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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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043(R) 3度目の冬は工事で忙しい


 トマス達が冬に塩作りを行おうとしたのは、農閑期を利用した現金収入の道を作りたかったのだろう。海の道を整備したかったのだが、それも日当次第ということになるんだろうか?

 塩作りから比べれば高額の日当を渡せるだろうから、トマスとも良く相談せねばなるまい。


「だいぶ寒くなってきたが、塩作りはだいじょうぶなのか?」

 夕食を終えて1杯のワインを皆で飲んでいると、バドスがカップを置いて俺に聞いてきた。


「夏よりは捗らないとは思うな。だけど、冬の空気は乾燥しているから日数は掛かるかもしれないができると思うよ。それに、今度は塩田でさらに塩の濃度を高めるから、塩炊きの期間は短くなるんじゃないかな」

「腐る代物でもないからのう。となると焚き木の量は減るんじゃな?」


 バドスに頷くことで答えたけど、冬の焚き木取りは結構な労働には違いない。防衛隊が交互に出掛けて運んでくれているのだが、あまり伐採すると林の資源枯渇に繋がってしまう。

 バドス達も金属加工で大量の炭を使うから、その辺りを心配してるんだろう。


「行商人に炭に代わるものを探して貰っている。見つけたら荷馬車単位で引き取ると言ってあるから、楽しみに待っててほしいな」

「炭に代わるものじゃと! そんなものがあるとは思えんが……」


 驚いてるな。とりあえず笑い顔で返事をしたけど、他の連中も首を捻っている。この世界は未だに石炭の重要性に気が付かないんだろうか?

 見捨てられた資源なら俺にとっても都合が良い。安く手に入るはずだ。

 出来ればコークスに加工したいが、そのやり方が分からない。しばらくは石炭をそのまま使うことになるんだろうな。


「教会の隣に作った長屋はワシがこの冬に改造してやろう。板を黒く塗るということが理解できなかったが、チョークで文字や絵を描くんじゃな。子供達が文字を覚えるには確かに使えそうじゃ」

「石板とチョークは私も頼みました。都合30セットですからしばらくはだいじょうぶです」

 

 話題が教会での子供達への教育に移ったことで、ベルティが嬉しそうに話してくれた。これで来春には本格的な授業を始められるんじゃないかな?

 机と椅子は簡単なものを木工職人に頼んでいる。これも来春までには15セットが低はいる。1セットは2人用だから、子供が増えてもしばらくは持つだろう。


「問題が1つ。どこに雑貨屋を建てるつもりなんだ?」

 ハリウスが俺に向かって問いかけてきたから、これはハリウスが担当してくれるということになるな。


「村の一角で十分じゃないか? この館の隣や教会の隣というのも問題があるだろう?」

「そうなると、道を整備することも必要になってくるな。この島で使う荷車は行商人が使う荷車よりもはるかに小さい。北の玄関から村までの道を整備することも必要じゃ」


「一応、2つの道を考えている。陸地から北の玄関までの道と、バドスが言った北の玄関から浜辺までの道だ。島については俺達で整備したいが、陸地から北の玄関までの道は、王国の職人達を雇っても良いんじゃないか? できれば、その工事に合わせて北の玄関を少し広げたい」


 皆が興味を持って俺を見ているから、説明用の板を持ち出してそれに簡単な絵を描いた。簡易的な黒板だけど、これを知っているから、バドスが教室の黒板を直ぐに作れたのかもしれないな。


「両側に石を積んで、中に砂利を入れるのか……。石畳とすれば金も掛かりそうだが、それぐらいならさほどの工事にはならんじゃろう。だが、人手はかなり必要じゃ」

「玄関に跳ね橋を作るのか。橋の長さが10Cb(3m)というのは、寄せ手対策ということだろうが、破壊槌対策もできそうだ」


「いや、リオンの考えではそれは2次的なものにすぎん。リオンは現状で左右に延びている広場を砦に取り込もうとしてる。これができれば、北の玄関の左右にある崖の上の広場に戦闘員を配置しないで済みそうだ」


 ケーニッヒは気付いたようだ。まさしくその通り。これで北の玄関は堅固な砦に変貌する。石垣も高さを増しているから、船で接近しようにもたちまち狙撃を受けてしまうだろう。

 とはいえ、大規模な船団がやって来た場合を考えると、他の岩場や南の砂浜は問題があるんだが、マルデウスが隣国に目を向けている間はそんな事にはならないだろう。

 隣国との戦が一段落して、奴が内政を考えた時が一番やばくなる。俺達もマルデウスにならって、富国強兵を考えていくしか方法はないようだ。


「そうなると、ワシが監督せねばなるまい。ワシ等の一族で塩田と活字、それに北の玄関とその先の道を担当することになるから、他の設備は担当できんぞ」


 バドス達に任せておけば、北の玄関はさらに立派になるに違いない。ドワーフ族の美的センスは人間族を凌ぐからな。

 オリック達は焚き木を運んでくるから、残った1個分隊をミーシャに預けて雑貨屋を作って貰おうかな。

 

 翌日、皆早くから朝食を終えると館を後にしていった。

 バドス達は分かるが、ミーシャやケーニッヒ達の雑貨屋作りは直ぐに始めなくても良いんじゃないかな?


「嬉しそうに、朝食もそこそこに出掛けましたよ」

「農家のログハウスをたくさん作ったんだから、飽きてたんじゃないのかな?」

「お店となると、少し違うようですね」


 俺には同じに思えるんだけどね? 少し大きめの広間の片隅にカウンターを設けて、

真ん中に棚を2つも並べれば十分に思える。

 首を捻っている俺をおもしろそうにユーリアが眺めている。

 お茶を入れて貰って、パイプに火を点ける。

 いつもは賑やかなんだけどね……。


「これで3度目の冬ですが、マルデウスから2回も襲撃を受けてます。北の玄関を大きくするというのは、近々また襲撃があると考えてるのですか?」

「しばらくは無いだろう。今が作るチャンスだ。王都は西の王国との調整で俺達に構っていられない。俺達に襲い掛かるタイミングは東を平定してからになるんだろうな」


 戦前に戦力を消耗する愚を犯すことは無いだろう。上手く俺達を倒せれば良いが、長期化するようであれば、東の王国が側面を突かれるに違いない。

 小さな島一つに手こずるような噂が国内に広がれば、将軍達が離反しないとも限らない。覇王を目指すならば、マルデウス自身の出撃には勝利以外にはないのだからな。

 俺達を攻めた部隊の隊長達はどうなったのだろう?

 2度目の襲撃はどうみても俺達の様子を探りに来たに違いない。大規模な戦の前に、何度も小さな襲撃は繰り返されるんだろうな。


「ユーリア達を戦に巻き込むのは忍びないが、何といっても戦闘員の数が足りん。子供達が大きくなるまではよろしく頼むよ」

「まだまだ現役ですよ。それに……、子供達に魔法を授けても構いませんか?」


 失念していた。ユーリアは魔導士ではなく魔導師だった。エルフ族の里がどこにあるかは種族以外の者に話すことはできないそうだが、そこで魔導師としての修行を終えたらしい。師と士の違いは、魔法の行使を魔導を行おうとする者達に教えることができるかどうかで決まると、かなり昔に教えてくれたことがある。


「何を教えるんだ?」

「低級魔法であればそれほど苦労しませんが、戦闘用以外の魔法も教えたいですね」


 ならば、治癒と清浄、それに火炎弾辺りになるだろう。獣人族でさえ、1日数回の魔法を行使できるとミーシャが言っていたからね。

 ミーシャは盗みを働いて逃げ出すときに使っていたらしいけど……。あの性格だからなぁ、見つかる方が多かったに違いない。


「希望者には無償で教えてやってくれ。農家の連中も使いたい魔法はあるんじゃないかな?」

「すでに授けてますよ。汚れる仕事ですからね」


 【クリーネ】は必要だろうな。あれがあれば風呂もいらないぐらいだ。

 誰に何を渡すかはユーリアの考えで良いだろう。今までよりも戦力アップになる事だけは間違いなさそうだ。


 長い冬を利用して、皆で島に新たな施設を作っていく。

 雑貨屋は村の中ほどにある空き地を利用して建てられたが、最初に作ったログハウス2軒分ほどの大きさだ。お店と小さな倉庫を家の中に作ったのでそれぐらいの大きさになったらしい。

 雑貨屋の隣には屋根だけの建物を作ったらしい。俺達の館の広間を模したらしく、中央に炉が切ってある。

 農家の集会というのもあるんだろうな。


 塩作りは夏場よりも時間が掛かったらしいが、それは仕方がないだろう。3回ほど塩を炊いて20kg程の塩を手に入れたようだ。これは売らずに村の連中で分配するらしい。


 問題は、北の玄関だ。北に向かって周囲に二回り以上大きくなるから石垣作りだけでも時間が掛かっている。完成に1年以上は掛かるんじゃないか?

 海の道は横幅15Cb(4.5m)ほどに石が並べられていた。まだまだ陸地までは到達していないが、高さを1Cb(30cm)ほどにして砂利と砂で凸凹を埋めるとバドスが教えてくれた。


「北の玄関と道の完成時期は似たり寄ったりじゃな。どちらも面倒じゃ」

「だけど、道が整備できれば荷馬車がそのまま北の玄関までやって来れる。荷を運ぶのは面倒だ」

「とはいえ、敵も攻めやすくなるぞ。跳ね橋は作っておるが、簡単な物じゃからなぁ」


 簡単でも、十分に役に立つ。敵は攻め易くはなるだろうが、道が途絶えたら、そこに集団ができるはずだ。

 蒲萄弾でなぎ倒せるんじゃないか?


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