第二十話 恋のジレンマ男!CA大学による恋人と良い関係になるための方法
「俺ほんまどうしたらええと思う?もう分かれるしかないんかな?」
目の前の男性は私に愚痴を漏らす。この男は田畑、34歳の大阪にある大手広告会社の社員だ。以前複数でこのカルミアに出張ついでに仕事仲間と来店したが、その時は私は軽くヘルプに付いた程度だった。そして今度は一人でフリーで来店し、今度は私一人で接客しているのである。
前回複数で来た時は、田畑はその場を体を使って盛り上げる、所謂ムードメーカー的な存在だった。しかし、一人の時は一転して物静かで、接客していても以前のような明るい感じはなかった。どちらが本当の田畑だろうか、そこに私の興味がそそられた。
数分たって私は思い切って「何かお悩みのことがあるなら聞かせていただけませんか?」と言った。すると積を切ったように、今付き合っている女性との関係について話し始めた。話を聞いてみると、最近彼女が冷たいらしい。どうやら彼女が仕事が忙しく時間が取れないそうだ。とは言っても休みは二回あるため、まったく時間がないことはありえない。なのに自分に会いたがらず、ここ二ヶ月以上会っておらず、そこに不満があるらしい。そのような男女関係のドラブルではよくある展開の話だった。そして冒頭に至る。
「田畑さんは、彼女さんのことが好きなんですか?」
「当たり前や!俺こんな好きなんや!だからこんなにムカつくんや!」
話を聞いていると恋人視点が少なく、少し自分本位の意見が多かったため、当たり前の質問をしてしまった。
「なぁレイちゃんはキャバ嬢やってたらこういう恋の悩み聞かへんの?なんかええアドバイスくれや」
「そうですね~」
私は田畑の話を聞いている最中にある研究を思い出した。その研究を元に話の筋道を立てていく。しかしその内容にはいるためには前提条件が必要だった。まずその前提条件について整理しようと思った。
「恋人と長く続くかどうかは性格で結構わかります。ビッグファイブテスト(主要5因子性格検査)という心理学的に信憑性が高いと言われている性格診断があります。これをまずやってみてはどうでしょうか?まぁ、今すぐでなくても構いませんが」
私は田畑とその場で連絡先を交換し、以下のURLを送りつける。
https://commutest.com/bigfive/
「この5因子の中で、情緒安定性(神経症的傾向)が高い、つまりメンタルが弱い人はおしなべて恋愛が続かない傾向があります。ですから、基本的には自分のメンタルが弱っている時の恋愛は続きません。逆に自分のメンタルがいい方向に向いている時の恋愛は続きます。このように恋愛が続くかどうかはメンタルに左右されるということがわかっています。なので、このテストで田畑さんの情緒安定性が高ければ問題ありません。しかし低ければそちらを改善させることが相手との関係をいい方向に持っていきやすいのではないでしょうか?」
「わ、わかった。すぐやってみる」
すぐにスマホでテストを行った。田畑はフリーで来ている為、テストの途中で時間になってしまったが、すぐに場内指名をしてくれた。私はその場でテストの結果を待つ。その間にまた今後の話の展開を組み立てていった。
「あ、終わりましたか?」
「終わった」
「情緒安定性はいくつでしたか?」
「12点」
「なるほど、それは田畑さんと付き合う女性ははっきり言ってだれでも長続きしない傾向にあるのかもしれません」
「じゃあ!じゃあどうすればええんや!?」
そして今度は私が積を切ったように話し始める。
「これはカリフォルニア大学が行った研究なんですが、過去の対人関係についての研究から質が高い30件の研究を選び出して5000人以上のデータをまとめたメタ分析を行っています。どのような単語、文脈を使うカップルが長続きするのかを調べています。実際の研究で調べた内容としては、
1.カップルがどれだけ長期間関係を維持できるのか?
2.一緒にいる時にどれだけポジティブな言動や会話をしているのか?
3.メンタルがどれだけ安定しているのか?
4.肉体的にどれぐらい健康なのか?
5.健康的な行動を取りやすくなっているのか?
ということまで調べ、どのようなカップルになれば、どのようなパートナーを選べば、メンタルも健康で体も健康で、さらに長く楽しい心身ともに健康な関係を続けられるかを明らかにしたのです」
「それで、要は俺はどうすればええんや?」
「この研究で明らかにされた結果を意識して日々の行動に活かせばいいと思います」
「で、どんな結果なん?それは?」
「この研究結果として【私たち・僕たち・俺たち(英語でいうとWe)を多く使っているカップルほど長続きするし幸福だった】でした。つまり、
【Weトークを多くしている】
ということです。この二人の視点に立ったWeトークが多ければ多いほど恋愛関係に対してはポジティブです。つまり、二人の関係は長続きしますしメンタルもフィジカルも健康で良い関係でいることが出来ます。どうですか?二人の目線に立って物事を考えることができていますか?」
「・・・」
田畑は深く考え込むように、肩と視線を下に落とした。十数秒その場に沈黙が流れた後、ようやく口を開いた。
「じゃ、じゃあもっと具体的に教えてほしい。俺はどうしたらいいんや?」
「例えば、自分はもっと連絡してほしい。しかし相手は仕事や他の趣味に時間を使いたい。という関係では、「俺は週に最低これくらいは会いたいんだけど、キミは月に使える時間はこれくらいなんだよね?だったらその間を取って月に二・三回くらいはどうだろうか?それが【俺たち】なりのやり方だと思うんだよね」っというように折衷案を提案するのもいいかもしれませんよ。重要なのは【俺たち】【私達】というワードを使って話すこ・・・」
「なるほど!!!」
私が自分の結論を言い終わる前に田畑はすぐにその場を立ち上がった。「すんません!もう出ます!」と私に言って、すぐに会計に済まし、エレベーターで降りてしまった。
その様子に少し驚いてしまったが、田畑の中で何かいい方法が閃いたようでなによりだった。その閃きが恋人との関係を修復するための打開策になることを祈る。
その数日後、私のスマホに一通の連絡がきた。そこには「おおきに!」という一言に付け加え、仲良い男女のカップルの写真が添付されていた。
ビックファイブテスト
https://commutest.com/bigfive/
参考URL:
https://daigoblog.jp/merrychristmas2018/




