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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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050(R) 風が吹くかもしれない


 夕暮れ前に潮が引いたところで、海の道に降り立ち道の状況を確認する。

 一緒にバドスの母方の従妹である、グラマスが同行してくれた。ドワーフの男達は18歳を過ぎると髭を伸ばし放題にするから、傍目では区別が着きにくいところがある。ドワーフ達に言わせると、髭の編み方に微妙な違いがあるから直ぐに分かるらしいのだが俺達と暮らす内に、髭に付けたリボンの色を変えるようにしてくれたのがありがたい。

 グラマスのリボンは赤い小さなものだ。三つ編みにした髭の先に着けているのがオシャレということなんだろうな?

 どちらかというと、教会で暮らしている小さな女の子が髪飾りに使いそうなものだ。

 ユーリアに話して子供達にプレゼントしても良さそうな気もするな。ブドウ畑の世話をお願いしてるんだから、それぐらいのプレゼントは構わないだろう。男の子達には小さなナイフ辺りが良さそうだ。それとも釣り竿が良いかな?


「これを見てくれ。どうしても砂が流れて左右の石に隙間から流れてしまう」


 グラマスの指さす石には砂が溜まったところと、隙間から流れ出た跡がはっきりと残っている。


「やはり潮流があると砂は流れてしまうな。となると砂利を敷く外にないが、それでも十分だろうか?」

「でこぼこの岩肌よりは遥かにマシじゃな。砂利を敷いてその上に石畳が理想じゃが、ロバが引く荷車なら問題は無かろう。それに、走りずらくなることも確かじゃ。あの広場を上手く使えるんじゃないか?」


 北の玄関から陸地までの距離はおよそ6Rd(900m)。その中間よりも島に近い場所に30Cb(9m)四方の広場を作ってある。荷馬車のすれ違いを容易にするとともに、北の玄関の出城としても使える場所だ。

 門からの距離はおよそ1.5Rd(200m)だから、長銃の射程距離よりは遠いがバリスタの射程には入るし、大砲を使うには十分な距離だ。

 ある意味、敵に餌を見せているようなものだけど、敵には利用すら出来ないだろう。


「俺にはこれと言った策は無いな。砂利を使って進めるしかないだろう」

「そうじゃな。それで岩の穴を埋めるしか無かろうよ。となると……、工事を終えるのは冬が過ぎてからになってしまいそうじゃわい」


「苦労を掛けるな。だけど頼れるのはドワーフ族だけだ」

「なぁに、ワシ等の住み家と仕事を世話してくれたんじゃ。これぐらいは何でもない話じゃ」


 ドワーフ族の住み家は洞窟を最上と考えているようだ。そんな洞窟が見つからないと、岸壁をくりぬいて住み家と工房を作るとバドスが教えてくれた。そんな住み家が見つからないドワーフ達が、王都や町に石を積み上げて工房を作るらしい。

 

「8家族が暮らせる洞窟は素晴らしいぞ。仲間に誇れるぐらい上物だ」


 喜んでいるならありがたいところだ。鉄製品のほとんどを作ることが出来るし、無理な時にはドワーフの里に注文を出すことが出来る。

 農機具等は行商人達が喜んで買い込んでくれている。ドワーフ族達だけであれば自立もできそうだな……。


「おお、どうやら帰ってきたようじゃ。焚き木を運ぶのも面倒なことじゃて」

 

 陸地からラバに焚き木を背負わせた一向がこちらに向かってくる。防衛隊のどちらかだろう。猟師を装った連中が俺達を見張っているようだから、農家の連中だけで陸地に向かわせるのは問題なんだろうな。

 

「少し役立ちそうなものを行商人に探して貰ってるんですが、中々見つからないようです」

「まぁ、そんなものじゃろう。どれ、玄関に戻って一杯傾けよう」


 今夜は館に帰らず、北の玄関を守る連中と一緒に焚き火を囲む。

 オリックとロディの部隊が3日ずつ交代で詰めているらしい。今日はロディ達の番のようで、焚き火には干潮時に岩場で釣りあげた魚が串に刺して焼かれていた。


「お前達が島の住人を守ってるようなものだ。敵が来れば直ぐに皆が駆け付けてくるが、それまではお前達で耐えなければならんぞ」

「跳ね橋を上げてしまえばこっちのもんです。狭間からクロスボウや銃で反撃すればそう簡単には石垣に取りつくことは出来ませんよ」


 今の倍の戦力があれば俺も安心できるが、現状ではこれが精一杯だ。

 子供達が大きくなっても手伝ってくれるとは限らないからね。まぁ、あまり無理をせずに防衛力を高める外に手はなさそうだ。


 翌日の干潮時に、陸地から大勢の人足がモッコで砂利を運んでくるのが見えた。隣の王国から雇った連中だな。荷車で運んだ砂利を海の道に少しずつ敷いている。

 ちゃんとした砂利道が出来上がるまでにはもう1年ほど掛かりそうだ。


そんな中、3騎が海の道を渡って来る。たぶんハリウス達に違いない。さて、どんな噂を仕入れて来たのだろう。俺も、北の玄関を出て館に戻ることにした。


 館に戻ると、ケーニッヒが釣竿の手入れをしていた。農家の誰かが大物でも釣り上げたんだろうか? それともトマス辺りを誘うのかもしれないな。


「釣りか?」

「バドスの弟が大きいのを釣り上げたんでな。トマスと行ってみるつもりだ」

「今夜は魚のスープになりそうだ」


「焼き魚を付けてやるよ」

 そう言って、ケーニッヒが館を出ていく。無趣味な男だと思っていたが、釣りを趣味にするとは思わなかった。


「貴方も、始めては?」

 ユーリアが、焚き火のベンチでケーニッヒを見送っていた俺にお茶を用意してくれた。


「止めとこう。釣り名人を名乗る者がこれ以上増えたら魚だって苦労するだろうからね」

 俺の答えが面白かったのか、片手で口を押えながら笑っている。

 平和な一時だな。笑い声が絶えない暮らしを目指したいものだ。


「ただいま戻りました。ユーリア殿、お求めの品です!」

「ありがとう。雑貨屋にも無かったからちょっと困ってたの。助かるわ」


 大きな袋には何が入ってるんだろう? 同時に渡した小袋は両替した銀貨のようだ。海の道を整備しているから、日当の用意をしているんだろう。


「まぁ、座ってくれ。それで、どうだった?」

 ロディと一緒にベンチに腰を下ろしたハリウスに状況の報告を求めると、お茶を飲みながら順を追って状況を話してくれた。


 王国内はそれほど締め付けが無いようだ。治安はマルデウスの治世になってから格段に良くなっているらしい。農家の次男、三男達は以前なら実家で嫁も貰わずに暮らすことになるのだが、兵士になって給金を得ることが出来るとのことだ。


 徴兵なら安く済むところを、あえて徴募兵としたようだ。

 職業軍人を増やすとなれば、それだけで国庫を圧迫することになるのだろうが、貴族を無くしたことで彼等に回す金が兵士に回されるということなんだろう。

 多くのものが現金を手にするとなれば、それを目当てに商会が動く。経済活動が活発化しているということになるんだろう。

 

「店の品数が増えてたんじゃないか?」

「その通り。だいぶ増えたな。棚を1つ新たに仕入れたと店主が言ってたよ」


 王都から遠く離れた町でも景気が良くなっている。

 マルデウスは覇王ではなく、善王を目指すというのか?


「それと、おもしろい話を聞いてきたぞ。マルデウスの妃になった王女に妹がいるようだな。どうやら西の王国と婚姻を結ぶらしい」

「本当か!」


 やはりマルデウスは覇王を目指す様だ。 

 西に脅威がなくなれば、東に戦力を集中できる。となれば、東に向かうのは婚礼の後になるんだろうな……。


「婚礼が何時かを知る必要があるな」

「噂があるんなら、来年になるでしょうね。庶民なら直ぐにでも一緒になるんでしょうけど、王族ともなればそう簡単には行かないわ。同盟関係や商取引の条約がいくつも締結されるはずよ」


 ユーリアの知識はエルフ族の仲間達とも共有されたものだから、たぶんその通りのことになるんだろう。早くて来年、遅くとも再来年ということだ。


「そよ風か、それとも嵐なのかは分からないが、それまでに準備だけはしておこう」


 最悪のシナリオは島を何艘もの船で強襲されることだ。2、3艘なら小型の大砲でどうにでもなりそうだが、10艘を越えたら迎撃側が追い付かない。

 あらかじめ、敵が上陸しそうな場所を狙える位置に大砲を設置しておくか……。移動時間を削減できるが、大砲の数が増えそうだ。

 それよりは、大型の長銃を作った方が良いかもしれない。俺達の使っている長銃は口径が10mm程度だが、その倍ほどの大きさならそれなりに威力があるんじゃないか?

 小型の大砲が口径30mmで重さが100㎏程あることを考えると、重量を半減できなくもない。自重があるから発射時に跳ね上がることも無いだろう。


 バドスに相談してみよう。そういえば弾丸用の鉛のブロックも足りなくなっていた。

 火薬作りは今まで通りにやるとして、弾丸の充実にも力を入れなければならないだろうな。


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