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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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078(M) 銃身の多重化


「オランブル王子と妹王女の顔合わせで長剣を贈ったことを覚えておいででしょうか? このたび、仔馬の返礼として見事な片手剣を頂きました」

「そんなこともありましたね。あの長剣は見事な品でしたよ。返礼はともかく王子ご夫妻はいかが御過ごしでしたか?」


 3人で取る夕食はともすれば沈黙が続いてしまうが、オランブル王国へ向かったマデリーが戻ってきたので、その話で食事が進む。


「ご健勝の様子。マデリーの話では妹王女がゆったりとしたドレスを着ていたと報告してくれました。場合によってはこの秋にも祝いを贈ることになるやもしれません」

「女性の目で見たなら、かなり確証が高そうですね。貴方達はまだなのですか?」


 先の御妃様の言葉にカリネラムが顔を赤くして下を向いた。そんな仕草をおもしろそうに先の御妃様がワインを片手に眺めている。


「こればかりは、神におすがりすることになるのでしょうが、1つ問題も見えてきました。オランブル王国の内情はかなりひどいようにも思えます。今回の返礼は形の上では問題がありませんが、その返礼品を包んだ布が問題です。王国軍の部隊旗でした。『中々に使える』との言葉を添えて賜ったようです」


 カタンとワインのカップがテーブルに力なく落とされた。

 先の御妃様の顔から笑顔が消えて唇が震えている。

 カリネラムは俺に顔を向けて次の言葉を待っているようだった。


「貴族同士争いがあるのは知っておりましたが、王国軍にもその動きが波及しているとなれば問題ですよ」

「御意。貴族の一部がオランブル王国の西の王国に向かったのを知って、今回の王国訪問を計画しましたが、まさかそこまでひどいとは思いませんでした。直ぐに、3個大隊を国境近くに移動しましたから、万が一の事態が生じても王族の保護は遅滞なく行動に移せるでしょう。ですが、民衆を考えると心痛むところです」

「戦上手の婿殿の言葉とも思えませぬ。オランブルの西にあるのはトーレス王国なのですが、国交はありませんでしたから国情は知ることができません。ですが、オランブル王国を舞台にトーレス王国とトルガナン王国がぶつかれば苦労するのは民衆です。その時は短期に事態を収拾することを優先すべきだと思いますよ」


「御意」そう言って深く先の御妃様に頭を下げる。

 王子の企みを知るまでは泥沼の内戦を考えていたのだが、オランブルに強力な旗印があるなら、戦力を一気に投入すればそれほど長期戦になるとは思えない。

 問題があるとすれば、飲み込もうとしたオランブル王国が残ってしまうことだ。

 戦後処理を上手く行わねばタダ働きにもなりかねない。援軍を移動する時期はよくよく考えなばなるまい。


「……その事態を考えますと、現在の王族達の立場はかなり弱いということになるのでしょうか?」

「表面上は王族でしょうけど、実態は上位貴族と同等なのかも知れません。それでも、王女の婚姻でトルガナン王国との結びつきができましたから、王国内の発言力は増したはずです。ですが、貴族を統括するまでには至らないようですね」


「貴族の本来の役割は国王の治政を助け、民衆の不満を軽減することにあったはずです。少なくとも王国建国の際はそのような役目を仰せつかって各家はその勤めに励んだはずなのですが……」

「形骸化して、各家はその権益を自分達のものだと思うようになった……。陛下が怒って貴族を倒した理由はそれでしたか。私達も、そんな貴族を諫めることができなかったことを恥じ入るばかりです」


「それも含めての貴族政治だと思っておりました。国王に代わって治政を取るのも方法の一つでしょう。でしたら自分達の華美を戒めて王宮内の派閥闘争に明け暮れるなどとんでもないことです」

「オランブルは我が王国よりもひどい状態ということですか……。王女からの手紙にはそのような事は書かれておりませんでしたが」

「読まれないようにとの配慮かと思います。貴族間の闘争が王族に及んだら、それこそ内乱ですからね」


 要するに内乱一歩手前の状態であることは確かだろう。

 表面上は王宮内で互いの出方を見ているんじゃないか? 妹王女として見れば歯がゆい事態であるだろうし、王子も何も言わずに見ているだけの国王にイライラしているんじゃないか?


 だが、王国軍の旗を俺達に贈ったということは、ある程度自分の態度を明確にしたということになる。

 それが次期国王としての態度表明なのか、それとも現状打破の後ろ盾と言う事かはまだ分からないな。


 翌日、執務室でオランブル王国の地図を眺めていると、マデリーが訪ねて来た。マデリーの副官は女性だが、これは仕方がないだろうな。

 もう1人、副官がいるのだが、将軍の娘らしいから行儀見習いと称してカリネラムのサロンにマデリーの名代として出席しているようだ。

 マデリーと違って片手剣を隠し持ってサロンに出掛けるような娘でなければ良いのだが……。


「陛下、リオン達の島に多くのドワーフが向かったそうです。商人の話では廟を作るとのことでしたが」

 挨拶もそこそこにテーブル越しの席に着いて、俺に尋ねて来た。

 マデリーとしてはドワーフの技術を使った島の要塞化を憂いているのだろう。それも考えられるが、廟というのもおもしろいな。

 商人が廟と言うからには、他の施設とも考えられそうだ。


「おもしろそうな話だな。確かあの島には南側に小さな入り江があったはずだ。トルガナン王国の商会から船を出して、交易の打診をするぐらいのことはやって構わんぞ。その船に忍んで、船室の窓から島を見てくればいい。

北側から見た姿は知っている者も多いが、南側からの情報はまだだ。ブルゴス王国が南側の入り江を目指したらしいが船ごと沈められたそうだぞ」


 俺の言葉に頷いて執務室を飛び出したから、直ぐに出掛けるつもりのようだ。

 果たしてどんな情報をもたらしてくれるか。リオンの島の地図を描ければいいのだが、それには上陸しなければ無理だろう。

 島の姿を東西南北から眺めるだけでもおおよその状況は掴めるはずだ。それを描いておけばリオン達の攻略時に役立つに違いない。


 マデリーがオランブル王国から帰って一か月が過ぎたが、オランブル王国内は静かだ。

 一応、国境警備の大隊を含めて4個大隊をオランブル国境近くに待機させた状態を継続しているが、夏前には半数を元の駐屯地に戻すことになりそうだ。

 ジャミルやマデリー達も自分の部隊を副官に任せてこっちに来ているぐらいだからな。


 いつものようにジャミルとオランブル王国の地図と貴族の勢力図を眺めていた時だ。

 クリスティが嬉しそうな表情で執務室に入って来た。

 思わずジャミルと顔を見合わせてしまったが、ジャミルもあの顔色の裏には何かあると考えたようだ。


「あら、マデリーはいないの?」

「船でリオン達を偵察中だ。それで、わざわざ城の奥から出てきたのには理由があるんだろう?」


 侍女が持ってきたワインをおいしそうに飲んでいる。

 クリスティの話し次第では、今飲んでるワインの味が変わりそうだな。


「一人で10丁の銃を撃てるとしたら?」

「「何だと!」」


 思わず、俺とジャミルは身を乗り出して声を出すことになった。

 懐から出した画を眺めると、確かにこれなら1人で撃てそうだが、持つことは出来ないな。


「荷車なら乗せられるわ。大きくはないから、端に積めるでしょう? 敵陣の前に荷車を並べて相手の突撃時に発射すれば、先鋒に大打撃を与えられるわよ」


 銃身を横に並べてある。発射は火皿に入れた火薬に松明で点火すれば良いようだな。重さは少しあるが、一人で並べるぐらいはできるだろう。これを乗せる台を荷車にあらかじめ設ければ良いだけか……。発射準備が面倒だが、あらかじめ予備の銃を並べた板を用意するのも良いかもしれない。


「おもしろそうだな。20セットも作れば役立つだろう。荷台の改造は10台もすれば十分だ。1つの荷台に2セットを乗せる。敵の突撃は1回だけとは限らない」

「都合100発が短い間隔で放てるなら、先鋒の突進を阻止できるぞ。騎馬突撃にも使えそうだ」


 なるべく白兵戦を減らしたいところだ。それだけ自軍の損害が出てしまう。

 リオン達の戦がその典型だろう。これからの戦はリオン達のように自軍の損害を減らして、相手に大打撃を与えるという形に変化していくのかもしれない。

 それが火薬の使用で可能にはなるのだが、ブルゴス王都のように一般人を巻き込んでしまうのは問題だろう。

 だが、それが避けられない場合は……、心を鬼にするほかにないのだろうな。

 かつて、トルガナン王国の貴族を全てギロチンに掛けはしたが、今でも泣き叫ぶ子供の姿を夢に見ることがある。

 親に問題は合っても、子供まで殺したのは俺の失政になるのだろう。

 おかげで復讐に怯えることはないのだが、俺にも良心と言うものがあったのかもしれない。


「発想としては単純だ。だが、これを戦場で相手が使ったならば我等に防ぐ手はあるんだろうか?」

「あるとすれば、銃弾を弾くほどの装甲が必要になるわ。リオン達は持っていると?」

「向こうが先に銃を作っている。その上作る火薬の質も違うとなれば、これぐらいは持っていると考えた方が良さそうだ」


 銃の弾丸を弾く装甲か……。それを形にするとどうなるのだろう? 当然、人が着用することは問題外だ。


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