に保護してもらうか、そのまま立ち去るか」
もし、このまま自衛隊に保護してもらえば、暁の強さ、スキルなどを聞かれるだろう。
そうなれば暁の力を知った政治家共にいいように利用されるかもしれない。
それなりの見返りはあるかもしれないがそれ以上の任務、責任を負わされるかもしれない。
それならフリーの冒険者になった方が断然いいような気がしてくる。
「とりあえず、見つからないように帰るか」
幸いマントの隠密スキルにより、自衛隊は暁を見つける事は出来ないようだ。
暁は隠密を発動させたまま、自衛隊の包囲をくぐり抜け、離れた位置まで行き、スーツに着替え、タクシーに乗って家まで帰ったのだった。
◇
暁がダンジョンから抜け出し家に帰った後、獣王ダンジョンでは大変な事が起きていた。
「佐藤2尉、ダンジョンへの突入準備、完了しました!」
部下の報告を聞き、佐藤2尉は椅子から立ち上がり、宣言する」
「これよりダンジョン内に突入する!第1目標はダンジョン発生に巻き込まれた可能性のある一般市民の救出である。不要な戦闘は回避するように!」
佐藤2尉の宣言を聞いた自衛隊員達はダンジョンの入口に集まり、いつでも突入できるようにする。
佐藤2尉が突入の号令を掛けようとした瞬間。
「ゴロゴロ!ガンッ!バン!」
大きな音を切っ掛けにダンジョンの入口が突然、崩れ落ちた。
慌てた自衛隊員達は重機を集めダンジョンの入口を掘り返したが、表面の岩を取り除いたその下には、今までダンジョンがあったのが嘘だったかのようにないも無くなっていた。
「佐藤2尉!ダンジョンがあったと思われる形跡が一切ありません!」
慌てた部下の報告を聞き、頭を抱える佐藤2尉。
それもそのはず。今まで発生したダンジョンが崩壊したという報告は世界でどこでも上がっていない。
つまり、日本が世界で初めてダンジョンを破壊したとして、世界中から注目を集める事になるだろう。
「いったい何と報告すればいいのだ」
そう呟きながら佐藤2尉は頭を抱えた。
日本が世界中から注目される事、その理由が自分にあるなど、当の本人はまだ知らない。




