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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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065(R) 教団からの協力者達


 冬は農民だけでなく、ハリウスやオリガンドの部隊も開墾に励んでいる。

 俺達のブドウ畑もかなり東に伸ばすことができた。

 農家の段々畑も、村のある段は東の岬に続く尾根に到達したようだ。とはいえ、その下に2段あるからまだまだ開墾する余地はあるし、西についてはほとんど手付かずの状況ではある。

 段々畑の段を作るまでに至っていないから、切り開いた斜面は羊やヤギの放牧地になっている。

 

 開墾で切り倒した木々は焚き木に出来るし、ロディとオリックが交代で陸地の森から焚き木を集めて来るから、今年も焚き木で苦労することは無いだろう。

 去年の冬に集めた焚き木だってだいぶ残っているし、塩炊きに使う焚き木は3つの焚き木小屋に山積みされている。


 そんな仕事をそろそろ終えようとしていると、行商人達が荷馬車の列を作ってやって来たと北の玄関から連絡が入った。

 ハリウス達がロディ達を連れて直ぐに出掛けて行った。陸地では俺達は非力だからな。周辺の監視を行うつもりなんだろう。

 

 トマスやユーリア達も村の雑貨屋の夫婦と一緒にラバを引いていくようだ。

「リオンは行かないのか?」

「そうだな。情報を仕入れに行くか」

 毎度のように出掛けるのもどうかな? と少し考えていたのだが、別に領主を気取ることもないだろう。


 この島の代表者であって統治しているとは言いがたいところが多すぎる。

 ある意味、共同団体と言えるのかもしれない。だけど、協議する時に皆が出てくると収拾がつかなくなるから、自然と昔の仲間にトマスや神官、オリック達が出てくる状態だ。今はオリガンドや雑貨屋の主人が加わっている。


 ケーニッヒと北の玄関に行くと、皆が広場に集まっている。どうやら海の道を歩けないらしい。

 石垣の上で様子を見ると、それほど待つことはないだろう。すでに波に洗われる道は姿を現していた。

 陸地に望遠鏡を向けると、砂地に座り込んで海の道を眺めているのが商人達だけではないことが分かる。

 手作りの望遠鏡だから、詳細までは分からないが王国軍の兵士とも異なるようだ。荷を守るために傭兵団を雇ったのだろうか?


「どうした? 珍しくもないだろうに」

「珍しいぞ。あれを見てみろ」


 俺の様子を見に来たケーニッヒに望遠鏡を渡す。

 覗いた途端に表情が変わった。望遠鏡をしばらく覗いていたが、ゆっくりと俺に顔を向けた。


「兵士ではなさそうだが?」

「かといって、農民達にも見えん。ハリウス達には注意をするよう伝えてくれ」


 俺に頷いて直ぐにしたの広場に向かった。

 ハリウス達は駄馬に乗って行くから歩くよりは格段に速く向こう岸に着く。状況を確認してから向かった方が良さそうだな。


 跳ね橋が下ろされると、馬に乗ったハリウス達が海の道を渡っていく。その後をラバを引いたトマス達がゆっくりと海の道を渡り始める。

 どれ、俺達も歩いていくか……。


「修道士達を連れて来たとは思わなかった。それにバドスの里から6人だな。案内してくれて感謝する」

「色々と噂が流れてますよ。それはお茶を飲み流れでもお話ししましょう。積荷は硝石に硫黄と石炭です。その外、細々した品物を運んできましたが、ユーリア様から頂いたリストの品は全て揃えました。雑貨屋の取引量も増えてますから将来は雑貨屋で全てを取り仕切ることも出来そうです」


 俺達のとってもその方が都合が良さそうだ。となると、夫婦1組では足りないだろう。


「出来れば、もう一組の夫婦を島に置いて頂けないでしょうか? ブルゴス王国で没落した商人なのですが……」

「増やすことは問題ないが、1度船で荷を運んでくれないか? 船着き場は出来たが、それで荷役が出来るかを確認したい。そちらにとっても船便をしようするときの値段を考える必要があるんじゃないか? とはいっても、戦時に荷を運ぶ時には5割増しの条件は同じだ」


 難しい条件になるのだろうか?

 ブルゴス王国もトルガナン王国と臨戦状態だからな。

 それでも、何とかやってみますと答えてくれた。少しは料金を弾まないといけない感じがするな。


「それで、トルガナン王国の噂ですが、やはり東に軍を進めることは間違いなさそうです。オランブル王国へ王女が嫁ぎましたが、時を同じくして西から軍を引いたとのことです」


 分散している王国軍を終結させているということは、早ければ今年中に始まるということになりそうだ。


「ブルゴス王国軍も分散していた軍を王都側に移動させております。北の豪族達を版図に加えましたが、彼らの軍は先の戦でほとんどが壊滅。ですが王国軍は安泰のようです」

「となると、大戦になるぞ。戦場はこの島から東になるだろうが。トルガナン王国の連中がこの島を封鎖することは間違いない。初夏に荷を運んだら、様子を見た方が良いな。俺達と雑貨屋は何とかなるが、お前達に被害が出る方が問題だ」


 ゆっくりと辺境の村を回りますと答えてくれたが、そうなると初夏までに塩をたくさん炊いておいたほうが良さそうだ。トマス達に伝えておこう。

 次の町で仲間と飲んでくれと言って銀貨を手渡すと、島に向かって海の道を歩き出した。


 海の道が現れるのは2時間ほどだから、小さな荷馬車が何度も往復して荷を運んでいる。

 この道を嵩上げすれば、少しは時間を延ばせるのだろうが大工事になりそうだ。次の代にそんな工事は行ってもらおう。

 現れる時間に制限があることが島の防衛を容易にしていることも確かだからね。


 一足先に館に戻ったのは俺とケーニッヒの2人だけだ。

 のんびりと焚き火を囲んでワインを傾けていると、侍女が来客を告げに来た。神官と修道士達らしい。


 俺の隣にケーニッヒが移動してきたところで、神官に連れられた修道士とシスターが現れた。


「領主殿には挨拶をしておかねばなるまいということで、連れてまいった次第」

「どうぞお座りください。領主と言っても名目ですから、普段通りで構いません。それでこの方達が?」


 空いているベンチに皆が座ったところで老神官が口を開いた。


「前にお話しした通り、我等が教団はこの地で教義を広めるための本の製作を命じました。あの機械を使って始めるつもりです。筆頭はライネスが務めます」

「ライネスと申します。元はラーメル王国の騎士でありますが、神に使える道を選びました。我等の信仰を邪魔するものは例え国王であっても剣を向けるに躊躇うことはありません」


 大きなフードで顔を隠してはいるが壮年であることは間違いなさそうだ。

 それにしても過激な連中だな。俺の信仰と相いれないことも考えられる。少し問答をしてみようか。

 侍女にワインを用意させて彼らにカップを配って貰った。


「信仰心が高いことは重々承知しました。この島の住人の心の支えとしてありがたく思っています。ところで、1つ大事なことをお話ししたい。私は多神教の信者です。朝起きれば朝日に頭を下げ、塩を炊く前にはカマドに頭を下げます。戦が終われば先ほどまで戦った相手に亡骸にも祈りを捧げるような男ですが、その領地で修道院生活を送っても貴方達の教義に問題はありませんか?」


 俺の話をおもしろそうに聞いていた老神官が、ライネスと自己紹介をした男に顔を向けた。


「多神教の話は聞いたことがありますが、それなら尚の事この地で暮らしたいと思っております。多神教は全ての宗教を包含した宗教ともいえるでしょう。我等の教義はその中に入っております。それ以外の教義についても我等の教義と相いれるものがあるやもしれません。それは我等が教団では、誰も知らぬこと。新たな経典の解釈にも繋がります」


 俺に向かって深々と頭を下げる。要するに話し相手として十分だということなんだろうな。それも名目に度々俺の元を訪れるとも解釈できる。

 坊さん相手に問答をすることは無理なんだろう。俺の実力が分かってしまいそうだ。


「問題ないということで、少し安心しました。昔暮らしていた王国では宗教上の対立が戦を招いたこともあります。それを防ぐ目的で1つだけ約束してください。改宗を迫ることはないと……。とはいえ、教会には大勢の村人が出入りしていますし、教会で保護した子供達が多いことも確かです」

「私共の教義は当たり前の事をそのまま伝えるものです。伝えはしますが、それを実践するのは個人ともいえるでしょう。改宗を迫るということは我が教団は行っておりません」


 語尾をだいぶ強めたということは、他の教団は改宗を迫るとも取れるな。

 それだけ分かれば十分だ。

 隣のケーニッヒも頷いているから問題はないのだろう。


「島に事あるときは、ライネスに連絡すればよい。修道僧12人と共に、リオン殿の元にはせ参じるだろう。半数は長剣を使える者達じゃ。残りは弓が使えるぞ。

 ワシの元に神官が1人、それと修道女が3人に見習いが2人。教会で暮らすことになる」

「修道院と教会の増築が必要になりますね。先ずは修道院を先にしましょう。1棟作れば何とか暮らせると思います。教会の方は村の空いているログハウスをしばらく使ってください」

「ありがたく使わせてもらいます。……そうじゃ! 教団で保護した子供を数人連れて来たそうじゃ。今までの子供達と一緒に住まわせても良かろうか?」

「島の人口が増えるのは喜ばしいことです。年長者には戦を手伝って貰っております。責任者として申し訳なく思っております」


 俺の言葉に老神官が頭を下げてくれた。ここの置いてくれるだけでもありがたいと思ってくれたならこっちも助かる。

 ワインの礼を言って立ち去る時は、俺達もベンチから立ち上がって見送る。

 

「元騎士が修道士とはな……。予備兵力として申し分ない話だ」

「全員に短銃と弓を使える者にクロスボウで良さそうだ。これで浜は安心できる」

 

 次にやって来たのはバドス達だった。見知らぬドワーフの娘を従えている。


「里から息子達の嫁がやって来た。ワシ等の洞窟で暮らすが問題なかろうな。息子達と同じ場所を守らせるから、1人は浜で2人は北の砦じゃ」

「急な話だな。俺達は構わんが、ドワーフの嫁取りは本人達の意思は入らないのか?」

「全員、働き者で料理が上手い。器量良しなら誰でも良かろうが? それにドワーフの嫁取りは親同士で決めるのじゃ。数代前までの里への貢献が決め手じゃな」


 変わった嫁取りだが、それがしきたりなんだろう。それなら俺達がとやかく言う話ではない。本人達が納得してないとなれば話は別なんだけど、ここに来たということは本人達も同意してるんだろうな。

 ケーニッヒと顔を見合わせてため息を漏らす。

 娘さん達はバドスに連れられて広間を出て行った。



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