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魔物使いはめんどくさがりながらも相棒と異世界で生きていく  作者: 千歳
2章~仲間集め編とも言う~
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天才美少女魔術師とお出掛け1

 ベルメを買って5日。慎二はいつもより少し早めに起床した。

 慎二がフロントフロアへと降りるとフェンが隅っこで丸くなっていた。慎二に気付いたのか欠伸を1つ挨拶がわりにすると再び目を瞑ってしまった。

 脇に空っぽになった皿が置かれていることから朝食は済んでいる。つまり二度寝だ。全くいい身分である。


(まぁ、俺の収入の半分はフェンの物なわけだし、高給取りなのは間違いないけどね)


 ダマスカスとしての依頼はまだ受けていないが、白金クラスの半分の収入でも平均的平民からすれば十分に高収入だ。


「あ、シンジさん、おはよー」

 

「ご主人様、お、おはようございます」

 

 食堂に入るとベルメとテレサが朝食の準備をしていた。

 慎二はしゃべりながら食器を並べる二人の様子を眺める。

 ベルメはまだおどおどとはしているが、怯えている様子はない。

 テレサがいろいろと気を使ってくれるおかげでベルメもだいぶ宿での生活に慣れてきたようだ。

 ベルメの心の傷は言うまでもなく深い。そして心の傷というのはやっかいで、どうすれば治るのかは千差万別。思いもよらぬことで治ることもあれば、一生癒えないこともある。

 慎二は現在の外見はともかく内面は大人だ。どうしても感情より道理や論理が前に出てしまう。

 だが、道理や論理ではどうにもならないこともあるのだ。

 そういう意味では慎二にとってテレサという存在がいたことは幸運だったとしか言いようがない。

 準備も終わり、二人も慎二と同じ席につく。

 普通ではあり得ない光景であるが、ひいらぎ亭ではこれが普通になりつつある。

 

「テレサちゃん、食べたいお菓子とかある?」

 

 丁度今日は出掛ける予定もある。

 お礼に菓子の1つでも土産に買ってくるべきだろう。

 慎二が今日出掛けることを知っているテレサはお土産の話だと察したのだろう。

 キャーキャーと叫びながらベルメにどんなお菓子があるのかと説明しだした。

 ラパームではお菓子は高い。砂糖が高いのだから当然だが。

 少なくとも現代日本のように子供が小遣いでまず買えるようなものではない。

 大人でも気安くぽんぽんとは買えないだろう。

 それでもラパームに甘味処が複数あるのは平均の所得が高く、領全体が富んでいる証拠だろう。

 身分制社会であるため平民の税率は前世とは比べ物にならないほど高いが、それでも話に聞く限りラパーム料の税率はガンタルシア王国内でも有数だ。

 ラパームはガンタルシア王国の最西端の街であり、西に小鬼の森、北にはフォルマン山脈でも龍・亜龍の多い龍の塒と呼ばれる地域に接している。

 ラパーム領はそれらへの警戒と防衛を引き受ける代わりに王家から税の面で優遇されているというわけだ。

 無論、王家に税を納めるのは領主であるため、領主が私腹を肥やすために税率を上げることも出来る。

 しかし、それは現在魔物討伐の多くを請け負っている冒険者や、魔術師その他の反感を買う。

 反乱の可能性はもちろん、それで冒険者などが外に流れては国防を担うという領の役目を果たせない。それでは本末転倒もいいところだ。

 幸い現在の領主はそのあたりをしっかりと理解している。民衆からの評判も上々だ。

 更に魔物を多く討伐しているので必然的に、魔物の素材も多く集まる。

 中でも重要なのは魔石だ。

 魔石は前世でいうところの電池。

 魔力を一時的に蓄えることが出来るため、魔道具の動力源になる。生活の上での必需品だ。

 ラパームはそういった素材の供給源として莫大な利益を得ているのも税率が低い理由だろう。

 

「シンジさん、決まった!東区に出来たお店のがいい!一昨日くらいにティバリーちゃんが食べに行ったらすごくおいしかったんだって。ふわふわでとろとろで甘いって言ってたけどどんな味なんだろ~。あー、楽しみ」

 

 どんなお菓子か想像しているのだろう。

 テレサは今にも涎を垂らさんばかりに口を開け、上を見上げる。

 あんぐり、という表現がぴったりだ。

 

「わかった。買ってくるよ。もちろん、ベルメの分もね」

 

「え、あ、私は…」

 

「いいさ。頑張ってるご褒美だよ」

 

 ベルメにはアリサや旦那さん、テレサの手伝いをさせている。

 合間には慎二が戦闘の基礎と勉強を教えている。

 特に勉強はベルメは苦戦している。

 奴隷商でも教育は受けているが、それはあくまでもこの世界の基準程度。

 小学校低学年レベルだろう。

 それでは慎二には不十分だ。少なくとも義務教育の範囲の知識は教えたい。

 もちろん、慎二の覚えている範囲でだが。

 

「良かったね!ベルメちゃん!夜一緒に食べようね」

 

「は、はい。あ、あの、ご主人様、ありがとうございます」

 

 なんだかんだ言いながらもベルメも食べたかったのだろう。

 もじもじとしながらも微笑む。

 これだけでお菓子の代金は十分に元が取れたようなものだ。

 物で釣ったようなものだが、重要なのはそこではない。

 ベルメが慎二の前でも笑えたということなのだから。

 

「そういえばシンジさん、今日はノクシーちゃんと出掛けるんでしょ?ノクシーちゃん全然起きてこないけど」

 

 そう、今日は約束していたノクシーに御馳走する日なのだ。

 ノクシーはデザートが余程楽しみだったようでいつかいつかとしつこかった。

 稼いでいるのだから自分で行けばいいのにとも思うが、ノクシーはガメツイ。驕りで食べるものを自腹で食べるのは嫌なのだろう。

 面倒なことこの上なかったのでなんのかんのと言い訳、あるいは予定をねじ込み、先伸ばしにしてきた。しかし、今日は本当に、言い訳も出来ないほど予定がなかった。

 つまり、年貢の納め時である。

 しかも、滞納していたことがいけなかったのか、代官様(ノクシー)は御機嫌斜めになってしまっていた。

 それを見かねてティバリーが「パーティーを組む話もありますし、今のうちにノクシーさんの機嫌を取っておくべきでは?」という余計な代案を提示。

 事実上の人柱宣告を受けて、1日買い物に付き合うことになってしまった。

 あのとき、ディバリーが笑いを堪えていたのを慎二は生涯忘れないだろう。

 

「あぁ、いいんだ。出発は日が昇ってからだから。その前に汗を流そうと思ってね。ベルメもどう?」

 

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