第十話 おバカ客!麗華流ウザい告白のブッタ切り方法
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「俺、と付き合ってほしい。そしたら俺もっと人生よくなると思うんだ!頼む!」
「ごめんなさい私は貴方とは付き合えません」
ここはビジネス街の道路の真ん中、そんな所で私はとある男性から告白を受け、それを秒で断った。
彼は坂口と言って二週間前から私に付きまとっている男だ。最初にキャバクラで出会ってから毎日顔を出している。最初は冗談として受け取っていたが、どうもアプローチが激しくて、はっきりいって鬱陶しくなってきたところだ。
だが店への貢献の思いと、彼の執拗なアフターの誘いを受け、今日だけは一緒に食事をすることにした。アフターとはキャバクラの営業後にキャバ嬢がお客様と一緒に遊びにいくこと。キャバ嬢がプライベートの時間をお客様のために使う、ちょっとしたサービス残業のようなものだ。
そして食事後、時間は深夜1時、タクシーを捜していた矢先のことだった。道で他愛もない話をしている時、「あ~、やっぱ俺レイちゃんのことめっちゃ好きだわ」と呟くように告白した。突然の出来事だったので私はすぐいつものように軽くあしらった。すると彼は突然私の両手と自分の両手をギュっと握り、真剣な眼差しで私に告白したのだ。そしてその告白を即断った。という流れで今に至る。
「なんで!?どうして!?」
坂口はまるでなぜ自分の思いが通じないか理解できない、とでも言わんばかりの困惑した表情をしている。ここまでくるとバカを通り越して呆れてくる。私は仕事で坂口と行動を共にしている。それがどうやら彼にはわかっていないようだった。確かに今まで勘違いする男性はいたが、あくまで遊びの延長上という感じで、ここまで本気の告白をされたことはなかった。正直彼の心がこちらに寄りすぎるまでに対処すべきだったかもしれない。正直迂闊だったと言わざる得ないだろう。
「私は坂口さんと付き合うことはできません。付き合いたくありません」
「だからどうして!?あんなに楽しかったじゃないか!?」
確かに坂口と過ごす時間は楽しかった。彼の性格特性として【外向性】が高く、彼の言葉にユーモアが溢れていたことは確かだ。しかし私は彼と過ごして違和感のようなものを感じたのだ。それが告白を受けることができない要因になっている。
「おそらく私の予感が正しければですが、このサイトにアクセスしてテストしてみてくれませんか?」
私はスマホを取り出して吉本に以下のURLを貼り付けて送った。
https://www.sinritest.com/bigfive.html
「私の目の前でそのテストを受けてください。恐らく10分程度で終わるはずです」
「わ、わかった」
坂口は私に言われた通りにスマホの画面を開き、私の隣でテストを受けていく。
「お、終わったよ」
「では結果をよく見せてもらえますか?」
坂口から半ば強引にスマホを取り上げ、画面に表示されている。その画面を見て私は思わず失笑してしまった。「ホント予想通りでつまらない男」と心の中で蔑んでしまった。私は坂口にスマホを投げつけるようにして返す。
「それが私が貴方と付き合うことができない理由です」
「意味わからない!?こんなテストに俺たちの恋愛が妨げられる謂れはない!」
「いえ大有りです。このビックファイブ、5つの性格診断(主要5因子)心理テストではっきりしました。外向性、情緒安定性、開放性、勤勉性(誠実性)、協調性+自己ギャップで貴方は一番どんな能力が低く、それは何点でしたか?」
「え、えっと、勤勉性が一番低くて9点だった」
「それが私が貴方と恋人になりたくない一番の原因です」
「だから意味が分からない!」
坂口は私がまるで別の言語を話しており、「理解できないが自分を受け入れて欲しい!」というように大げさに両手を大きく広げる。その様子を見て私は心の中がさらに冷めるのを感じた。これでは分かり合うことはない。それは今の話だけでない。未来も変わらない。
「ではわかるように説明致しましょう。これは2014年のワシントン大学が4544名の男女全員の性格特性を調べ、その上で仕事の成功度や満足度、人生の満足度を研究したものなんですが、【男性女性のどちらが働いているかということは関係なく、本人の誠実性が高かった場合は収入や仕事、人生の満足度が高くなる】ということがわかっています」
「な!なんだいきなり!それがどうしたんだ!」
「あるいは勤勉性と表される自分の数値が高ければ高いほど収入や仕事の満足度が高くなります。誠実性が高い人は良い恋愛もしやすいし良い相手と巡り会いやすく、自分だけでなくパートナーの誠実性が高い場合も同じぐらい収入や仕事の満足度が高くなるということです。なので、誠実性の高い相手を探すことも大事ですが自分の誠実性も大事になります。要はいい恋愛をする上で誠実性・勤勉性は高い数値で必要だということです。そしてそれは相手だけ高くてもいけない。自分自身も高くないといけないのです」
「ちなみに同じテストを受けましたが、私は誠実性は30点でかなり高いと判定されました。ワシントン大学の研究も踏まえると私の恋愛対象は30点に近い数値の人が幸せと感じるでしょう。なので少なくとも坂口さんは私とは合わないという結果です。科学が証明してくれました」
「そんな結果!科学の結果とか二人の間には関係ない!無意味なものだ!!」
「確かにこれは一説であり、科学とは今後覆されるものです。しかし今この2019年12月1日時点では信憑性が高く、信頼できる根拠の1つとしてあることもまた事実です。
「また、私が貴方と恋人関係になりなくない理由はこれだけではありません。これは2019年のイスラエル大学が行った研究で、浮気しやすい人の特徴について調べたものがあります。これは200人の男女を集めて実験です。どのような研究かというと、研究チームは数人の美男美女を雇って研究員のふりをしてました。何も知らされていない被験者たちに対して、研究員のふりをした美男美女が面談を行い、被験者がその美男美女に対してどれくらい好意的なサインを出したのかということを外からチェックし、アイコンタクトの量や体の接近度などを測ることによって、被験者の人たちがその美男美女にどれぐらい興味を持っているのかということを調べました。ちなみに浮気しやすい人とは、基本的には自分のパートナーがいようといまいと、自分の状況がどのような状況であっても、美男美女を見るとそちらになびいてしまう人のことですよね?だからこの研究では、その美男美女になびくサインを調べることができたら、浮気しやすい人の特徴が分かると考えたようです。そしてその結果とは、
【恋人からひどい扱いをされたという思い出がある人ほど、なぜかイケメンや美女を目の前にすると無意識に好意的なサインを出していた】
という結果が出ました。この研究を見たとき私は坂口さん、あなたのことが思い浮かびました」
これは以前カルミアで坂口が私を本指名して席に着いた時のことだった。
「あ~、俺この前彼女に振られたんだよね!」
「あら、そうなんですね。過去の事は過去の事、ここで楽しく過ごして忘れましょ」
「そうだね~、忘れたいんだけどさ、アイツ酷すぎてそう簡単に忘れられないのよ~」
「そうですか」
「だって聞いてよ!この前も夜が帰ってくるの遅い!って言われて喧嘩しちゃってさ、もう仕事だからって言っても理解してくれないのよ~」
「あら、それは大変だったんですね、でも仕事ってキャバクラに来ることですか?」
「ちょっとレイちゃん笑い事じゃないのよ~?その日は上司と一緒だったから仕事なの~!」
「なるほど、4日前のことですね!」
「んでさ、そこまではいいんだけど、お風呂入っている間に置いといた選択物全部ベランダに捨てられたんよ!ひどくね!?」
「それは酷いですね!」
「んでそっからさらに酷くてさ、裸のまんまベランダに取りに行って出て行った瞬間「ガチャ!」って音がしたんだよ。するとアイツベランダに俺を閉じ込めやがったの!やばくね!?俺裸だよ!?」
「えー!それはひどいですね!」
「しかもそれだけじゃないんよ!この前一緒にご飯食べてた時にさ!突然ラインの通知が来たんよ、その画面を偶然彼女が見ちゃってさ、同じ部署の女の子からの業務連絡だったんだけど、それだけでブチ切れよ!?そのまま俺のスマホを俺の顔面めがけて投げつけられて、そのまま後ろの壁にぶつかって画面壊れたもん!ヤバくね!」
「えー!それはヤバい!付き合う相手間違えたんじゃないですか?」
「もうそれがきっかけでさすがに我慢できなくてもう分かれたわ、あ~あ、早く次の彼女ほしいわ、どっかいい女の子いないかな~、あ!ここにいたわ!レイちゃん付き合って~!」
「そうですね~、今はご遠慮しておきます」
という会話をしたのだ。
「なにそれ?俺が前に元カノにベランダに閉じ込められたとか、女友達のラインが表示されただけでスマホを壁にブン投げられたってこと?いや、あんなん冗談の内じゃんか、真剣に受け取らないでよ~」
「まだこの研究の本質を理解していらっしゃらないようなのでもっとはっきりお伝えします。冗談か冗談ではないかが問題ではないのです。要は事実か事実でないかが問題なのです。あの後壊れたスマホの画面を私に見せてくださいましたよね?あれで事実であることがわかりました。そして私は貴方に恋愛の質問をする時はありましたが、話の方向性が過去に向くような話し方は一度もしたことがありません。貴方は無意識のうちにでしょうが、自分から過去の恋愛の話に持って行ったのでしょう」
「よって私の中でこの研究結果を見てから貴方という人間を【浮気をしやすい人間】という認識になりました。それも貴方と付き合うことを控える原因です」
「そんな・・・」
坂口はその場でガクっと膝から落ち、落胆の表情を浮かべる。
「もし私と恋人関係になりたいのなら瞑想と運動を定期的に行い、自分自身の誠実性を高めてから再度私の目の前でテストを受けなおし、30点近い数値を示してからアプローチしてください。その時は多少考えを改めさせていただきます」
私は丁度通りがかったタクシーを止め、髪をなびかせて車に乗り込んだ。
「あ、ちなみに他にも自分の誠実性を高めるマインドセットの方法はたくさんあるので後で連絡させていただきますね。では今日はありがとうございました。失礼致します」
私は地面に膝を付いている坂口に、今日のごちそうになったことに対しての御礼と今後の連絡予告をしてその場を去った。
「ふぅ~・・・」
車に乗った後に疲れがドっと出た。また今後の事を考えず少し感情的に動いてしまった。ただタクシーという物はなぜこんなに居心地がいいのだろう。このふかふかしたイスは自分の部屋に置きたいぐらいだ。タクシーに乗って少し落ち着いた。それと同時に自分への反省の念と、少し坂口に謝らなければならないことがあることを思い出した。それはビックファイブテストによる私の誠実性の点数のことだ。あの場で思わず「私の誠実性は30点だった」と答えてしまったが、本当は27点でだったのだ。少しサバを読んだ。ごめんなさい。私は心の中で謝っておくことにして、今日の日のことは忘れることにした。
参考サイト:
https://daigoblog.jp/alternativemates/




