表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウラジロ  作者: 戸蒔 悠
4/7

密会

 学校に向かうのが苦痛に感じるのは今日が初めてではなかったが、今日は特別苦痛に感じた。誰にも言わないと言った彼女を信用するほど、関係を深めているわけでもない。校門をくぐり、校舎へと向かう間も心音は早くなるばかりで、足取りは重くなっていく。

「おはよう」

 靴箱へ到着するや否や、すぐに声をかけられた。姿を見なくても彼女だと分かった。恐る恐る彼女に目を向けると、彼女は、私の手を握って、大丈夫と言った。

 登校時間特有の喧騒にまみれた靴箱周辺であるのにも関わらず、彼女の小さな声ははっきりと聞こえた。

「二人だけの秘密ね」

 彼女はそう言って、靴を履着かえに向かう。そして、私も急いで靴を履き替えて、彼女と共にいつも通り教室へと向かった。先ほどまでの不安はどこへいってしまったのか、彼女との会話は楽しく、教室までもすぐについてしまった。

 机に鞄を置いて、いつも通り授業の準備をしていると、鞄から折りたたまれた紙が床に落ちた。

 そこには、昼休みに図書館へ行くことが記されていた。誰が入れたのかもわからず、先ほど消えた不安がまたよみがえってくる。そんなことはないと自らに言い聞かせながら、授業に無理やりにでも集中するようにした。


 望まなくとも、時間は流れて、昼休みを告げるチャイムが鳴り響く。

 不安と緊張を抱えながら、図書館へ向かっていると、背中を軽くたたかれた。

「どこ行くの?」

 昼休みに彼女と話すのは初めてなのかもしれない。よく考えれば、昨日、学校以外で話すのも初めてだったのかもしれない。

「図書館」

 そう答えると彼女は、わたしもと言って、一緒に図書館へ向かった。

「この学校、無駄に本多いよね。図書室じゃなくて図書館だし、3階まであるし」

「私は、それで学校決めたから」

 他愛もない話をしながら彼女と図書館へ向かう道は、昼休みを謳歌する女子高生であふれている。図書館に入ると、3年生だろうか、机に向かって問題集を説いている姿も見られる。彼女は、こっちと言って、学生がほとんど来ることのない本棚が並んでいる場所に向かった。

 不安が大きくなる。

「呼んだのは、私だよ」

 本棚と本棚の間で、明かりも少ない空間に、不安が募るのだが、なにか特別なことが起こるような気がして胸が高鳴るのも感じた。

「なんで?」

 そういうと、彼女は、わかってるくせにとクスリと笑った。こんな彼女を見たことはなかった。彼女は、人気があって、完璧で……

「私ね、あなたのこと好きよ」

 彼女は、私の方に向かい、耳元で呟いた。すぐ傍で感じる彼女の香りや声に、私の頭は考える力を奪われていった。

「協力してほしいの」

 相変わらず彼女は、私の耳元で話す。私は、その状況からも早く脱したく、首を縦に振る。すると彼女は、私の腰に手を回し、引き寄せた。あまり変わらない伸長のせいで、彼女の声はより耳元に近づいた。

「殺してほしいひとがいるの」

Twitterのフォローお願いします

@dOMaku_yu

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ