ベットから出ない系プレイヤー
少し時間は遡り(さかのぼ)……。緑の女神様と私の転生についての話。
「それでですね、身体とかスキルとか転生するにあたってどのようなご要望がありますか?」
「うーん、ちょっと考えさせて……?」
何か要望がないかと緑の女神が聞いてくる。どうしようこのままの身体でもいいけど……そうだ! ゲームのキャラクターとかどうだろう?
これでもいろいろなゲームやってたんだよねぇ、生活系RPGとかアクションRPGはもちろんファンタジーRPGもやってたし。転生する世界に持って行けたら楽しそうじゃない!
「私、死ぬ前はゲーム……そう、ネットゲームやってたんだけど、そのキャラクターとかスキルってこっちの世界でも使えるかな?」
「ゲームですか? ちょっと待ってくださいね。確認してみます」
緑の女神様が何もない空中に手をかざすとバインダーとそれに挟まれた数枚の書類のようなものが出てきた。それをペラペラと読んで百面相をしながら熟考しているみたいだ。
「そうですねぇ~、身体、スキル、武具は持って行けそうです。スキルも互換性のあるものがありますし、武具は魔道具やアーティファクトで再現可能です。ただアイテムに関してはさすがに向こうの世界で代用できそうにないものがいくつかありますね……」
「ぁー、〇〇チケット系とか強化素材とかも? かな?」
「そうですそうです、チケットとか強化素材とか転生する世界にはないものがあるので難しいですね。」
「そっかぁ、まぁ一部アイテムはなくなっても仕方ないね、選別とかは任せますね」
「ご理解いただけて良かったです。任せてください! なるべく持って行っていけるように頑張ります!」
フンスッ! って効果音が聞こえてきそうな、気合の入った顔で緑の女神様が言っている。なんだろう、かわいいと思えるし微笑ましいけど若干うざい……。
「だいたい、持っていけそうなものは言ったし、こんな感じでいいかな?」
「いえいえ! まだまだですよ! 大きい物の持ち運びに便利なインベントリと索敵、地形把握に便利なマップ! それにおまけでインベントリとは別に倉庫とNPCショップ! これで完璧です!」
「え!? そのあたりも入れてくれるの!?」
「もちろんですとも! 転生する世界での輸送技術は前世の技術ほど繁栄してはいませんので、そのためにインベントリです。マップは敵の接近に気づけた方が何かと便利でしょう?」
「ありがとう! 助かるよ~!」
そこまで考えてなかったよ。確かに旅をするにしてもどこかに定住するにしてもインベントリは身軽になり便利だし、マップはゲームでは絶対に使えていた定番機能だもんね。いや~、次の人生は楽できそう!
「各種転生特典は向こうに行って確認してもらうとして、私から少し真面目なお話とちょっとしたお願いを」
「……何?」
今まで楽しい雰囲気でワイワイ話していたけど、バインダーに挟まれた紙束をどこかに消して緑の女神様が真面目な顔で私に向き直る。
「これから転生する世界でも様々な場面で苦労するでしょう、ただこれだけは気を付けてほしいことをお話しますね」
「……はい」
「この世界を私が作ったときどうしても消せないある種の矛盾ができてしまいました。もちろん対策としてダンジョンや世界樹である程度の浄化機能を持たせていますので頻発はしませんが、どうしても消しきれない物があるんです」
「……それはこう、ネトゲのプログラムのような感じのバグ? の様な物なの?」
「そうですね、名称は無かったですがバグとしましょう。それはあらゆるものを侵食して変質させてしまいます。人間は比較的大丈夫なんですけどね」
「なるほど、確かに大変ね。それに注意すればいいということ?」
「気を付けてほしいというものありますが、それが魔物などに浸食、ないし実体化して単体で動いていたら討伐し浄化してほしいのです。もちろん無理にとは言いません」
緑の女神様話を聞いて私は少し怖くなった。そんな危ない物が動き回っていると思うと怖い。けど、頻発はしないらしいし異世界はやっぱり魅力的だ。
討伐できる力を持ってるから頼まれるんだろうし、自分のやれる範囲で倒してみようと思った。それに今お世話になってる緑の女神様に恩返しにもなると思うし。
「うーん……わかった、できるだけやってみる。自分の命が危なくない範囲で……」
「ありがとうございます。私も助かります」
こうして転生前に戻る。
宿屋のベットで改めて自己確認をして睡魔のまどろみに落ちるのだった。