第十話 ADHDの子を持つ親!だれでもできる集中力の上げ方
身近に障害のお子さんを持つ親御さんに話を聞いて今回小説の題材にしてみました。
高評価・ブックマークよろしくお願い致します。
「会えて嬉しいわ、今日はよろしくね」
目の前の女性はゆっくりと会釈する。その姿はどこか優雅さを感じられ、確実にお金を持っており余裕のある人間の立ち振る舞いだ。この女性は王城と言って、順子のママ友である。直人が通っている幼稚園で順子と知り合い、同い年の息子がいるのでそこで仲良くなったと言う。
そして、いつものようにベビーシッターとしての仕事を終えて帰る瞬間、「あ、ねぇねぇレイちゃん?明日の昼頃時間空いてない?もしよかったら私の友達とランチするんだけど一緒にどう?」という風に声をかけられ、今日ランチを一緒になった人が王城ということだ。
そのランチの時間は予想通り子供の話題が中心だった。子育てで苦労したこととか、こんな大変なことが最近あったとか、やはり小さい子供を持つ親の苦労は絶えないものだ。私自身もベビーシッターとして幸華に接する経験から、多少はその苦労を理解することができる。その私がした苦労と改善方法を話題に出すと、花が咲いていた会話にさらに別の色の花が咲いていく感覚があり、非常に有意義な時間に感じられた。しかし、そんな話題の中、王城は1つ私達に共感しにくい悩みを抱えていた。それは王城が持つもう一人の息子に関することだ。
王城は直人と同い年の3歳の息子の他にも、10歳の息子がいる。その10歳の息子がADHDの障害を持つという。その息子の子育てで悩んでいるとのことだ。私も今まで勉強してきた中で完全に知識の範囲外だったので、正直あまり共感できなかったが、話を聞く限りでも王城の苦労を想像することができた。
「なかなか集中力を持続させるのが難しくてね、学校でもあまり授業に集中して取り組むことができていないらしいの、ホント、どうしたらいいのかしら」
その言葉を発している時の表情は先ほど会話に花を咲かせていた時の表情とは真逆で、ホトホト困り果てている表情だ。いつもなら何かしら改善案が出せるものの、今回ばかりは私はキャバクラで初めてお客さんの横に座った時みたいに【置物】と化していた。
「今日はありがとう。有意義な時間をありがとう」
王城は最初に会った時のような優雅な会釈をして私と順子と分かれた。しかしその笑顔の印象は最初に会った時と今では見え方が違った。その笑顔の裏にある苦労を知ったからだ。
私はなんとかその悩みを解決することができないかを考え、家に帰るまでいつもの立ち寄る本屋から様々な文献を探した。そして家に帰るなりその文献を読み漁った。すると、その勉強の仮定で、ADHDの症状の理解も深めることができた。
ADHDとは通称【注意欠如・多動症】と呼ばれる。年齢あるいは発達に不相応に、不注意、落ちつきのなさ、衝動性などの問題が、生活や学業に悪影響を及ぼしており、その状態が6ヶ月以上持続していることと定義される症状だ。
その症状は、学業・仕事中に不注意な間違いが多い。課題や遊びの活動中に、注意を持続することが出来ない。等の【不注意】の他にも、質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう。順番を待てない。等の【多動・衝動性】が見られるのだ。
また、ADHDになる原因は様々で、前頭葉の活動などの神経生理学的要因、ドーパミンなどの神経伝達物質による神経化学的要因、未成熟で生まれるなどの発達的要因、深刻な虐待やネグレクトなどの心理社会的要因が挙げられる。しかし遺伝要因も大きな要因であり、遺伝率は約75%と非常に高い。
「……」
まったく今まで知らなかった世界がそこに広がっていた。その世界の広さから私は言葉を失った。私は無縁の世界で生きており、その時に隣で悩んでいた人がいても私は常に【無関心】だった。それどころか「なんでこんなにうるさいのか?人の邪魔をするくらいないっそ○ね」ぐらいに思っていた節がある。もしかすると私の周りにもこの症状に悩んでいた人間がいたのかもしれないと思うと、今までの自分の視野の狭さを痛感した。しかし、
【今を成長させることにより、過去に抱いた思いや考え方は変えることができる】
日本一の大商人と言われる斎藤一人の名言にもあるとおり、「過去は変えられるけど、未来は変えられない」。これは過去の『事実』は変わらないけど、現在のあなたの心が育てば過去の出来事にへの捉え方が変わるという意味だ。またとある芸人の方も【過去は変えられるので、自分の捉え方次第でいい思い出にしたり、笑い話にしたりできる。そう考えると、失敗など存在しない】と公言している。
その自分への贖罪、とまで言うつもりはないが、私は自分なりに調べ、一つ有力な結論としてまとめることができた。私はすぐに今日連絡先を交換した王城に通話した。
「あら、レイさんご機嫌よう。どしたのかしら?」
王城は最初に出会ったときのような優雅な雰囲気の声で私に応答する。
「こんにちは王城さん。今日話していて少し気になったことがありました。それはADHDの息子さんのことです」
「あら、心配してくれていたの?ありがとうレイさん、優しいのね」
「そのことで今日私は色んな本を読んで自分なりに調べたんです。その中で1つADHDの子供にも使えるかもしれない集中力の上げ方が見つかったのですが、今伝えてもよろしいですか?」
「あら、そうなの?それは是非知りたいわ!」
王城は少し声のトーンが上がった。その声のハリを聞いて、自分の子供の集中力の上げ方は王城の中でも大きな悩みの種だったのだと思い知った。私も自信を持って説明し始める。
「これはブラジルにあるサンパウロカトリック大学の研究なのですが、10歳から16歳の間の56人の被験者を集めて、被験者たちにはランニングとテレビゲームをしてもらう実験を行いました。また、そのうち半数が ADHD の症状が出ている人達です。そして実験の際に全体を、
①ADHD の症状がありランニングとテレビゲームの両方のプログラムに参加したグループ
②ADHD の症状はなくランニングとテレビゲームの両方のプログラムに参加したグループ
③ADHD の症状がありゲームのプログラムにだけ参加したグループ
④ADHD の症状はなくゲームのプログラムにだけ参加したグループ
の4つのグループに分けて集中力の調査を行っています。こうやってADHD の症状のある人とそうでない人に分けることで、ランニングをしてからテレビゲームをする場合とランニングをせずにテレビゲームをした場合で比較することができるわけです。テレビゲーム自体は集中力が必要なゲームで、ランニングをしたことによってその後のゲームのスコアが良くなるのかということを調べました」
「へ~すごい研究ね、それで、結果はどうなったの?」
「その結果は、
【ADHD の症状のある人や集中力が極端にない人は、ランニングをしてからゲームをすると集中力がとても上がっていた】
という結果になりました。この結果により、運動というものはADHD や集中力が極端にない人に対しては、集中力を高めるための強力な効果があるということが実証できたのです」
「なるほど、10歳から16歳だからうちの子にも効果はありそうね」
「少しサンプル数が56人と少ないですが、ADHD の症状がありランニングをしてからゲームをする場合とランニングをせずにゲームをする場合を比べると、35%もランニングをするだけで集中力が上がっていたので、効果は高いと思います。また、心肺機能を鍛えることで頭の回転も早くなるので一石二鳥ですね!」
私が説明し終えると、王城は「本当にありがとう、その気持ちも嬉しいけどそこまで真剣に考えてくれる人は今までいなかったわ、是非うちの子に試してみるね」と言って通話を切る。
正直ベビーシッターや家庭教師をし始めて、まだまだ未知の世界が広がっていることを思い知らされてばかりだ。しかしここ最近の私は心の中が常にマグマがグツグツ煮えたぎっているような感覚になる。今日の出来事を踏まえて、改めて私の長所は好奇心であることを理解した。
参考文献:
『【勉強】ADHDでも上がる集中力改善法』メンタリストDAIGO
https://daigoblog.jp/individualsadhd/
『ADHD(注意欠如・多動症)とは』『ADHD(注意欠如・多動症)の症状』NCNP病院,国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease07.html




