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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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042(R) 売ることも考えねば


 翌日、陸地の小屋の跡地で商人達とお茶を飲む。

 村に根を下ろす行商人は、モルテグという若者になったようだ。

 小さいころ木登りをして落ちたらしく、足が少し不自由らしいが見た目では分からない。それでも長距離を荷馬車で旅する行商人としては少し問題があるらしい。


「来春には、小さな店を作っとくからな。それを大きくするのは努力次第だが、客はそれほど多くは無い。だが、島の取引を束ねてくれるなら、銀貨で取引をすることが多くなるぞ。それとだ、できれば嫁を連れてこい。支度金はこれで良いか?」


 銀貨5枚を渡したら目を大きく見開いていた。

 村の中で貧乏な商店を構えていた一家の次男らしい。彼の全財産よりも、俺達が譲った荷馬車の方が高いくらいなんだろう。

 嬉しそうに頷いてポケットに入れたところで、商人達に顔を向けた。


「ベルティ達と購入品の確認は済んだと思うが、2つ探してほしいものがある。1つは燃える石だ。色は黒で割るとガラスのような光沢がある。もう1つは、砂利と頭位の石がどのあたりにあるかだ。これは、島と陸地の間の道を整備するために是非とも必要なのだが、島にはあまりないし、こちら側も砂浜だからな」


「最後の方は、東の大河の岸辺で採掘できるでしょう。私の頭より大きな石がごろごろしてます。問題は先の燃える石ですね……。商人仲間にも聞いてみますが、どれほど必要になるのでしょう?」

「お前達がやって来るたびに荷馬車1台分というところかな。何に使うかは話せんが、あるといろいろと便利に使える。それと、ベルティ達が要求した硝石だがあまり上等でなくても良いから、倍を運んでくれないか? だいぶ畑も広がってきたからな」


 手付金として銀貨10枚を渡しておく。

 硝石の質を低下させることに少し首を傾げていたが、畑を大きくしたことで納得してるようだ。

 火薬作りは晶出させた硝石を使うから、質はそれほど問題ではない。何度も晶出を繰り返して純度を上げれば良いだけだ。


「最初は殆どが穀物でしたが、だいぶ自給できるようになってきたようですね」

「あれだけ質の良い硝石を運んでくれたからだろう。あぁ、そうだった。写本をどんなものでも良いから手に入れられないか?」

「写本ですか? 王都の商会に向かえば手に入れられないことはありません。どのような写本を?」


 そういわれると俺の方が考えてしまう。種類がいろいろとあるらしいな。できれば世俗的なものが良いのだが、あまり変な写本では俺が皆の顰蹙ひんしゅくをかいそうだ。


「出来れば、王国内に広く広まっている宗教の解説版が欲しいな。1年の主要な行事を説明しているようなものが一番良いのだが」

「商会で扱う写本は教会から古くなったものが卸されるのですが、それでも1冊銀貨5枚以上になります」

「なら、これで3冊ほど購入してきてくれ」


 金貨を1枚彼らに渡す。お釣りが銀貨になるから都合が良い。

 これで活版印刷の本が広がると思うと、思わず笑いが込み上げてくる。

 島への道ができたところで、商人達と別れて島に急ぐ。

 とはいっても、ベルティに渡された籠を背負ってのことだ。やはり早いところ道を整備しないといけないだろうな。


 背負い紐が肩に食い込む。かなりの重さのようだが投げ出すこともできない。

 ゆっくりと歩いていると、ラバを連れたオリックの部下達に追い抜かれてしまった。体が鈍っているのだろうか? 少しは運動しないといけないんだろうな。


 やっとの思いで、北の玄関にたどり着いた。ここで荷を下ろして、陸地に逆戻りとなる。この先は農家の人達が背負ってくれるらしい。

 2回の荷運びでへとへとになって北の玄関に戻ってくると、ここの警備を担当しているハリウスがお茶を出してくれた。


「領主自らが荷を運ぶのは止めた方が良いんじゃないか?」

「そうしたいけど、人口が少ないからね。ネコの手も借りたいところさ」


 俺の言葉に周囲の連中が笑っている。

 キャミーが新たに数人の若者を連れてきてくれた。島の防衛隊になるためにハリウスがここで鍛えてくれている。ロディが連れてきた貧農の2家族はトマスが村に迎え入れてくれたようだ。防衛隊志願の数人はロディが直々に鍛えているらしい。今年の人口増加は20人というところだな。


 真新しい革のヨロイを着た若者が、俺の背負ってきた籠を担いで坂道を登っていく。

 片手剣が下げられているだけだから、彼等には長銃を撃たせるつもりなんだろう。


「中々筋の良い連中だ。白兵戦にも十分使えると思うんだが」

「片手剣でか? それは止めといた方が良いな。ネコ族は素早くとも非力なんだぞ」

「純粋なネコ族では無いようだ。その証拠に、リオン殿が担いできた籠を背負っていったぐらいだ。ネコ族では2人分に荷を分けるだろうからな」


 そういうことか。いわゆるハーフという種族になるんだろう。親の良いとこ取りになる場合が多いらしい。

 となると、人間並みの体力でネコ族並みの敏捷性を持つことになる。確かに白兵戦向きだな。


「だが、大怪我でもされたら俺達が困ってしまう。せいぜい槍を持たせるのが良いところだ。それでも、十分に助かるからな」


 俺の言葉にハリウスも頷いている。砦の防衛では長剣よりは槍の方が格段に優れている。ハシゴを登って来る攻め手を突くことができるからね。ハシゴから石垣の上に出るには、どうしても一瞬のスキが出来てしまう。その時に槍を繰り出せば防ぐことなどできないだろう。


 石垣の上に上ると、対岸にいた行商人達の荷馬車が離れていく姿が見える。次のやって来るのは一か月は先になるんじゃないかな。

 海の道もかなり幅が狭くなってきた。もう少しで隠れてしまうんだろう。

 下の広場の焚き火の傍で、パイプを咥えていたハリウスに声をかけて手を振ると俺も坂を登って館に帰ることにした。


 館の1階にある大広間の焚き火には、いつもの連中がベンチに腰を下ろしている。

 そんな仲間と話し合いながら現状を整理するのが俺の仕事でもある。


「これで、守備隊は完全に2個分隊になった。3日おきに北の玄関の警備をすることにしたよ」

「女性6人と教会の子供達の中から年長者を選んだ部隊は12人だけど、6人ずつ見張り所で監視をしてもらってるわ。村の有志による義勇兵はロディの担当だたわよね」

「おじさんやおばさん達で15人になるよ。全員がクロスボウを使えるけど、前線は無理じゃないかな?」


 20+12+15ということだな。さらにバドスのドワーフ族は10人は出せるし、俺達だっているから実質の戦力はさらに15人は増えるということになる。

 50人近い戦力ならかなりのものだ。砦を落とすには4倍ともいわれてるから俺隊を落とすには中隊では無理となる。それに海道はそれだけで1個大隊の軍隊にも例えられるだろう。

 子供達が多いから、将来はさらに増えるんじゃないかな。


「リオンの作った銃のおかげで、少人数でも島を守れるのは分かったつもりだが、商人がおもしろい事を教えてくれたぞ」

「西の王国への輿入れの話か? 俺も聞いたが、いよいよ本格的にマルデウスが動くかも知れんな。俺にとっては方向が問題だ。奴は東に軍を進めるつもりだぞ」


 俺が満足そうに頷いていたので、少し頭を冷やそうとしたのだろう。ケーニッヒの言葉は俺も気になっていたことだ。

 東の王国と戦になれば、俺達と取引していた行商人達もあまりここには近づくことができなくなってしまう。

 自給自足体制までもう少しの所に来ているんだが……。タイミングが悪すぎる。

 外界から封鎖されても1年は持つだろうが、2年にまたがるようだと食料が底を尽きかねない。


「保存食を買い込んでおいた方が良さそうだが、あまり買い込んでもなぁ……」

「いざとなれば、家畜も食べねばならん。放牧が可能なら羊を増やすのも方法だぞ」


 冬前なら家畜は安いが、春先には高くなる。家畜に食べさせる冬の干し草だって集めるのはたいへんな労力だ。

 晩秋に何頭かの羊を使って冬に備えるのも、裏事情として干し草の量があるのだろう。


 やはり保存食となれば穀物が一番ということになるんだろうな。

 次に行商人達がやって来た時に、少し蓄え用を買い込んでおかねばなるまい。


 冬が近づくにつれ陸地に何度もラバの行列が向かうことになる。

 オリック達が林に焚き木を取りに向かったのだ。1個分隊が交互に出掛けて行くから、周囲の警戒も十分だろう。

 近頃良く目にする漁師達がいるようだが、たぶんマルデウスの偵察部隊に違いない。俺達を遠目に見ているだけなら気にしなくても良いだろう。

 隙あらば襲ってくるだろうが、冬の戦は兵士達の負担が多すぎる。領土拡張なら春から行うのが一番なんだけどね。


「冬も塩作りをしたいということか?」

 トマスが、会議で言い出したことに少し驚いてしまった。

「貴重な現金収入でございますれば……」


 農家の代表者だからな。許可はしたけれど、きちんとできるかは疑わしいところがある。簡単に塩水の濃度計の使い方を教えておいたが、ユーリアの実験では塩水濃度は20%を越えても溶け残りは無かったようだ。


「なら、この目盛で、この位置まで塩田の海水が変わってからにしてくれないか? 直ぐに塩が結晶化してくるはずだ」

「ありがとうございます。2つ目の塩田もでき上がれば、来年は今年の2倍以上の塩が取れるに違いありません」


 元々は農家の現金収入の為だから、これで良いのかもしれない。

 自分達でどこまでできるか見せてほしいところだ。



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