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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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069(R) 新たな援軍


 入り江の中ほどで帆を畳み、投錨した商船はかなりの大きさだ。全長だけで30mはあるんじゃないだろうか?

 初めてみる大型船に、村人達が浜の砦の直ぐ上まで下りてきて眺めている。


「小舟を下ろしてこちらに来るようです。漕ぎ手が4人、それ以外に3人が乗ってるようですね」

「数人なら何とでもなる。最初から戦にはなるまい。ハリウス、一緒に行ってみるか?」

 俺の言葉に、ハリウスは望遠鏡を下ろし、数人の部下に一緒に来るように指示を出した。


 短銃が使えることを確認したところで、砦の門を開き浜に歩き出す。

 小舟の方も俺達に気付いたらしく、方向を修正してこちらにやって来るようだ。

 俺達と懇意の商人達だろうが、あれほどの船なら1隻に積める荷物の十分の一程度が俺達との取引量だ。やはり、何か別の目的があるのだろう。他国への貿易船を手配したのだろうか?


 浜で待つ俺達の直ぐ傍に小舟が着いた。降りて来たのは3人の見覚えのある商人達だ。やはり約束通りに荷を運んできてくれた。


 とりあえず先ほどまでいた、砦の上の広場に向かう。焚き火の傍にあるベンチに腰を下ろして話を聞こう。

 小舟の漕ぎ手達には、ハリウスの配下がワインを持って行くようだ。俺達に協力してくれるなら、それぐらいはしておかないとね。


 焚き火傍のベンチに腰を下ろしたところで、ユーリア達が2人の商人相手に運んできた荷と塩の交渉を始めたようだ。

 雑貨屋の主人とトマスもやがてやって来るのだろう。


「商売の方は向こうに任せて、2隻の大型船でやって来た訳を話さねばなりません」

「貿易船に便乗したと思っていたのだが違うのか?」


 ワインのカップを傍らに置くと、商人は俺の顔をジッと見つめる。


「ブルゴス王国が滅びました。10日程前の事です」

「「何だと!」」


 興味半分で俺の隣に座っていたハリウスと一緒に、大きな声を上げてしまった。

 攻め入ったトルガナン王国軍は5個大隊程度だろう。ブルゴス王国が一度大敗したとはいえ、その多くが辺境の郷士達の手兵だ。ブルゴス王国軍は4個大隊以上残っているはず、それがいとも簡単に滅ぶものだろうか……。


「信じられないのも無理のない話です……」


 そう言って、商人が語ってくれた内容によると、電撃戦を行ったようだ。

 騎馬隊を先行させてブルゴス軍に邪魔されることなく王都に向かったらしい。

 慌てて王都に急ぐブルゴス軍の後方から着実にトルガナン軍は王都を目指し、王都の防壁を前に慌てて陣を築くありさまだったということだ。


「王都正門の前はブルゴス軍で溢れる状態だったと聞いております。そこに、不思議な武器を連ねたトルガナン軍が現れ、矢の届く遥か彼方から攻撃を開始したようです。

 たちまち、負傷者が溢れかえる状態になった時に、ようやく王都の門が開き残ったブルゴス軍を王都内に入れたようです。

 その夜の事、4方から王都に大型の火矢が撃ち込まれ、その数は200以上にも及んだと聞いております。

「2日目の夜が明けた時、国王は自らの首をトルガナン王国軍に届けたということです」

「2日で王都を陥落させたのか……。マルデウスの奴は、いったい何を使ったんだ!」

「後で教えてやる。だが、船が2隻の理由はそれでは分からんぞ」


 商人は、ワインをゆっくりと飲んで喉を潤している。

 

「2日目の夜。近衛兵を使った一斉突撃を北門で敢行したと聞いております。その部隊に紛れて、王女様と婚約者の近衛兵小隊長を脱出させました。かの船に乗っているのは王女様御一行と生き残った近衛兵達です」


 そういうことか。問題は近衛兵の数になるな。


「頼ってくれるなら、それに答えよう。だが、近衛兵を何人連れて来たんだ? 俺達の戦力を上回るようでは追い返すことも考えねばならん」

「王女と侍女それに魔導士達が10人程、2個中隊の近衛兵の内、船に乗ることができたのは1個小隊です。負傷した近衛兵達はこの船の脱出の時間稼ぎをしてくれた模様です」


 さぞや凄惨な戦だっただろう。ブルゴス王国再興を願ったのか、それとも王女に対する最後の親心だったのかは分からないが、ここも余り安全ではない。

 とはいえ、ここに来て1個小隊の増援を得られるならかなり有利に戦をすることもできるだろう。

 北の玄関は早々落ちることはない。問題は船でこの入り江を目指す軍船の対抗措置だからな。


「この島に滞在する条件を伝える。1つはブルゴス王国での身分を忘れること。もう1つは俺達の戦に協力してくれることだ。ここもトルガナン王国に狙われていることは確かだからな。今も陸地にはトルガナン王国の手勢がいる状態だ」

「直ぐに伝えます。もし、王女様方がリオン様の条件をお飲みになる時には?」

「館に連れてきてほしい。ハリウスをこの砦に残していく」


 商人の顔が悲壮感にあふれるものから笑みが浮かんだのは、俺の条件をある程度予想していたのかもしれないな。

 俺達に深々と頭を下げて、2人の商人を連れて小舟で入り江に漕ぎだしていった。


「1個小隊の援軍でもありがたいところだが、本当にブルゴスは滅んだのだろうか?」

「たぶんな。ところでハリウス、ここを頼むぞ。俺達は館に引き上げる。一応、砦の戦力が少ないから監視は継続した方がいいな」

                 ・

                 ・

                 ・

 オリガンドの部下が島に点在する連中に状況を知らせると、その夜には主だった連中が集まって来た。

 夕食を取ったところで焚き火の周りに集まり、ワイン片手に簡単な状況を説明する。


「ブルゴス王国が滅んだと!」

「間違いなさそうだ。やはりマルデウスと俺は同類のようだな。俺達の兵器を聞いて似た兵器を大量に作り上げたらしい。それを使うなら短時間の戦闘で王都を陥落させることも出来ただろう」

「なら俺達にも……。兵士の数が足りないということだな?」

 ケーニッヒが、自分の話の途中で気がついたみたいだ。まったくその通り、いくら強力な兵器を持っていてもそれを扱う兵士が少なければ役には立たない。


「白兵戦ができるなら都合がいいな。少なくとも浜を効果的に守ることができる」

「オリックを西の峰に置けば、ロディ達を予備兵力にできそうだ。さらにトマスの部隊が使える」

 

 オリガンドとハリウスはホッとした表情で話をしている。反対意見は無いようだ。


「俺達の島に向かえることで良いな。侍女と魔導士も少しは連れてきているようだ。ここに王女がいるとなれば、ブルゴス王国の敗残兵も今後増えるかもしれない。前にここを攻めた連中でなければ許可しようと思う」

「あまり増やすのは関心せぬな」


「それも分かっているつもりだ。彼等には火薬の作り方は教えぬし、新型の銃を渡すことはない。それで、出来たのか?」

「今少しじゃ。縦が良いか横が良いかを迷っておる。リオンはどうじゃ?」

「短銃なら縦。長銃なら横だな」

「たぶん先例があるのじゃろう。だが、少し理解できたところもある。10日後には届けられそうじゃ」


 木琴のように並んだ銃身を見て、バドスに頼んだのだが2連銃はそれほど難しいものではないらしい。それではと、後装式の薬莢という概念を教えたらおもしろそうだと言って帰って行ったんだよな。

 果たしてどんな形になるのか楽しみではある。

 前装式と比べて格段に次弾発射までの時間を短縮できるはずだ。銅が大量に必要になるかもしれないのが問題だが、薬莢を回収すれば次にも使えそうだ。


「元近衛兵達にも銃を使わせるのか?」

「新たな銃が作られている。旧式を渡せば問題ない。それに彼等には火薬は作れない」

「出来れば長銃にしたいところだ。近付けばクロスボウを使わせることもできる」


 さらに接近するなら白兵戦ということになるだろう。その前に、手返しの良い短弓も使えるかもしれないな。北の玄関は石垣を高くしているが、南の砦は石垣も高くないし、左右の障害はクロンギスが頼りの状況だ。

 去年植えたばかりだから、俺達の腰までどうにか伸びたところだ。

 数年経てば立派な障害に育つだろうが、その前は何とも心もとない障害だな。


 翌日、朝食を終えてケーニッヒと炭を粉にする作業を始めようとしていた時だ。

 侍女が広間に駆けこんでくると、立派な身なりの人達を連れてハリウスがやって来ると教えてくれた。

 ケーニッヒに素早く顔を向けると俺の視線に気付いて小さく頷き、侍女にワインの準備をするように言いつけている。


 さて、どんな連中だ?

 ここに来るということは、一応俺の条件を飲んだということになるのだが……。


 しばらく待っているとハリウスが数人の部下を連れて、数人の男女を従えて入って来た。ハリウスの部下が広間を出たことを確認して、来客にベンチを勧める。


「生憎と、田舎の館ですからこのような場所での会談になります。これでも、この島の重要案件は全てこの広間で行っていますから、状況を察して貰えればありがたいところです」

「こちらこそ、押し掛けてしまいご迷惑をおかけします。私共は、リオン殿の条件を全て受ける覚悟ができております。それと、迷惑料としてこれをお納めください」


 王女の年齢は16歳程度だろう。となると隣にいる身なりの良い青年は親同士の決めた縁組ということになるのだろうか? どう見ても20歳近い年齢だ。

 金髪を高く結い上げた顔はアーモンド形だ。十分美人の範疇に入るだろうな。青年の方は筋肉質とは言えないが、痩せているわけではない。身のこなしを見る限り、それなりに戦うこともできそうだ。

 他の随行人は30代の侍女とフードを深くかぶった女性、たぶん魔導士なのだろう。もう1人の男性は青年の副官なのだろう。茶色の髪をしたりりしい顔で俺を睨むように見ている。


 侍女らしき夫人が立ち上がって俺の元に手箱を持ってきた。

 手渡された手箱を開けるときんかがぎっしりと詰まっている。200枚を超えるんじゃないか?

 手箱に手を入れて一掴みの金貨を手にすると、手箱をケーニッヒに渡し、手にした金貨はユーリアの膝に置いた。


「暮らしに困っているわけではありません。王女もいろいろと入用でしょう。兵士達の新たな武器の装備費と食料はこれで十分でしょう」

「近衛兵の武器は王国でも一級品です。長剣で相手をすれば2倍の敵にも負けることはありません」

「それでもトルガナン王国に屈したということをお忘れなきよう。俺達はトルガナン王国の侵略を2度、ブルゴス王国の侵略を1度撃退しています。それは天然の要害であるこの島の特徴もありますが、武器の違いに寄ることも大きいのです」


 まだ俺達のロケット、大砲、それに銃やクロスボウを知らないだろうからな。

 人数の違いが大きくなければ武器の優劣は戦の勝敗を十分に左右する。


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