憧れのお姉ちゃんの服を脱がせてお金を貰いました
あけましておめでとうございます。シリーズ前作と前々作もよろしくお願いします。
あけましておめでとうございます、私の名前は日比谷琴音。十三歳の中学一年生です。
突然ですが、私には大学生のお姉ちゃんがいます。背が高くて、お胸も大きくて、長い黒髪が綺麗で、頭もよくて、優しくて、友達さんも多い、私の憧れのお姉ちゃんです。周りの人からはお姉ちゃん凄いってよく言われます。妹の私も鼻が高いです。えっへん。
そんな素敵なお姉ちゃんを持つ私はというと、現在コタツに入っておもちを食べています。朝ごはんのきなこもちです。びよーんと伸ばしながら遊んでいると、リビングにお姉ちゃんが来ました。
「あけおましておめでとう、琴音ちゃん」
「あけおましておめでとうございます、お姉ちゃん」
新年の挨拶を交わします。お姉ちゃんは寝起きなのか、髪の毛が一束ぴょこんと跳ねていて可愛いです。寝ぼけ眼を擦るお姉ちゃんは、もぞもぞとコタツに潜ると二度寝を始めました。
その様子を横目に、私はおもちに向き直ります。みょーんと伸ばして食べていると、今度はお母さんがリビングに顔を出しました。
「お母さんとお父さんはこれから買い物に行ってくるから、お姉ちゃんと留守番しておいてくれる?」
「りょうかいれす」
「それじゃあ、お昼過ぎくらいには帰ってくるからね。お腹がすいたらお餅でも食べていて」
「はい、いってらっひゃい」
なかなか噛みきれないおもちを咀嚼しながら両親を見送ります。福袋でも買いに行くのでしょう。
こうして、お正月の朝は私とお姉ちゃんの二人きりになりました。
時計の短針が十を回る頃、こたつで眠るお姉ちゃんがもぞもぞと動き出しました。普段は規則正しい生活を送るお姉ちゃんですが、冬休みになってからは生活習慣が乱れているようです。いけませんね、弛んでいます。
「お姉ちゃん、そろそろ起きてください」
「うぅーん……眠い」
「眠気覚ましにお風呂に入るのはどうですか?」
「うぃ……」
お姉ちゃんはイモムシのようにこたつから這い出ると、フラフラとした足取りで浴室へ向かいます。
……ちょっと危なっかしいですね。ここまでお姉ちゃんが寝坊助さんなのは珍しいことです。昨晩に何かあったのでしょうか。
暫くして、お姉ちゃんがお風呂から出てきました。すっかり目が覚めたらしく、二重の大きな瞳がとっても綺麗です!
部屋着姿のお姉ちゃんは辺りに視線を配ると首を傾げました。
「お父さんとお母さんは?」
「お買い物に行きました」
「なるほど、琴音ちゃんと二人きり……」
お姉ちゃんは顎に手を当てると何やら考え出しました。ややして顔を上げたお姉ちゃんは、顔を上気させて言い放ちます。
「琴音ちゃん! お姉ちゃんとイイことしましょう!」
◇
「羽根突きですか?」
「そう、琴音ちゃんはやったことある?」
「いいえ……」
「追羽根って言ってね、とても簡潔に言ってしまえばバドミントンかな。相手の打った羽根を打ち返せなかったら負け。簡単でしょ?」
お姉ちゃんが取り出したのは二枚の羽子板とオモチャの羽根です。木製の羽子板を軽く振ると、それなりに重く、手に馴染むには時間がかかりそうです。
「で、ミスをした方には罰ゲームがあります」
「身体に墨を刻むやつですか?」
「なんだか誤解を招くような言い方をしているけれど……今回は墨汁で落書きはしません。ミスをする毎に服を一枚脱いでもらいます」
「……なるほどです」
季節は冬。家の中でも震えてしまうほどの寒さの中で服を脱いでいくのは、確かに合理的な罰ゲームだと言えます。
私が罰の条件を呑むと、お姉ちゃんの顔は心なしか赤く染まりました。闘気を高めているのかもしれません。負けられないです!
「そ、それでね、ただ脱ぐだけだと琴音ちゃんのメリットが薄いから、ご褒美も用意しました」
「ご褒美ですか?」
「もしも琴音ちゃんが勝てたら、お姉ちゃんからお年玉をあげます!」
「おおー!」
お年玉!
これは、ますます負けられなくなりました!
「その代わり私が勝ったら、琴音ちゃんには私の言うことを一つ聞いてもらいます」
「臨むところです!」
クローゼットからダウンジャケットを取り出して着込みます。玄関へ駆けていくと、後ろから焦った声がかかりました。
「待って琴音ちゃん、外で脱衣羽根突きをするつもりなの!?」
「違うのですか?」
「琴音ちゃんの純白の柔肌を衆目に触れさせるわけないでしょう! 琴音ちゃんの裸体を見ていいのは私だけ!」
「わ、わかりました。家の中でやるのですか」
「もちろん!」
お姉ちゃんに手を引かれてリビングに連れ戻されます。家の中で羽根突きは些か狭いような気がしなくもないですが……。
「よし、それじゃあ早速だけど始めよっか!」
お姉ちゃんと対面していざ試合開始です。
「そーれっ」
コツーン。
お姉ちゃんのサーブから始まります。羽子板によって打ち上げられた羽根はバドミントンのシャトルほど空気抵抗を受けず、意外と速いです!
「うくぅ……っ!」
「ふふっ、琴音ちゃんのミスだから、一枚脱いでね♡」
お姉ちゃんのサーブを返すことが出来なかった私は脱衣の催促をされます────お姉ちゃんの目がキラキラと輝いていて凄く楽しそうですね……。
ダウンジャケットを脱いで試合再開です────先程のワンプレーで『羽根突き』は理解しました。もう同じ過ちは繰り返しません。
お姉ちゃんのサーブに対して────切り裂くように羽子板を振るう!
キィンッ!
「はいっ────あれ?」
「お姉ちゃんのミスですね。一枚脱いでください」
「な、なんか今、羽根にものすごいスピンがかかっていて羽子板が弾かれたような……」
「気のせいじゃないですか?」
お姉ちゃんは自身のプレーに納得がいかないのか、しきりに首を傾げています。ふふふ、お姉ちゃんには私の攻撃が見えていないようですね。
その後も────────
「きゃっ、何今の!?」
「お姉ちゃんのミスです。一枚脱いでください」
「羽根が変な動きをしたんだけど!」
「気のせいです。一枚脱いでください」
「うっ、打ちにくい!」
「脱いでください」
上半身を撓らせて繰り出すトップスピン、押し込むように繰り出す無回転、そしてラケット競技の基本となる正面への攻撃。
勝利に次ぐ勝利で、あっという間にお姉ちゃんは半裸になり、纏っているものは裾の長いブラウスのみです。ブラジャーもショーツも既に身に着けていません……あと一回剥けば私の勝利ですね!
「うぅっ、ぐすっ、こんな予定じゃなかったのに、琴音ちゃんが鬼だよぉ……」
お姉ちゃんは既に半泣きです。しかし、悲しきかな、これも勝負の性というものです。トドメをきっちり刺してあげます。
「それでは、いきますよ」
「ひぃっ!」
瞳を潤ませながら羽子板を構えるお姉ちゃん。
さぞかし寒いことでしょう。年の離れた妹に負けて悔しいのかもしれません。
それでも、相手は憧れのお姉ちゃんです。手加減なんてできる筈がありません。
サーブ権を持っていた私は、ふわりとトスを上げます。バネの要領で体を飛び上がらせた私は、天井付近から羽子板を振りぬき────────
パァンッ!
「ぴぃっ!」
お姉ちゃんの足と足の間に高速フラットサーブを叩き込みました。羽根はキュルキュルと音を立てながらフローリングに刺さっています……傷とかついてませんよね。あとでこっそり補修しておきましょう。
さて────────
「お姉ちゃん、今のは取れたんじゃないですか? 脱いでください」
「うっ、ううっ、うわあぁーん!!」
「お姉ちゃん!?」
なんということでしょう、お姉ちゃんが号泣しています!
滂沱の涙を流しつつ、その手はきっちりとブラウスを脱いでいきます!
バサリ。
お姉ちゃんの裸体が露わになりました。キラキラと輝くような白い肌、均整の取れたプロポーション、女の子なら誰もが憧れるような完璧な肢体。私も思わずドキリと心臓を撥ねさせてしまいます。
お姉ちゃんは溢れる涙を手で拭いながら、リビングから出ていきました……追いかけた方がいいでしょうか。
私がどうすればいいのか考えあぐねているうちに、再びお姉ちゃんは私の前に姿を現しました。
「お姉ちゃ……」
その手に握られていたのは、財布と一万円札。
「うっ、ぐすっ、ことねちゃ、ひぐっ、うけとって」
「い、いいえ、受け取れません!」
恐らくはお年玉なのでしょうが、何と言うか……生々しすぎやしませんか!?
「うけとってよぉ……」
「も、もういいですから、お姉ちゃんも早く服を着てください、ね?」
涙で濡れた万札を押し付けようとしてくるお姉ちゃんに気圧されて後ずさりしてしまい────
「きゃっ!」
羽根に躓いて尻もちをついてしまいました。立ち上がろうとする私に覆いかぶさるようにお姉ちゃんが馬乗りになってきました!
「うけとって!」
「むりむり、無理ですよ! お姉ちゃん気を確かに!」
姉に無理やり一万円を握らされる妹と、泣きながら全裸で妹に騎乗する姉。
こんなところを傍から見られでもしたら────────
「お留守番ありがとうね、ただい…………アンタたち、何やってんの?」
────────折り悪く両親に見られてしまった私は、どうやって言い訳をすればいいのでしょうか。誰か教えてください。
◇
お母さんに姉妹並んで叱られ、お父さんと一緒にフローリングの補修を行った翌日。
私はお姉ちゃんを自室に呼び出し、あることを画策していました。
「どうしたの、琴音ちゃん」
今日のお姉ちゃんは、いつも通りのお姉ちゃんです。長い黒髪が綺麗で、頭もよくて、優しい、私の憧れのお姉ちゃん。
「お姉ちゃんに渡したいものがあるのです」
私は、そう切り出すとラッピングされた封筒を差し出します。
お姉ちゃんはおずおずと受け取ると「開けていい?」と目線で訴えてきます。首肯で返すと、お姉ちゃんは丁重に包装をほどいていきました。
「これ……遊園地のペアチケット?」
「はい、お姉ちゃんに貰ったお年玉で買いました」
本当はお姉ちゃんに貰った一万円だけでは足りなかったので私のお小遣いも削りましたが……これは、お姉ちゃんに対する誠意です。感謝と謝罪を込めた私からのプレゼントです。
「もし嫌でなければ、私と一緒に行って────」
「琴音ちゃんっ!」
「わっ!」
お姉ちゃんは遊園地のチケットを握りしめたまま私に抱き着いてきました。むにゅり、と大きなお胸が私に押し付けられます。
「琴音ちゃん琴音ちゃん琴音ちゃん!」
「ど、どうしたのですかお姉ちゃん!」
「好き好き、大好き、んーちゅっ♡」
お姉ちゃんは感極まったのか、私を抱きしめたままキスの雨を降らせてきます。
「キスはやりすぎじゃないですか!?」
「何をいまさら! いっつも琴音ちゃんが寝てからさんざんキスしてるし!」
「!?」
感極まりすぎて、とんでもないことをカミングアウトされました!
最近は同じベッドで眠っている私たちですが、まさかそのようなことをされているとは……。
しかし、そこに不快な感情はなく、お姉ちゃんに愛されているのだと、寧ろ嬉しくなってしまいました。
「と、とにかく、来週末は私と遊園地に行くので予定を開けておいてください」
「うんうん、琴音ちゃんとデートね! カレンダーにハートマークで印入れてくるね!」
お姉ちゃんは私を拘束していた腕をほどくと、鼻歌交じりに自室へと帰っていきました。
「ふぅ……」
何はともあれ、お姉ちゃんに喜んでもらえたようで何よりです。
「わ、私もカレンダーに目印を……」
赤いボールペンを持った私は、件の日にキュッキュッと♡を書きこみました。
◇
突然ですが、私には大学生のお姉ちゃんがいます。
「ね、ねえ、琴音ちゃん」
「どうしたのですかお姉ちゃん」
「お姉ちゃんとコマ回しで勝負しない?」
背が高くて、お胸も大きくて、長い黒髪が綺麗で、頭もよくて、優しくて、友達さんも多い、私の憧れのお姉ちゃんです。
「長く回せた方が勝ちってやつですか?」
「うん。で、負けた方は服を脱ぐの」
「またですか? もうお母さんに怒られたくないです」
「大丈夫、コマ回しはスペース取らないから私の部屋でもできるよ。中からカギをかけて、二人きりでやろうよ、ねっ?」
「勝った方は何か特典があるのですか?」
「えっ…………相手の脱衣が見られる、とか」
「メリットはあまり感じられないですが、コマ回しは面白そうなのでやります」
「やった!」
周りの人からはお姉ちゃん凄いってよく言われます。妹の私も鼻が高いです。えっへん。
「あっ、お姉ちゃんまた負けちゃった、脱ぐね♡」
「なんで嬉しそうなんですか……」
「最近ね、琴音ちゃんの前で脱ぐと、その……楽しくなってきちゃうの」
「ちょっと何言ってるのか分からないです」
そんなお姉ちゃんは、どうやら変態さんの趣味に目覚めてしまったようです。
【TIPS】
日比谷琴音
本作の主人公。生徒会に所属しているため運動部ではないが、その運動神経は抜群。体育の授業では「鬼神の琴音」と恐れられている。
お姉ちゃん
変態。お年玉で釣って妹を脱がせようとしたが、コテンパンにやられて恥ずかしい思いをすることになる。脱がされすぎて、逆に妹の前で脱ぐことに快感を覚えるようになってしまった。元日の夜は「姫始め」と称して寝入る妹に悪戯をしていた。