隣人
彼女が考えている事がわからなかった。彼女は私の動揺を感じとったようにまた明日とだけ言って、一人で帰ってしまった。一人取り残された私であったが、頭の中には、疑問だけが浮遊し、解決なんてものは一つも見つけることができなかった。
「帰らないと」
言葉にしなければ行動ができないほど、私は何も考えることができなくなっていた。
まだ夏休みにもなっていないが、まだ沈む気配をみせない陽は容赦なく体温を上げさせる。
彼女のことだけを考えていられるこの時間を幸福に思いながらも、彼女の言葉の意味を何度も繰り返す。
「こんにちは」
優しい、男性の声だった。初めて聞いた声なのだけれど、私に話しかけてくるのは、彼女くらいなものなので、不信感を抱きながらも、彼の方を向いてみた。
「こん……」
挨拶を返すも、語尾に行くにつれて声が消えていくのが自分でもわかった。彼はクスクスと笑っていた。恥ずかしいと思った。思ってしまった。慣れているはずだろうと自分に言い聞かせるが、顔が熱くなっていくのがわかる。
「ごめんよ。悪気はないんだけれど、突然、女子高生に気軽に話しかけるなんて不審がられても仕方がないね。僕の地元では普通なことだったから」
悪い人ではないのであろうが、男の人だからというわけではなく、人に話しかけられることに、会話をすることに慣れていないだけなのだと。のどの奥につっかえて、取り出すことはできなかった。
「えっと……、今日からここに住むことになったから、また通りかかりに会ったらよろしく」
彼を困らせている。それは理解することができた。そして、口から滑り落ちてしまった。
「隣に……」
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