第二十四話 魔女の後悔
第二章が次の回で終わります!
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正直ここまでとは思わなかった。店で働き始め二日目で本指名の客を取る。二ヵ月後は店内で売り上げトップ店に入る。今週またランキングが上がり、うちの店では現在7位まで上り詰めた。全国で自分が店長をしている店は全国でもトップ50に入っている。2016年のデータでは全国で5万軒以上キャバクラがある。そのトップ50の店の7位とはキャバクラの世界では、一応上位の立ち位置にいることになる。
しかし、まだ油断できる立ち位置ではない。そこから転落する人間も大勢いる。またこの店では現在店長である私がナンバー1である。そこまでまだ歴然とした差がある。そこまで上るのに10年かかった。その長い経験による実績が私の自信である。しかし、それらの要素を踏まえても彼女の存在は底知れないものがあった。正直どこまで彼女は上るのか?少し恐れをなす自分がいたことはある。
でも、それ以上に彼女を育ててみたくなった。初めて出会った時はどこにでもいるただの綺麗な子だった。しかし最初に見たときから二回目、三回目と出会う内にまったくの別人に変化してく。その変化スピードに私は驚いた。是非この先の彼女を近くで見届けたい。私は今の自分の地位よりも彼女の成長を見届けることで頭がいっぱいになった。
「次はどんなことをするの?もっともっと進化してちょうだい?」
私の心の中で悪魔か天使かわからない声が鳴り響く。その心の声を心の奥底に秘め、私はいつも何食わぬ顔で彼女に挨拶している。
今日の私は他の仕事でカルミアには遅く出勤する。あの子に会う時間がいつもより遅くなることが少し疎ましかった。しかしこの仕事も重要な仕事だ。太客の接待ともなるとどうしても優先しなければならなかった。
「あ~早く出勤したいな~」
心の声が漏れそうになる寸前で何度も飲み込んだ。接待の途中に何度もスマホの通話通知がくる。太客がトイレのために席を立った瞬間、私は通知先を確認した。沖田からだった。一瞬殺意が湧いた。どうでもいい内容だったらどんな風に懲らしめてやろうか?そんなことを思いながら通話をかけ直した。するとものの二秒ほどで沖田は出た。
「あんたいい度胸ね?この私の大事な……」
「麗さん!今すぐ店に来てください!」
沖田は今まで聞いたことのないような声で私に訴えかける。その内容を1つ1つ聞いていくと、私は指の先から体の中心へ、そして心の中まで冷たい水が流れていく感覚になった。
私が恐れている事態が起こったことを本能的に察した。彼女が自分のトラウマと闘わなければいけない日が来ると思っていた。元々男嫌いな性格だ。しかし一日一日見るたびに常に変化し、成長していく彼女なら乗り越えられると思っていた。今はその自分の考えの浅はかさを悔やむばかりだ。私の想像していた異常に彼女の中のトラウマが大きかったのだ。そしてそれが爆発する時期も見誤った。彼女の成長速度ならもう少し遅くなると思っていたのだ。
後悔の念がグルグルと頭の中で渦巻く。すると「麗ちゃん!?どうしたの!?」という声を掛けられ、私は正気に戻った。太客が戻ってきたのだ。私は目の前のお客様に事情を説明した。そして「そうか、じゃあ行ってくれ、今晩はこれ以上麗ちゃんと飲めないのが残念だ」と理解を示してくれたことを確認した上で、すぐにその場を離れた。
せっかくいい状態に仕上がってきたのに。せっかくこれからもっと綺麗な花を咲かせようとしていたのに。
私は怒りでもない不安でもないどうしようもないこの気持ちを抑えながらカルミアに向かった。




