第二話 絶対私は仕事に就く!キャバ嬢勧誘
ハ○ーワーク、リ○ナビ、マ○ナビ、など思いつく限り色んな求人を探して片っ端から募集していった。もう貯金が来月の家賃を払うことすらできないような状況なので私は必死に仕事を探した。
50件の内、書類選考で半分は落とされたが、もう半分は数日後面接を受けることができた。
しかし、そこからが中々難しかった。面接でよく聞かれる理由で「前職を退職した理由はなんですか?」という質問に対し、上司のセクハラで退職したといっても、二ヶ月ほどしか働いていない経歴がネックとなり、落とされている感覚があった。
また、「なぜ当社を希望する理由はなんですか?」や「当社があなたを採用するメリットはなんですか?」など、仕事ならなんでもよいと思って志望している私には返答することができなかった。
今日も面接に出向いたが、面接官の反応を見る限り希望はなさそうだ。
「はぁぁぁぁ~~~~・・・」
二週間前はあんなに「絶対這い上がってやる!」と息巻いていた自分がいたのに、こうも連日面接が惨敗つづきだと流石に精神的に参ってくる。
今日は2時から4時まで、さらに6時から7時まで面接があり、今日だけで3時間も面接しており、肉体的にももうクタクタだ。早くこの就職活動地獄から抜け出したい。
「お、今日はここにしましょうよ専務!ここいい日本酒が置いてあるんですよ!」
「いぇ~い!今日も二件目いっちゃう!?いや行くしかないっしょ!うぇぇ~い!!!」
さっきから仕事終わりの社会人や、授業終わりの大学生が騒がしい。そういえばもう夜の8時、夜の街が賑わっている時間だった。私は人生一回の飲み会が悲惨な結果だったのでどうしてあそこまで意気揚々と立ち回れるのかはなはだ疑問に思うばかりだ。しかし、楽しそうに飲んでいる姿を見ること自体はそこまで悪い気分ではない。一日の疲れを吹っ飛ばすエネルギーの塊がそこにあるかのように、底辺を歩いていた私からすれば、その当たり前の様子さえ見るだけで少し元気になる。
そうやって道行く人々を肩を落として、フラフラ歩きながら見ていると、ふと男性に声をかけられた。
「ねぇねぇキミ可愛いね、今仕事探し中?もし良かったらうちで働かない???」
顔を上げると爽やかでスーツが似合う男性がいた。どうやら私はキャバクラの前で声をかけられ、いわゆるキャッチというものに引っかかったようだ。
「キミなら自給5は硬いと思うよ!キミ可愛いから絶対稼げるよ!」
そう言って男性は、片手をパーにして私に話しかける。正直今まで男性のせいで機能不全の家庭で育ってきた私ができるとは思えない業種だ。
しかし自給5千円はとても惹かれることも事実だ。案外今まで酷かった扱いを受けてきた(と自分では思う)ので、案外いけるのではないかとも思った。
ただ私は18の未成年だ。お酒を飲めないのに働けるのだろうか?しかし自給5千円は魅力的。正直高卒の何の能力もない私が今後こんなに稼げる額ではないことはあきらかである。年齢もばれてしまえば雇ってもらえない可能性もあるのだろうか?非常に悩む。
「すみません。少し悩んでもいいですか?」
私は少し返答を濁す。
「お!じゃあ前向きに検討してね!はいこれ名刺!ここに絶対連絡してね!待ってるよ!」
そういうとスーツの男性は胸ポケットから名刺を取り出し、私に渡した。
「クラブ・・・カルミアか」
私は渡された名刺をスーツの内側に入れ、その場を後にした。
翌日私は郵便の音で起きた。
「は!は~い!」
昨日は面接での疲れもあり、スーツの上着だけを脱ぎ捨ててそのまま寝た。そんなことも忘れ、整ってない姿のままドアを開け、そのまま封筒を受け取った。
「ん~っと、株式会社・・・○○グループ!!!」
三日前に受けた企業の結果が来た。私は無造作に封筒を破り、すぐさま中に入ってる用紙を読み上げる。
「今回の選考結果についてですが、採用チーム全員で慎重に検討を重ねたところ、真に残念ですが田井中様の採用は見送らせて・・・」
私はその時点で読むことを辞め、小さく紙を破き、その場で部屋の天井向けて投げ捨てた。
「はぁ~!もぉ~~!!!またかー!!!」
私がその場に倒れたと同時に、破り捨てたお祈り用紙が顔にパラパラと振ってくる。これで20件目の面接結果不採用、書類選考も入れると合計45件の不採用、残り球は5件しかない。今は朝の10時だがもう外に出たくない。というかこのままスライムみたいに溶けてなくなりたい。それぐらい私の気分は滅入っていた。
しかしそうも言ってられない。今日は3時から企業の面接があるのだ。このままではいけないこともわかっている。私はもう一度自分の中で整理し、面接対策ノートを面接に行くギリギリまで作る。
インターネットを活用して今日面接に行く企業理念はもちろん、業界の情報を調べてノートにまとめた。携帯のアラームがなる。時間を確認してみるともう2時だった。
「よし、これで大丈夫なはず!今度こそ絶対受かってやる!」
私は身支度を整えて家を出た。