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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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052(M) リオンからの知らせ


 オランブル王国とトルガナン王国の間を使者や特使が何度も往復する。

 それだけ俺達トルガナン王国の後ろ盾が欲しいのだろうか? 貴族勢力が拮抗した状態では、そうなるのかもしれないな。

 いずれにせよ俺達には都合が良い。


 年が明けると、婚礼の日取りが決まる。翌年の春分に式を上げることになるようだ。1年も先の事だから準備は入念に行えるだろう。

 サロンの連中に支度を頼んだら、喜んでいたな。カリネラムも自分の事のようにはしゃいでいる。


 そんな王都が少し浮かれているような時に、東の将軍からの早馬が書状を届けにきた。

 近衛兵が預かった手紙を見て、急いでジャミル達を集める。

 慌ただしくやって来た3人を執務室のテーブルに座らせたところで、書状を持って俺もテーブルに着く。

 部屋の隅に控えていた侍女が、俺達にワインのカップを配り終えたところで、ワインを一口飲んで喉を潤す。


「おもしろい書状が届いた」

 東の将軍からの書状をテーブルに乗せると、ジャミルが手に取って一読する。直ぐにマデリーとクリスティに順に回されたが、3人とも少し驚いているようにも思える。


「リオン男爵からの書状ですか……」

「そうなるな。確かに、あの時そんな話をしていた。一応、義理を通したということになるんだろう。一応、俺を国王と認めてはいるんだろうな。マルデウス国王と宛先にある」


「ブルゴス王国に動きあり。およそ2個大隊……。まだ我等が放った探索者からのその後の連絡はありませんが……」

「たぶん、出入りの行商人からの情報に違いない。取引に満足している商人なら、為になる情報の提供ぐらいはするだろう」


「先の話では、アラル島の占拠だけということだったわね。少しは西に向かうのかしら?」


 確かに微妙な数字ではある。1個大隊なら十分にリオン達を倒せると思うが、その2倍を用意するということが腑に落ちない話だ。


「ブルゴス王国は、リオン達を倒すだけではなく、あの島を拠点化するつもりなのかもしれませんね」

「あの島に1個大隊となるとかなり問題だわ! 東へ進軍したら背後を襲われかねない」


 そういうことか……。リオン並みに頭が良い奴がブルゴス王国にはいるらしい。となると、何としてもリオンには勝ってもらわねばならないな。共倒れが一番良いが、戦力比を考えるとリオン達の劣勢は火を見るよりも明らかだ。


「竜騎兵と軽騎兵の順次攻撃は予定通りで良いだろう。だが、東の大隊の1つを近くに置きたいところだ。万が一、リオンが負けることがあれば、ブルゴス軍の後ろから島を強襲する。それと、島への道の中間近くに船を出しておきたいところだ」


 状況を逐次報告して貰えば後れを取ることも無いだろう。

 マデリーとジャミルの役割分担を確認したところで、改めてワインを味わう。


 その日の夕食の席で、東の国境に動きがあることをカリネラム達に告げた。

 驚きを隠せなかったようで、ナイフを持つ手が止まったままだ。


「まぁ、来春の婚礼に影響が出るということでしょうか?」

「大軍とは思えません。王都から1個大隊を派遣すれば、東を守る将軍達が退けてくれるでしょう。大騒ぎをするようでは、オランブル王国に嫁ぐ妹王女が気の毒になってしまいます」


「マルデウス陛下がおられれば、トルガナン王国は安泰ですね。よろしくお願いいたしますよ」

「御意!」


 先の御妃様の目に適っていれば、王宮内は平穏でいられる。

 侵略軍を容易く討ち取れば、それだけオランブル王国内でのトルガナン王国の評価も高まるだろう。

 今度ばかりは、リオン達に頑張って貰わねばならんな。少しは手伝ってやるんだから、島を占拠される事態は防いでほしいものだ。


 翌日、マデリーとジャミルが王都を発つ。また、オランブルのカルデアン公爵の元に急使を出して軍船1艘を用立てて貰うことにした。

 偵察に秀でた兵士を西に駐屯している部隊から出して貰い、リオン達の戦を海上から監視して貰うつもりだ。ついでに島を一巡りして来れば俺達が行う戦に役立つだろう。リオン達の攻略は陸地からだけでは無理だからな。


 真冬の荒野での戦はさぞかし過酷なものだろうな。

 よくもこんな時期を選んで戦を起こしたものだ。暖炉近くのソファーに腰を下ろして、のんびりとパイプを楽しみながら、ブルゴス王国攻略の作戦を考える。


 たぶんだが、あえて冬を選んだということはブルゴス王国軍の兵士は農民が多いということではないだろうか?

 農閑期であれば、兵士の動員数を増やすことが出来る。農繁期に戦をするなら税収に影響が出るということなんだろう。

 西のオランブル王国と俺達の王国であるトルガナン王国は徴兵制を敷いているが、ブルゴス王国は必要に応じて兵士を徴用する形態らしい。

 平時は農民で必要時には兵士となると、王国の北で開拓を行っている連中に近い形ではあるが、兵士としての練度に問題があるように思える。

 似たような部隊を考えてはいるが、使える部隊であるとは俺は思っていないからな。数が必要な時にだけ役立つんじゃないか。


 小さなノックの音と共に扉が開かれ、近衛兵がクリスティの来訪を知らせてくれる。

 執務室に入るなりクリスティが深々と頭を下げたが、どうやら副官を連れて来たらしい。扉が閉まると同時に頭を上げていつものクリスティに戻る。


「珍しいな。隣の2人が副官なのか?」

「かなり使えるわよ。出身は市民階級だから、昔なら下積みで終わっていたでしょうね。グレンとペニーよ。たまに使いを頼むから覚えておいて頂戴」


 使えると言っていたが、まだ20歳前後に思える。待てよ、ひょっとしてエルフの血が混じっているのか?


「マルデウスだ。クリスティはかつての同胞であり私の国政にも数々の助言をしてくれている。クリスティの元で王国のさらなる発展に寄与してくれ」


 簡単な挨拶に、恐縮して頭を下げている。

 いつまでも立ったままでは話も出来ない。とりあえず暖炉際のソファーを勧めて、部屋の片隅に隠れるようにして控えている侍女にお茶を用意させる。


「それで? まさか優秀な副官を紹介に来ただけではあるまい」

「流星火を手に入れたわ。都合10個だけど、肝心の製作方法までは分からなかったそうよ。要するに、お金で買える兵器ということになるけど、マデリーに大火傷を負わせたような威力では無かったわ」


 クリスティ達が実験したところでは、最大飛距離がおよそ4Rd(600m)で、最後に炸裂することは確からしいが、周囲に影響を及ぼすようなものではないらしい。

 

「改めて、流星火をもたらした商人に注文を出したの。再作方法は知らなくても構わないから、中に入っている黒い粉を買うことは可能なのかをね。金貨10枚を渡したから、春には手に入るかもしれない。この2人にはそれを使ってリオンの使った流星火を再現して貰うつもり」


 火薬を自分達で作らずとも買えば良いということか。

 それで手に入るなら何の問題も無い。もっとも、質が問題ではあるのだが、炸裂するなら色々と使い道が見えてくる。

 この段階で銃は考えないでおこう。パーカションライフルの操作が面倒であることは俺も良く知っているからな。


「試行錯誤で作ってみるということか……。それで十分だ。目標は飛距離が4Rd(600m)以上。周囲の可燃物に着火させることが出来ること。もしくは周囲10Cb(3m)の範囲の兵士に怪我を負わせられることとしたい。100個もあれば王都を炎上させることも可能だ。究極的な攻城兵器になりうる」


 どんなものができるかは分からないが、リオンの作った流星火よりは少し頼りない物が出来たとしても、俺の出した要求事項が満足すれば十分に戦で使用できる。

 性能よりも数が問題であることをリオンに分からせてやろう。

 それにこの種の兵器は、一度作られると少しずつ改良がなされて行くものだ。ブルゴス王国攻略時には十分役に立つだろうし、その後のリオンとの戦においては改良版を使うことになるだろう。


「出来れば、少し軍資金が欲しいわ。まだ、あの黒い粉の製法については諦めてはいないわよ」

「盗み出すつもりか? ちょっと待て」


 席を立つと、執務机の引き出しから金貨を入れた小袋ともう一つ小さな小袋を取り出して席に戻る。


「金貨は20枚。こっちの袋は宝石の原石だ。全部使ってしまっても構わんぞ。できれば職人が欲しいところだ」

「追加の依頼を商会にしましょう。近衛兵の部隊を使っても良いかしら?」

「任せるが、王国軍であることは隠してほしいな」


 俺の言葉に笑顔を浮かべたところを見ると、意図したことは理解してくれたようだ。

 改めてクリスティが連れて来た2人を見る。若いが聡明そうで少し利己的なところが顔に現れている。上に立つことは出来ないだろうが、数人を使いこなすには十分だろう。この世界の技術者の出現になるのかもしれないな。上手く行けば魔法学ではない科学が発展するかもしれない。


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