宿屋はセーブポイント
しばらく歩いて近づいて来てわかったが、結構高い壁がある。木と鉄の金具でできた門があり、右サイドに30代ぐらいのおじさん兵士っぽい人が立っている。
ヤバイ! こっちに来て初めての会話だ……緊張してきた……。
そうこう考えていると門番の人がいぶかしげな表情で話しかけてきた。
「そこのお嬢さんどうした? 見ない顔だな? 入るのかね?」
「えっ? あ! はい、入れてもらえますか?」
「どこの街のでもいいが住民証明書があるなら入試税は銅貨1枚、ないなら発行も含めて銀貨5枚だな」
「証明書は……持ってないですね。え、えっと、ちょっと待ってくださいね」
左右のズボンのポッケを探ると、右のポケットに彫りの入った500円玉くらいの金のメダルが5枚あるのに気付いたので一枚取り出して聞いてみることにした。
「あの、これ使えますか?」
「金貨か、使えるぞ。よし、ちょっとついてきな」
そう言って門の脇にある詰所に入って行く。どうやらあの硬貨はつかえるようでよかった。あとはオススメの宿屋の場所を聞いておこうかな。
そうこう考えながら兵士のおじさんについて行って詰所に私も入っていく。中は椅子と長机その上には水晶が置いてあった。
「その水晶に手を置いてくれ、あと名前は?」
中世ぐらいの時代だしファミリーネームは名乗らない方がいいよね……。
「えーっと……亜弓……アユミです」
そう名乗ると水晶が青く光った。兵士のおじさんは紙にスラスラと文字を書いて渡してくる。
「ほら、証明書と銀貨5枚返すぞ。あと一応、そのゴーグル?とって顔だけ少し見せてくれないか?」
「えぇ、いいですよ。あ、あと! オススメの宿屋を教えてもらってもいいですか?」
ゴーグルを外しながらそう聞くと、驚愕とした表情で兵士のおじさんが私を見ていた。少しの間、兵士のおじさんは私の顔をまじまじとみていたが、正気に戻ったのか返事をしてくれた。
「あ、ぁぁ、すまない。ここを出て、まっすぐ行って十字路の左手にある青い屋根の宿屋、そこがオススメだ」
「ありがとうございます」
私は証明書を貰って、御礼を言い教えてもらった宿屋に向かうことにした。大通りって言うのかな? 詰所を出ると広いくて、石が敷き詰められている道がある。
両脇には、お腹を刺激するいい匂いと共に出店がちらほらと出ているのが分かる。少し進むと十字路と青い屋根の建物が見えてきた。
「ここかな?……」
扉を押して中に入る、一回は食堂なのだろう左にたくさんのテーブルと右には階段と受付カウンターがある。カウンターにはふくよかな四十ほどの女性が座っていて対応してくれた。
「いらっしゃい、宿泊かい? それとも食事かしら?」
「宿泊です。門番の兵士さんに紹介してもらって来ました」
「そうかい! そうかい! 一泊銀貨5枚だよ。食事は別料金ね」
「わかりました、銀貨5枚ですね。」
「はいはい確かに、それじゃあこれが部屋の鍵ね、部屋は階段を上がって右から4番目の部屋だよ」
「わかりました」
手を振って階段を上がり部屋に行く。部屋の中はとても簡素でベットとタンスのようなものぐらいしかない。
「うーん、まぁこれが普通なのかなぁ……」
元の世界のホテルより、やはり数段グレードが落ちるが、これが普通だと思うのであきらめることにした。
私はベットにダイブして転がりながら緑の女神様が教えてくれた私の能力についてアレコレと思い出すのであった。