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魔物使いはめんどくさがりながらも相棒と異世界で生きていく  作者: 千歳
1章~別名説明回とも言う~
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初依頼1

やっと話が展開しだしました

 テイマーギルドを訪れた翌日、慎二はフェンと共に森に向かっていた。この森は慎二が最初にいた丘の回りの森―ゴブリンの魔王が占拠していたため現在でも丘よりラパーム側を小鬼の森と呼ばれている―とは反対側、東にある泉の森に向かっていた。

 テイマーギルドで受けた依頼のためだ。

 ランニング―前世であれば全力疾走ほどの速度―で4時間ほど。ラパームからは100kmといったところだ。

 しかし、それだけ走ってもさして疲れは感じない。息も1分ほどで治まる程度だ。

 

(速度よりも強化の幅が大きい。前世ではランニングを多くしていたからか?それにしてもなんか見られてるような気がしたんだけど…気のせいか)

 

 慎二がこの程度なので当然フェンにはなんの問題もない。むしろ、準備運動が終わって体が温まったのか、慎二の周りで尻尾を揺らしながら構って欲しそうにうろうろとしている。

 ちなみにヤドルのフェンに対する評価は「悪くねぇ。こいつは全然悪くねぇ」とのことだ。

 テレサの話では一通り躾がなっているか確認した後に人形(ゴーレム)と模擬戦闘をしてフェンは5体ほどぼろぼろにしたらしい。

 

「まぁまぁ、帰ったら遊んでやるから。今はミニオークとやらを探してくれ」

 

 フェンはシュンとして森の方へとぼとぼと歩いていく。

 

(こりゃ遊んでやるだけじゃ拗ねるな。あとで機嫌を直してもらうには…肉か)

 

 慎二は収支の計算しながらフェンの後を追う。

 

 

                 ◇◇◇

 

 テイマーギルドのマスタールーム。そこではヤドルが片目を押さえ、一人ぶつぶつうと呟いている。

 その様子をミーアは心配そうに見守っていた。とはいえミーアがヤドルではない。ヤドルが"視ている"先だ。

 

「うし、入ったな。にしてもあいつらやっぱただ者じゃねぇな。[身体強化]は間違いねぇ。それに一瞬近付いただけで尾行に勘づくとは…探知スキルも持ってやがるな?」

 

 そう言ってヤドルは押さえていた手を外し、カップに手をかける。

 彼は鳥型従魔を通して慎二達を監視していたのだ。

 

「本当に大丈夫なのですにゃ?泉の森のミニオークの群れには…」

 

 ミーアの発言をヤドルが手で制す。

 確かにミーアは慎二にミニオークの討伐依頼を勧めた。依頼内容の説明をした際にゴブリン程度ならそれなりの数でも問題ないと慎二が言っていたし、ヤドルが目をかけるくらいなのでワンランク上の銅-1クラスの依頼でも問題ないと考えたからだ。

 討伐場所はラパーム南の草原を勧める予定だった。

 しかし、それを口にする前にフェンとテレサと共に戻ってきたヤドルが泉の森に行くよう指示を出したのだ。

 そして泉の森には一月程前からミニオークの変異個体、ミニオークジェネラルかミニオークソーサラがいるのではないかと言われていた。

 直接視認されたわけではない。

 それらが現れたと言われる理由は薬草採集の依頼で泉の森に向かった冒険者からの報告だ。

 通常ゴブリンやミニオークなどは獣の知能と大差ない。何体かで群れて行動することはあってもその動きは雑で、獲物を見つけたら皆が皆突撃するだけで策なんてものはない。

 しかし、冒険者の遭遇したミニオーク達は囮を用いたと報告されたのだ。

 これはそれを考えるだけの知能を持つ個体、上位種がいると言われる理由だ。

 上位種というのはその種族でも長く生きた個体が力を蓄え、変化すると言われる。必然的に同種の中でも高い知能を持つことが多いのだ。

 故に通常であれば銅クラスでも対処出来るミニオークでも、上位種となれば話は変わる。更に群れごととなれば銀の上位ランク、または金クラス以上の仕事だろう。


「問題ねぇ」


 そういいつつもヤドルは酒を要求しない。万が一、慎二達が失敗し、刺激されたミニオーク達が外に出てくるようならば自分が向かう必要があると考えているためだ。

 

「そんなに心配なら誰か付ければ良かったにゃ」


「それじゃ、インパクトが弱ぇ。出来ればあいつらには金、少なくとも銀クラスでスタートさせてぇ。こっちも持ってる人材を下で遊ばせておく余裕はねぇからな」

 

 通常、冒険者は鉄クラスからスタートする。自警団や兵士として実戦経験があれば銅からになることもある。しかし、それ以上を求めるには目に見える"実績"が必要だ。

 ヤドルは上位種を含むミニオークの群れの単独討伐なら十分"実績"になると踏んでいる。

 最近は同じ冒険者ギルド傘下の戦士ギルドなどからいろいろと言われている。

 幸いそういったギルドの主力は北でワイバーン狩りに勤しんでいる。

 足元であるラパーム周辺の問題をテイマーギルドが解決すれば少しは黙らせられるだろうという考えもあった。


「それはわかってますにゃ。だから、ミニオークを勧めたにゃ。でも、いきなり変異種は…有望株だからこそゆっくり育てるべきじゃにゃいですかにゃ?」

 

「そういう先を考えられるだけお前は優秀だ…ま、俺の目は間違いなかったってことだな。でも、お前は現場を知らねぇ。冒険者ってのは度胸が評価される世界なんだよ。同じ上位種のいるミニオークの群れの討伐をしたっていっても、順当に経験を積んでやったのと、いきなり現れた名前もわからねぇようなやつがやったのじゃ周りからかかる期待や注目の大きさが全然ちげぇ」

 

「そういうもんですかにゃ。私にはよくわからないにゃ」

 

「じゃあ、今回の件でわかれ。あいつらが上手くいきゃ多少はうちも忙しくなるだろ」

 

「…わかりましたにゃ。でも、マスター、1つ問題がありますにゃ」

 

「なんだよ、まだあんのかよ。お前は心配性でいけねぇ」

 

「違いますにゃ。心配じゃなくて、シンジさん達が上手くいく前提での問題にゃ」

 

「ああん?そんなもん…あ、わかったぜ。俺の慧眼に女が大挙してくるんじゃねぇかってことか?それなら問題ねぇ。あっちは既に戦闘た「違うにゃ!」…じゃあなんだよ」

 

「マスターはラパームでも有名なクズですにゃ。今更そんなことで女は寄ってこないから大丈夫ですにゃ。そうじゃなくてお金の話ですにゃ」 

 

「そこまで言わなくてもいいじゃねぇか!それでなにが問題だっけ?金?」

 

「そうお金にゃ。シンジさん達が上位種を討伐したら報酬はどうするにゃ?もし、素材を持ち込んできたら?報酬金や買い取り代金はどうするにゃ?知らにゃいようにゃけど、うちに上位種の買い取りなんてする報酬なんてにゃいにゃ。もし、出せないなんてことになれば冒険者ギルドに持ち込まれて下手すれば向こうに引き抜かれるかもしれないですにゃ」

 

「え、おま、それは…まじいな。いや、待て、馬鹿言うな、あいつの相棒に従魔の証出したのはうちなんだからあいつの所属はうちだろうが。依頼出したのもうちだし」


「それこそ馬鹿言わないで欲しいにゃ。依頼出して報酬出せないとこと出せるところならどっちを選ぶかなんて言うまでもにゃいにゃ。それにうちは冒険者ギルドの傘下ギルドにゃ。うちで用意出来るものを上が用意出来ないわけないにゃ。わかったらとっとと地下室にあるワインなりなんなり売り払うにゃ。そこそこの金額になるのは知ってるにゃ」

 

「いや、早まるな。まだ上手くいくと決まったわけじゃ…」

 

「問題にゃいって言ったのはマスターですにゃ。とにかく今から商人を呼んでくるにゃ。何を売るのか考えておくにゃ」

 

 そう言い残してミーアは部屋を出ていった。

 

「あいつを買ったのは間違いだったかもしれねぇ」

 

 ヤドルは初めて自分の目を疑った。

 

次回8日0時更新予定です。

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