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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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077(R) 次の戦に備えて


 ブルゴス兵を退けても数日は、色々とやることがあったから島の代表者を集めることができたのは5日目の事だった。

 次の戦を乗り切るための対策を話し合う場としたのだが、ワイン片手に待機尾周りに集まった面々は、俺の労いの言葉が終わると同時に、同じ言葉を発した。


「「カートリッジが足りん(ない)!」」

「ボルトも使い切りました。定数を増やさねばなりません」

「北の玄関の上に作った広場なら弓も使えますね。5人程向かわせましたがクロスボウや銃の発射間隔を縫うことも可能でしょう」


 要するに球数を用意しろと言うことに尽きる話だ。

 ケーニッヒを使って量産する体制ではいるが、カートリッジに仕上げるためにユーリア達を巻き込むことも考えねばなるまい。


「金属製のカートリッジは上手くいった。射撃間隔が短い分消費が多くなる。金属製のカートリッジは回収してあるから、破損したものは作り直すとして、1人30個は持たせねばなるまい。その上に予備を考えねばならん」


 バドスの言葉に皆が頷いているということは、2倍作れということだろう。これは予想範囲だから頷く外にないな。


「火薬と紙製のカートリッジは俺の方で何とかする。ユーリア達にも手伝って貰うぞ。となると、ボルトと矢も足りないことになるな」

「商人に買い込ませればいい。ボルトも柄と羽を何とかすれば、ヤジリと仕上げは我等で手伝っても構わんぞ」

「仕上げぐらいは自分達でも出来そうです。塩炊きをしながらでも作れるでしょう」


 飛び道具はそれでいいとして、武器も少しは作る必要がありそうだ。槍を20本、長剣と片手剣を10振りほど作って貰おう。


「それで、助けたブルゴス兵達の始末はどうするんだ?」

「ブルゴスに戻ることもできんだろう。商人に家族と連絡を取って貰い、呼び寄せるしかなさそうだな。怪我の程度は?」

「かなりの怪我だ。慈悲の一撃を与えるかどうか悩むところではあるな。とりあえず教会の神官に世話を頼んではいるのだが……」


 重症ということらしい。助かれば良いのだが、亡くなれば墓に埋めることになるんだろうか?

 この島に墓も作らなくてはならないのか? また面倒な仕事が増えそうだな。


「ところで確認したいのだが、亡くなった者達の遺体はどうするんだ?」

「種族によって色々じゃ。鳥葬、水葬、土葬に火葬と盛りだくさんにではあるが、リオンもいよいよ自分の最後を考えるようになったか」


 バドスが何を勘違いしたのか、うんうんと頷きながら俺を見ている。そんな気は毛頭ないんだけどね。


「どうだろう。この島に墓を作れるような余裕はありそうもない。土葬の風習を持った連中には気の毒だが、全て火葬にして1つの墓に骨を収めることにしては……」


 皆の視線がユーリア達エルフ族に向かった。エルフは森の民、土葬ということになるんだろう。


「故郷であれば異端と罵られそうですが、里を離れれば問題はありません」

 ユーリアとアニエールが顔を見合わせて頷いているから互いに了承したということなんだろう。


「我全て種族の枠を超えて一つの墓に眠るのか……。里の長老が聞いたら吃驚するじゃろうが、ワシは賛成じゃ」

「リオンの言葉に従ってこの島をここまで作りあげたんだからな。確かに種族のしがらみ等無かったことも確かだ」


「私も賛成です。我が宗派に種族の違い等という言葉はどこにもありません。神の下では種族などありませんからな」


 神官がそう言ってくれれば、問題はない。バドスと村人それに暇な連中が墓作りに協力することになったのだが……。


「神像を作るだと!」

「神の使いであるグリフォン像の体内に骨を収める場所を作る。そうだな、30体分以上が並べられる棚が欲しい。それ以上入れる時は古い骨を真ん中の井戸に収めることで良いだろう。井戸は大きく作ってくれよ。浅くていい。底は土にしてくれ。骨を土にのせれば土に還るはずだ」


「土葬の風習を持つ者達も納得できるでしょうな。確かに骨は土に還ります。土から生まれた我等の定めなのでしょう」

「大きくなりそうじゃ。里から仲間を呼び寄せても良いな?」

「構わんが、どこに作るんだ?


 バドスの指さした方向は西の尾根だった。東は修道院もあるし、船着き場もあるからな。西の尾根についてはそれほど開墾が進んでいないのが現状だ。これを機会に耕作地も広げられるに違いない。


 王女達には浜の砦の石垣を高くして貰うことにした。北の玄関についてはハリウス達が担当することになる。ケーニッヒの部隊を合わせれば人数的には問題はないだろう。


「墓はバドスの里の者達に任せるとして、銃の更新は順調なのか?」

「10丁単位で進んでおる。春にはラジアン達の部隊の半数を更新できるじゃろう。初夏には全て更新されるはずじゃ」


 古い銃を使って機関銃を作るのかと思ってたら、あまり役に立たなかったらしい。鋳つぶして小型の大砲を作るらしいから、少し変わった砲弾を作って貰おうかな?

 キャノンボールとブドウ弾は作ったから、炸裂弾を作ってみたいところだ。課題は信管になるんだが、それは試行錯誤で遊んでみよう。

                 ・

                 ・

                 ・

 春分が過ぎると農家の人達が畑仕事を始めだした。まだまだ寒いのだが、ロバにスキを引かせて土を掘り起こしている。

 溝になったところに肥料を撒いて整地したところで種を撒くのだろう。

 硝石の結晶化で残った溶液を、落ち葉の上に何度も撒いていたから、それなりに効果はあるのだろう。

 教会で世話をしている鶏の糞もかなりの需要があるようだ。夏野菜を持ってきてくれるとシスター達も喜んでいたな。

 問題はブドウ畑だ。昨年はカゴに3つ分ほど収穫できたから、今年の出来が楽しみでもある。試験的に酒造りをするためにもカゴに10個以上は収穫したいものだ。


「領主様、どうぞ!」

 ユーリアが両手に持ったワインのカップの片方を渡してくれた。

 館のテラスと言えば聞こえは良いが、ただの石畳に設えた木製のベンチに腰を下ろして肌寒い中で仕事に励む島の人々を眺めるのが俺の余暇の過ごし方でもある。


「いつも皆ががんばっている。何とかブルゴスを乗り切ったが次はマルデウスだ。全員無事とは言い切れんな」

 

 今度の戦でもかなりの人数が負傷している。俺だって切り傷が幾つか残ってしまった。単純な傷なら、ユーリア達の治癒魔法で傷は塞がるのだが、内臓に達しているようだと治す術が無いようだ。

 保護したブルゴス軍の何人かは結局助けることができなかった。10人程残った兵士は俺達に従うことを誓ってくれたから、以前のブルゴス軍と同じにケーニッヒの部隊に組み入れた。


「マルデウスとの戦が最後になるのかしら?」

「たぶんね。マルデウスがどこまで俺達とやり合うかは、俺にも予想が着かない。互いに自滅することになったりしたら、この世界……、少なくともオランブル、トルガナン、ブルゴスの3つの王国は群雄割拠の部隊になりそうだ」


 それは避けねばなるまい。

 この島が聖域となっても問題がありそうだ。陸地の村や町にだって俺達の島暮らしの初期にはだいぶ世話になっている。

 戦乱の嵐に揉まれることは何としても避けたいところだ。


「手を結ぶの?」

「血塗られた手だが、場合によってはそれも考えるべきだろうな」

 カップのワインを飲み終えたところで、ユーリアにパイプに火を点けて貰う。画んりな魔法だが、俺には使えないんだよな。


「俺はトルガナン王国の王宮を去る時にマルデウスに言っておいた。『善政を期待する』とね。マルデウスも自分の限界を知っているはずだ。単なる覇王にはならないさ」


 かつて超大国を作った連中が皆数代を経ずに滅んだことを考えると、その要因を自分なりに考えることもある。

 後継者が凡人ならそれで終わりだし、部下の覇気があり過ぎれば内乱が起きるだろう。遠方の情報をどうやって集めるかも問題だ。

 それらをマルデウスがきちんと対処できるとは思えない。せいぜい3か国を版図に加えるぐらいが関の山ではないだろうか?

 それでも大きい版図になる。小さな所領に分割してそれらの頂点に立つ国王を目指すのが長く王朝を続ける方法ではないのか……。


「陸地の囲みが消えたらしい。まぁ、怪しい猟師は相変わらずだ」

「なら、里から仲間を呼ぶぞ。石は東の尾根から切り出すつもりじゃ」

「砦の石垣も、1階程高さを増しています。さすがに今度の屋上には大きな広場は作れませんが狙撃点として使えそうです」


 気候が穏やかになってくると、少しずつ砦の改造が形になって来る。

 岩場では子供達が釣を楽しんでいるが、常にオリックやロディの部下達が一緒になって釣りをしているから安心して見てられるな。

 トマスの話では、春の種撒きが終えたら塩作りを始めるとのことだった。潮汲みは東の岩場から延びた水路の先にある潮汲み井戸からだが、バドス達の工事が邪魔にならなければ良いのだが……。


「後は、カートリッジだけだな。先ずは火薬を作って、次はカートリッジだ」

 ケーニッヒに促されて、火薬を大量に作ることになった。

 大砲、ロケット、手榴弾、それに銃のカートリッジだからタル3個分を作っても直ぐに消費してしまう。

 材料は倉庫にたくさんあるから、今年は火薬作りを2回行うことになった。

 ロット毎に試射を行い品質を確認する。無駄じゃないかと言う者もいるが、役立たずでは命を落とすことにもなりかねない。作った品の1割はこうして無くなっていくのだ。


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