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カルミアの魔女  作者: 黒目
第三章 絶対私は私に打ち勝つ!
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第十六話 男手一つの子育てパパさんの悩み!読書家キャバ嬢式カウンセリング開始!

非常に投稿が遅くなってしまい。もうしわけございません。

本日から「カルミアの魔女」投稿再開します。

「大丈夫です!あ、あの!解決できるかわかりませんが、私にお任せください!」


「え!え、あ、あの、そ、そうか(汗)、よ、よろしく頼む」


私が突然手を握ったので真一の父親は少し驚いてしまった。しかしそんなことはどうでもいい。それほど今の私の好奇心が抑えられない。ではここまでに至った経緯を説明しよう。





「じゃあ次の漢字はこれ、どういう意味かわかるかな?」


「ん~~~・・・」


私はいつも通り真一の家庭教師の仕事をしていた。真一は真面目だが、暗記系の科目になると中々苦戦するようだ。その日も中々授業が進まず、漢字の復習だけで修行が終わった。


「あ、今授業終わりました」


「お、そうか、ありがとうございます田井中先生」


リビングで父親が新聞紙を広げて寛いでいた。そしていつも通り、家庭教師の授業で見た真一の成果を親御さんに報告する。


「なるほど、真一はそういうところが苦戦していたんですね。僕も勉強を見ていてやったら少しは改善するかもしれないんですが、いつも先生に頼りっぱなして、ありがとうございます」


真一の父親は深く頭を下げる。その後も進捗の説明をして、そろそろおいとましようとしたその時だった。


「じゃあ、私はこれで失礼致します」


「あ、先生、ちょっといいかい?もう少し時間ある?」


「え・・・な、なんでしょうか?」


なぜか神妙な顔つきでその場に引きとめられる。強面の顔つきのせいか、少し緊張が走った。


「あ、これは私個人の問題だ。だから真一のことは関係ない。そして個人で抱えている問題があって勤勉な貴方に聞きたいことがある。ここは一つ中年のおじさんの悩みを聞いてやってはくれないだろうか?」


「は、はぁ・・・なんでしょうか?」


真一の父親は神妙な顔つきだが、私の緊張を察して優しく声をかけてくれる。


「そうか、よかった。あ、何か暖かいものでも飲むかい?ココア、コーヒー、何でもあるよ」


「じゃあコーヒーで」


私の前に暖かい飲み物が注がれた。私はリビングの席に着き、一口飲んでホっとつく。


「どう?おいしいかい?」


「あ、はい、美味しいです!」


コーヒーを飲みなれていない私でも少しお高い物であることが理解できた。この芳醇な香りは市販のものでは出せない。


「そうか、それはよかった。会社の同僚が鳥取と島根の出張に行ってね、そのお土産としてもらったものなんだ。うん・・・うまい」


「ホント、美味しいですね」


真一の父親も一口飲んで息をつく。私も釣られてまた一口飲む。うん、美味しい。ただ彼の顔を見ると、その神妙な顔つきはまだ崩れておらず、何か言いたいことがありろうな表情をしている。私は勇気を持って切り出した。


「あの、今日はどういった話ですか?真一君のこと以外になると私から話せることは少ないと思うのですが・・・」


「あ、ああ、そうだね」


彼はさらに一口コーヒーを口に含む。そして5分ほど沈黙が流れた。


お互い一口、二口とコーヒーを飲み、ようやく彼の胸のうちを聞くことができた。


「実は最近よく考えることがあるんだ。僕はなんのためにお金を稼ぎ、なんのために真一を育てているのか。僕がなぜ今のポジションにつき、なぜ行動しているのか。自分自身の行動原理っていうのかな?そういう自分自身を少し見失ってね」


「行動原理ですか・・・」


「正直こんな話、20前後の貴方にする話じゃないのかもしれない。それは自覚している。ただね、妻がいない時間はどうしても一人の時間が長くなってしまって、田中井先生が来てくれてから真一の面倒を見る時間に空きができてね・・・ありがたいことなんだけどね、自分で考える時間が多くなってしまって、そんなことを考えてしまう自分がいるんだ」


「そうなんですか・・・」


なるほど、そういうことか。話を要約するとこうだ。私が家庭教師をして何ヶ月が過ぎた。私が家庭教師をする前は彼は男手一つで真一を育てていた。そんな中で私が真一の面倒を見ることになり、彼の中で余裕が生まれた。その余暇の時間を彼は自問自答に使った結果、少し悩みを抱えてしまったということらしい。


「いや~・・・情けない、難しい問題かもれいないがどうしても最近気になってしまってね、本来なら妻に話すことかもしれないが、私にはその妻がいない。その代わりというわけではないが、田中井先生は様々な本を読み、非常に賢明で、さらに異色のキャバ嬢という経歴もある。そんな人にこういう質問を投げかけてみればどういう返答が帰ってくるのか、私自身も気になってね。だから今少し時間を貰ってるんだ」


彼の話を聞いて、男手一つの子育てというものは中々難しいのだと痛感する。なんとかその思いに答えてあげたい。私は頭の中をフル回転させる。


「私が家庭教師をして真一君に接する限りの話ですが、彼は真っ直ぐ育っていると思います。非常に素直ですし、わからないところは自分がわかるまで質問し、邪念がない。それでいて貪欲さもある。真一君の様子を見る限りですが、父親として、ご立派でいらっしゃると思います」


「そうか、それはよかった・・・」


彼は眉間に皺を寄せながら、コーヒーをさらに飲み進める。その後も私は自分の考えうる限りの返答をしたが、彼の眉間はいつも皺がよっており、的外れな返答をしていることは、その表情から明らかにわかる。彼が聞きたいことはそんなことではない!それはわかるが、何が引っかかっているのか、それが分からず、ただただ時間が流れていった。


「いやはや、申し訳ない。時間を取らせてしまったね。もう1時間も過ぎてしまっている。」


「え!?そうなんですか!?」


時計を見ると時間は22時を過ぎていた。頭を回転させているつもりだったが、予想以上に時間が過ぎてしまっているようだった。


「若い女性が夜遅くに危ない。私が家の近くまで送っていこう」


彼はそう言って車のキーを取りに行き、席を立った。その時の落胆する彼の表情を見て、なぜか私の中で熱い物が湧き出た。ただ、それを自覚する間もなく、気がついたときには私も彼と同じタイミングで席を立ち、彼の両手を掴んだ。


「あ!あの!大丈夫です!あ、あの!解決できるかわかりませんが、私にお任せください!」


「え!え、どうしたの急に!?」


と、いう経緯があり、現在に至る。


彼は落胆する表情から一転して驚きの顔を見せる。私は少し彼の手を強く握りすぎていることを自覚し、慌てて手を離した。


「あ!あの!・・・とにかく私にお任せください!!!」


「あ、あの、そ、そうか(汗)、よ、よろしく頼む」


私は自分のキャパシティーを超えている質問が投げかけられていることは自覚している。ただし、この胸の奥から湧き出てくるものを抑えることができなかった。正直見切り発車と言えばそれまでかもしれない。

こうして男手一つで子育てする男性への、『読書家のキャバ嬢式カウンセリング』が始まった。


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