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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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071(R) 浜の砦の拡張


 王女達は特別な待遇をまったく要求してこなかったが、ログハウス暮らしをさせるわけにもいかないだろう。

 館の空き部屋を2つ提供して暮らして貰うことにした。

 小隊長はラジアンという名前だったが、王女の名がパンドラと聞いて思わず昔話を思い出してしまった。

 ブルゴス王国の古い女性の名前だと言っていたから、ギリシア神話のパンドラとは異なるのだろう。


「兵士の数が多いから、冬前に兵舎をなんとかしたい。村に数軒は空いているがそれでは足りんだろう」

「船で板を運んできました。少しは役立つと思います」

「場所はどこに建てるんじゃ?」


 バドスの言葉に改めて島の地図を見る。せっかく開墾した畑を潰すのも問題だということだろう。

 

「全員を同じ場所とすることは難しいな。教会の西側と浜の砦付近に作るか。浜の砦の周辺はキャミーが果物の苗をたくさん植えてるから、あまり伐採すると文句が出そうだ」

「砦の広場をテラスのようにして左右に広げれば良かろう。南側と左右の壁を石作りにすれば防衛も容易じゃ」


 南側の壁を石作にした長屋ってことかな? 確かにおもしろそうだ。浜から見れば立派な砦にも見えるだろう。それだけ威圧効果があるということになる。

 教会の西に作る長屋は女性達や家族を住まわせれば良い。教会から距離を置けば教会の雰囲気を壊すことはないだろうし、何といっても子供達の面倒を見ているのだ。女性兵士達が少しは面倒を見てくれるかもしれない。


「それで良いだろう。ハリウスに監督を頼む。バドス達は砦の長屋を手伝ってくれ。頑丈に作ってくれよ」

「となると、大砲を運びたくなるな。1門をテラスに置けるようにしておくぞ」


 王女達が船に戻ったところで、残った俺達は打ち合わせを続けることになる。

 少なくとも1個小隊の戦力増加は嬉しいことではあるが、食料自給に問題が出てきたことも確かだ。

 それに少しずつ形になって来た貨幣経済ともいうべき商取引が王女達には難しい問題として出てくる。

 残った金貨を両替して兵士達に定期的に配分することになるんだろうな。金貨10枚も両替すれば数年は兵士達に毎年銀貨を2、3枚は配ることもできるだろう。彼等の食料は片手で掴んだ金貨で賄えばいい。

 

「彼らに渡す銃が問題じゃな。予備の銃と新型との更新で生じた銃を渡すことになるだろうが、カートリッジの予備が一気に半減するぞ。それに何度か撃たせねば感触も分からんだろう」

「分隊単位で支給して練習させるしかないだろうな。火薬は俺ががんばろう。材料も運んできたようだ」


 島の暮らしについてはラジアンと侍女のスーザに少しずつ教えれば良いだろう。分隊長達を集めても良さそうだ。

 その人選を行って、商人達に次の荷を依頼することになったのだが。


「出来れば戦闘時の衣服を揃えた方が良いだろうな。鎖帷子は白兵戦を行える者に支給するとしても、衣服がばらばらだと入り乱れた時に面倒になるぞ」

「革ヨロイで十分じゃないか? あまり重くすると動きが鈍くなる」

「ヘルメットは鉄製が良いぞ!」


 たちまち口論が始まってしまった。

 確かに悪くない考えだ。鎖帷子は革ヨロイの下に着用すればいいだろう。ドワーフ族は鎖帷子で全身を覆うのだが、薄手の革ヨロイならその上に着用することもできるだろう。


「分かった。ここは俺の考えで決めさせてもらう。装備の基本は革ヨロイにする。白兵戦を行える者はその下に鎖帷子を着こんでくれ。少し鎖帷子の鎖が細くなるかもしれないが、バドス達なら改良することは容易だろう。不足分は購入すれば良い。それでだ、革ヨロイは目立つように赤に染めるぞ。アラルの赤備えとして勇猛さを高めることにしよう」


 それはまた、なるほど……、と言った声が聞こえてくる。

 反対する者はいないようだな。ある意味、ユニフォームみたいなものだから、目立つ方が良いに決まってる。目立つ色だが、砦や壕に隠れて銃を使うんだから、特に問題はないだろう。


「全員が同じ革ヨロイだと、部隊が区別できなくなる。それは首に巻く布の色で区別したい。各部隊を預かる連中で相談してくれ。俺は黒にしておく」

 またうるさくなったけど、落ち着くまではパイプを楽しもう。たぶん直ぐに決まらないはずだ。


 翌日は、入り江に泊まった2隻の船から次々と荷が小舟で浜に陸揚げされる。

 せっかく船着き場を作ったのだが、大型船の接岸は出来ないらしい。これより2回りほど小さな船なら十分なのですがと船長が言っていたから、そんな船もあるのだろう。次はそれに荷を積んでやって来るかもしれないな。


 濡れては困る荷物は村の空き家に運び、兵士達の為に浜の砦の西にテント村が出来たようだ。

 だいぶ育ってきた果樹の合間にテントを張ったからキャミー達が文句を言うことも無いだろう。

 バドス達は子供達と一緒に浜の砂利と砂を使って簡易セメントでブロック作りを始めたようだ。


 積荷を下ろした船は商人達を乗せて翌日に出発していった。

 ユーリアが金貨20枚を託したと言っていたから、革ヨロイの費用なんだろう。軍備が一番金が掛かるからな。

 バドスの要求した金属地金や石炭は金貨3枚にも達しない。

 トマス達が作った塩を大事そうに船に運んでいたが、村人も現金が分配されるから皆が手伝っていたな。


 やって来た元近衛兵の三分の一は女性だった。男女比率がまた男性側に傾いてしまったがこれは直ぐに改善できるものではない。

 となると、白兵戦ができる近衛兵はどれ位になるんだろう?

 浜の砦の広場で俺と一緒に焚き火を囲んでいたラジアンに聞いてみた。


「全員が長剣を使えますよ。とはいっても多少の技量の差はあるのですが、第4分隊は女性のみで構成しています。彼女達は長剣以外に攻撃魔法と槍を持ちます」


 長剣は飾りに近いということか? それでも槍と攻撃魔法を小隊の1分隊が持つというのは貴重だ。

 長剣を使うのは白兵戦だからな。その前の戦が出来るということになる。


「全員に槍を持たせますから、稽古をお願いしますよ。別な武器と組み合わせれば長剣を使う機会はあまりないはずです。ですが、いざというとこには長剣は無くてはならないものですからね」

「少し安心しました。リオン殿の部隊の半数近くが長剣を持っていませんからね。片手剣で戦をしてきたのかと、昨夜は皆で話していたのです」


 片手剣は護身用だからな。さすがに剣を持たないというところまでには行かないだろう。

 島に残った森から伐採した木材を使って教会の西にログハウスで長屋を作り始めたのはハリウス達だ。

 真直ぐな丸太が少ないからあまり大きくは出来ないが、冬が近いから早めに作らねばならない。

 砦用のブロックも順調に数が増えている。


 10日も経った頃、またしても大型船がやって来た。

 どうやら木材を大量に運んできたらしい。バドス達の荷も届いたところをみると、地金はある程度問屋がストックしてあるのだろう。

 これで、一気に長屋作りが出来るな。


 商人が船から降りてきたらしく、館の広間までロディが案内してきた。

 どうやらブルゴス王国の様子が少し分かってきたらしい。侍女から渡されたワインをおいしそうに飲みながら話をしてくれた。


「火の粉を撒きながら飛ぶ兵器で王都は焼かれたようです。かなりの民衆が犠牲になったらしいのですが、トルガナン王国軍はその後の略奪行為には及ばなかったと聞いております。残った貴族達や投降した兵士の安否までは分かりませんでした」

「今まで通りにブルゴス王国の商会と売り買いができれば俺達は十分だ。だが、路頭に迷うようなものがあれば、善良な者という条件が満足できるならこの島に連れてきても良いぞ。とはいえ、色々と問題もあるだろうな」


「それにも絡んでいますが、おかしな話を聞いたのです。攻め入ったトルガナン王国の軍隊は帰り支度を始めているとのことです。治世を生き残った貴族達に任せて投降した兵士達の多くが王都の東へ移動させるとの話も聞きました」


 トルガナン王国に帰属させることで植民地政策をとるということだろうか? だが、それには軍隊の駐留が不可欠だ。反乱など起こさせたら元の木阿弥になりかねない。

 ひょっとして、反乱を起こさせようというのか?

 それによって将来の不安要因を一気に根絶やしにするとも考えられるな。


「出来れば1か月後に再度訪ねてくれ。売るものは無いが、買う物はあるだろうユーリア達と調整してくれ」

「わかりました。たぶん焚き木と板が不足すると思います。穀物は今回運んできましたから、冬越しには問題ないかと思います。それで、だいぶ前に売れるかと尋ねられましたボタンですが、かなりの需要です。出来れば生産を増やして頂ければと」

「作っているのはトマス達だ。船に帰る時に村で確認した方が良いだろうな。農家の冬場の仕事として定着させたいところだ」


 俺の言葉を聞いて笑顔を浮かべている。

 そんなに売れたんだろうか? となると材料が足りなくなりそうだ。貝殻を買い込むなどと言ったら、他の者達はどんな表情をするんだろう?

 広間を去っていく商人の後ろ姿を眺めながらそんなことを考えてしまった。


 荷揚げした木材と板を使って長屋と浜の砦の建築が急ピッチで進んでいく。

 最初に2つの長屋ができたところで、砦作りに人数が集中する。

 すでに南側の壁は高さ10Cb(3m)長さ7Cb(21m)の規模を見せ始めている。旧砦の屋根だった広場付近はすでに出来上がっていた。広場の上に新たな屋根が作られ3方の擁壁には狭間まで設けられている。確かに狙撃するには良い場所になる。


「かなりの出来栄えですね。すでに1個分隊ならば寝泊りできる場所ができています。年を越すころには果樹園のテントで暮らす部隊はいなくなるでしょう」

「この砦をお願いしますよ。予備兵力は農民兵ですから、あまり頼るのも問題です。ですが、離れて戦うのであれば十分に兵士として使えますよ」

「弓で援護してくれるだけでも助かります」


 弓ではあるが、クロスボウだからな。かなり役立つに違いない。

 だけど、これだけ立派な砦が出来ると船着き場から砦までの道を整備したくなる。

 来年は島の中の道をきちんと整備するか。

 特に東の修道院までは尾根を歩く道だ。昼間はともかく、夜もそれなりに安心して歩ける道に整備しなければなるまい。


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