事故
尿の描写が出てきます。苦手な人はごめんなさい
ベッドから出ることもせずに、手が届く範囲にあった本を読み進めていた。二冊目のクライマックスに差し掛かったところで、呼び出しのベルがなる。父母は共働きで、兄弟はいない。本の続きが気になるところではあるのだけれど、居留守を使う理由にはならないと思い、思い体を無理やり起こした。
すると、今までで感じなかった尿意が体全体に襲いかかってきた。しかし、来客がきている。ここまで我慢できていたのだからと、下腹部に力を入れて、応対する。
彼女だった。
学級委員の仕事の一環として、配布物を、持ってきてくれたらしい。
「元気そうで何より」
などと彼女は言っていたが、私にとって、そんな他愛もない会話を今は求めていなかった。
今望んでいるのは、あの個室であって、彼女との会話ではない。しかし、彼女に嫌われたくはないので、ひたすら我慢をしていた。
「ありがと。まだ具合、悪いから」
と必死で言って見るものの、額に汗が滲んでくるのがわかる。看病するよと上がり込んでくる彼女を憎らしいと思ったのははじめてだった。
彼女は、私に肩を貸すように左手を肩に回してくれた。それは、とても、ありがた迷惑といったことで、思わず力が抜けてしまった。
足元に出来た暖かい水たまりに、彼女と私は動けずにいたが、彼女が、はっとしたのか、私が涙をこらえているのがわかったのか、シャワー浴びれる?と聞いて雑巾貸してとそそくさと片付けをはじめてしまう。
私は彼女に言われるがままシャワーを、浴びたが、その温度はとても生ぬるくて、澱みが溜まっていくように感じた。
着替えて、リビングに向かう途中、先ほどの事故があった場所は綺麗に元通りになっていた。
「ごめんね」
彼女は、ソファに座り誤っているが、謝るのは私の方で何故彼女が謝っているのかわからなかった。
そして、彼女はこう続けた
「誰にも言わないよ。誰にも」
そう言って、帰るねと席を経った。
私はなにも言うことが出来ずにただ、帰っていく彼女の背中を見ることしかできなかった。
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