第3話 (授業風景)
現代文の授業は嫌いではないが、好きでもない。そもそも好き嫌いを考えたことがない。
先生はチョークで黒板にカリカリと書いている。
ノートを忘れた俺は、別のノートの最後のページに薄く書いた。黄色いチョークで書いたところは、文字の下に線を一本引いた。後日、家で現代文のノートに写しました。
そうしてノートに書いていると、隣の女子生徒から話しかけられた。
「あの……私、次当たるんだけどさ……」
その女子生徒の名前は光町日菜。
俺は胸ポケットの中にあるメモ帳から紙を一枚切り取って、そこに文字を書いていく。
『頑張れ』
「やっぱり喋らないんだね……。あと意地悪……」
俺は声で会話をしない。声が出ないということはないが、喋る気力がない。喋るのであれば筆談をした方が個人的には楽だった。理由は他にもあるが……。
コンコンと机を鳴らし、教科書の本文に日菜の答えるべき場所に線を引いて見せた。
「……!ありがとう!夜くんはやっぱり優しいね」
(……どっちだよ)
その後、先生は日菜に当てて、日菜は俺が教えたところを答えました。
どうやら合っていたので安堵した。
日菜は答え終わると、俺の方を見て微笑んだ。