第二十二話 無自信男!麗華流!自己肯定感を高める方法
自己肯定感とは、
【あなたが自分についてどう考え、どう感じているか、そして自分の行動で未来を変えられると信じられる力を認識できているか】
「前はありがとう。とても参考なったよ。でもやっぱり俺は行動できないや。あれからデートに行ったんだけど、やっぱり好きな人を目の前にすると告白できなかったよ。ごめんね、せっかくアドバイスしてくれたのに生かせなくて」
私のスマホに一通の通知がきた。連絡してきた男は長宮と言って、最近私をよく本指名する男性客だ。年齢は36歳、中小企業の工場作業員だ。自分が話すことが好きで、私はよく聞き役になっている。彼の感覚からすれば、若い女性に自分の話を聞いてもらえることが重要で、理解者として接してくれることを望んでいるようだった。ただ、その日はいつになく落ち込んでいた。どうやら好きな女性ができたらしい。しかし自分に自信がなく、好きという気持ちを自分で理解しても行動に移すことができずに悩んでいるとのことだ。
その話を最初に聞いて、私は以前五十嵐(第十四回の男性)の時に話題に出した、マイケルボルダックの行動力を身に付ける方法である。【リミティング・ビリーフ」(自分を制限する思い込み)を打ち破る方法】や【自己規律の守り方】などについて説明した。
また、なぜ自己規律が大切なのかについても説明した。これは有名なスタンフォード大学で行われた【マシュマロ実験】と呼ばれるものだが、実験内容はこうだ。
1.何十名かの4歳児を集める。
2.その幼児達に「マシュマロを食べずに我慢できたらもう一つマシュマロをあげるよ」と言って15分我慢させ、何人の児童が我慢できるかを調査する。
3.結果として3分の2の子供は我慢できなかった。
4.14年後追跡調査を行い、成長した子供の成績を調べると、我慢できた3分の1の子供の方が成績が高かった。
5.さらに40年後追跡調査を行い、年収や社会的ステータスも、我慢できた3分の1の子供の方が高かった。
という説明を行い、自己規律が守れることの有用性を示した。その時は長宮は納得して店を後にした。
しかしそこから後日また長宮から来た冒頭の連絡を見て、私は反省した。
その後さらに長宮の話を聞いていくと、彼は私が行ったアドバイスの知識が本当に正しいのかについて疑問に思い、自分で勉強をしたのだという。そして【マシュマロ実験】について異論があることがわかり、それは、親の経済状況も大きく関係してくるのではないか?ということで、要するに、
【その子供を取り巻く環境の方が、今後の人生に大きく影響を与えるんじゃないか?】
という点に行き着いたのだった。私はその点について異論を唱えることはできず、自制心が今後の人生に良い影響を与えるという事については少し困惑してしまった。
しかしそれ以前に、私は3つのミスをしてしまったことに気がついた。1つ目は彼の根本的な悩みを取り違えてしまったこと。2つ目は彼が知りたいのは行動に移すための方法ではなく、行動できない自分そのものを変えること。そして最後は、
【どう行動すればいいかを明確に示していないこと】
ということだ。特に最後のミスのせいで、的外れなアドバイスをしてしまっただけではなく、ただでさえ行動力のない人間が、どう行動すればいいかわからなくなってしまったということだ。
私は後日自己肯定感を手に入れる方法をさらに深く調べる。そして必ず私と過ごした時間が無益だったなんて思わせない。私は徹底的に調べ、そしてついに麗華流自己肯定感アップノートを作成した。
まず自己肯定感を高めるステップするために、
① 自己肯定感は上がり、下がり、変化するものだと認識する。
② 今の自分の自己肯定感がどういう状態になっているかを理解する。
③ 自分の強みを再確認する。
④ 強みを生かした行動を起こす。
の4つの必要なことがある。
①について、
まずこれは子どもの生活と学びに関する親子調査2017だが、2年の間に、自己肯定感が「肯定→否定」「否定→肯定」と変化した子どもが5割。2015年・2016年・2017年の3時点(2年間)で、自己肯定感が「ずっと肯定」を維持している子どもは31.1%であり、「ずっと否定」のままの子どもは20.3%である。残りの48.7%の子どもは、「肯定→否定」「否定→肯定」など自己肯定感が変化している。つまり本来自己肯定感は上がり下がりしやすいものである。なので、少し失敗したからといって、自分はダメな人間なんだ、と卑下するのではなく、みんな同じで自己肯定感は一定に保たれることはないことを理解しないといけないのだ。
②について
「なぜ、自分がこう感じているのか」を客観視し、自覚することを心理学の世界では、【自己認知】という。この自己認知がうまくできていると、調子がいいときも悪いときも、その原因を的確に掴むことができ、メンタルの状態を上向きに調整していくことができるようになるのだ。
③について
自己肯定感が高まらない最大の理由は、本人が自分の強みを知らないことにある。この強みの無知から脱却しないと、いつまでも自己肯定感がつかず自分に自信を持つことができない。ではどうするかと言えば、「ストレングス・ブラインドネス」の状態から脱却することが自己肯定感を上げるために必要不可欠だ。「ストレングス・ブラインドネス」とは、自分の強みを理解していない状況を言う。そして自分の強みはビックファイブテストやVIAテストによって知ることができる。
VIAテスト,http://www.positivepsych.jp/via.html
ビックファイブテスト,https://commutest.com/bigfive/
④について
ビックファイブテストやVIAテストにより自分の強みを理解できれば、次にそれを生かした行動に結びつける。例えば上記のテストで、【好奇心】が高い人は幅広い経験をしているため、その経験を他の人に伝えることで他の人に貢献している実感が湧く。また【誠実性】が高い人は計画性と継続性に長けているため、仕事でリスク管理を自分で担うなどの行動に移すだけで、貢献している実感を持てる。
また、以上の行動は他人を伴うものだ。そうではなく自分一人で手っ取り早く自己肯定感を上げる方法がある。それは、【運動】である。なぜなら、
1.(自分自身も他人も)変化の実感が分かりやすい
2.自分で自分を変えていっているという自己肯定感が得られやすい
3.自分の努力次第で必ず変化がある
という三つの要素が挙げられるのだ。そして運動を含め、この④で行った行動を、
【毎日ノートに記録する】
これを行うことで最高の効果が発揮できるのである。
このように①の基本理解から④の自己肯定感を行動に移す流れをまとめた。これを実践するだけで自己肯定感を高めることができると思う。
私は早速このノートにまとめた内容を長宮に送った。今までこのような営業連絡をしたことはあったが、何度やっても緊張する。しかしその返答はすぐに来た。
「なにこれ!?めっちゃながいwwwありがとう!見てみるよ!」
長宮の反応を見て少しホっとした。しかし問題はこれからだ。これで長宮がいい方向に進むことが出来れば、私と過ごした時間は有益であったという証明になる。その間私の頭の片隅にその後どうなったかが気になって仕方がなかった。しかしその次の日、また次の日になっても長宮から連絡がくることはなかった。
その後十数日間たってから長宮から連絡が来た。その連絡を見た後に私は自分の表情を鏡で見た。するとそこには安堵と悲哀の両方が混ざった表情をした私がいた。
「振られちゃいました。ごめんね。色々手を尽くしてくれたのに」
私は謝罪の連絡を入れた。それ以外何もすることができなかった。その時の気持ちは時間に解決してもらおう。そう思い込むことにしたのだった。
参考文献:
『行動の科学』,マイケルボルダック
『勉強や目標が「自己肯定感」に影響-保護者や先生の働きかけで高められる可能性-』,佐藤岩夫,安達保
『自己肯定感からパートナーシップを変える方法』,あげまん理論アカデミー協会,中村あきら
参考サイト:
VIAテスト,http://www.positivepsych.jp/via.html
ビックファイブテスト,https://commutest.com/bigfive/




