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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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003(R) 王都への帰還


「ミーシャの持ち帰った情報で、重要なのは3つある。

1つ目は、すでに王都に帰った勇者達のパーティが10以上であること。

2つ目は、王宮に報告に行った勇者達のパーティをその後見た者がいないこと。

3つ目は国王が退位し、王女を救出した勇者が王女と婚姻を結ぶための準備が進められていることだ。

たぶん続々と王都に勇者達が戻っているに違いない。俺達は最奥までやって来たけど、中には面白半分の連中だっていただろうからね」


「でも、勇者達のその後の消息が分からないなんてあり得るのかしら?」

「表向きは褒賞を受け取って、故郷の村に戻ったことになってるんじゃないか? だが、現実には……」

「殺されたということか?

 ケーニッヒの呟きに、ゆっくりと頷いた。

「でも、あれだけ皆で手を振って送り出してくれたのよ。お役御免はどうでも良いけど、殺すことはないんじゃない?」

「王国に勇者は1人だけってことだ。大勢の勇者はそれ自体が国政の邪魔になると踏んだに違いない。それに王女を救出した勇者だけに離宮の情報を渡してるのも気になってはいたんだが」

 

 酒を飲んでも気が晴れないようだ。皆が俺をジッと見ている。リーダーとしての勇者であって、難関は皆が率先して行動してくれたんだけどな。


「で、どうするんだ?」

「帰らねばならんだろうな。国王からの帰還命令が出ている以上、王宮に戻って報告をする義務はある。このまま逃げるのもありだけど、国王に逆らったとなれば反逆罪でどこまでも追手を差し向わされかねない」

「まだ、死にたくはないんだが……」

 バドスがしかめっ面で呟いている。


「少なくともコキュートス宮殿に正面突破を挑んだ俺達だ。そう簡単に討ち取られることは無いだろうし、向こうも俺達の居場所を知っているからな」

 コキュートスの回廊まで知らせに来たぐらいだからな。途中の魔族達の死屍累々の姿を見て報告は入れてるだろう。


「俺達を殺るつもりなら毒殺ってことになる。少なくとも魔法を使えない状態にしなければ王宮自体が無事では済まないくらいは向こうだってわかってるだろう」

「事前に装備を外せとは言うだろうな。武器も無しで戦うつもりか?」


 もう一度全員の顔を眺める。

 確かにこんなことで死にたくはない。ワインを飲みながら、皆に俺の考えた作戦を説明する。


「報告はせざるをえない。ここまでは問題は無いだろう……」

 国王に拝謁するとなれば俺達平民は武器を帯びることが禁じられている。装備ベルトを外した状態で謁見の間に進むことになるはずだ。

「要するに武器を持たなければ良いんだ。武器では無く武器となるものは構わんだろう?」


 俺達戦士は鎖を持つ。ベルトの上に巻いておけば、ベルトだと偽ることも可能だ。

 2重に巻いた鎖なら1.5mほどの長さになる。振り回しても良いし、相手の剣を絡め取ることもできるだろう。

 魔導士達は杖が無くとも、魔法を使う事は可能だ。戦闘になったら盛大に王宮を破壊すれば良い。

 

「まぁ、それは去る時だろうな。その前に報酬は頂かねばなるまい」

 報酬として考えられるのは名ばかりの貴族としての名前だろう。それに領地を頂ければ言う事なしだ。


「領地なんて王国には余っていないはずだが?」

「東の王国との境界近くに島があるだろう? あれを頂く。結構大きな島なんだが、修道院が昔あったと聞いたことがある。今では誰も見向きもしない。辺境も良いところだし、耕す畑さえないからな」


 呆れかえった連中に、俺達で開発することを説明する。要するに付加価値の高い作物を作れば良いのだ。

 

「他の辺境ではダメなのか?」

「俺達を必ず殺しに来るぞ。なるべく遠いところが良い。それに、隣国に近ければ王国軍の派遣は隣国への侵略の意思があるものと見なされかねない」


「昔聞いたことがあるわ。確か、完全な島では無くて、引き潮には道ができるらしいけど」

「その通り。だから、追手も船では来ない。攻める方向は1つしかないんだ。その道を見張れば返り討ちにできる。我等の領地への無断進入となれば合法的だろう?」


 領地があっても人がいないから、農家の食い詰め者や貧農を勧誘しても良いだろう。罪人でない限り、俺達は歓迎したいところだ。


「実際にそこまで行けばしめたものだ。それで、王宮からの逃走は?」

「ミーシャに荷車と馬を用意して貰う。俺達が王宮に行ってる間に、昔の仲間を集めても良いぞ。荷馬車は2台あれば全員が乗れるはずだ。馬は俺とケーニッヒの逃走用だ。俺達に剣を向けた段階で貴族と国王の争いになる。王都に火を点けても問題は無いだろう。俺達をだまって見送るなら荷馬車で王都をそのまま引き上げることになる」


「なるほど、名目貴族でも貴族には違いない。国王と争うことも可能になるのう。言葉質をしっかり取らねばならんぞ」


 翌朝、廃村を離れて王都に向かう。

 荷馬車に揺られて5日目、明後日は王都というところで最終的な打ち合わせを行う事になった。

 ハリウス達5人は途中の村で荷馬車に食料を積み込んで廃村で待つことにする。夜逃げ寸前の農家があれば声を掛けるように告げておいた。

 2家族ぐらいは欲しいところだ。俺達が農地を開墾するとしても、指導できる人が欲しいからね。

 

 新たに購入した魔法の袋に貴重品を入れて、女性2人のスカートに隠す。コキュートス宮殿で手に入れた銀や金の燭台に食器等を袋に詰め込んで腰のバッグに入れて置いた。

 ここで、ミーシャが別行動を取ることになる。


「昔の仲間を誘ってくるわ。それと貧民街を歩いてみるね」

「真面目な奴だぞ。ただの盗賊はお断りだ」


 俺の言葉が聞えたかどうかわからないけど、元気に手を振って俺達から離れて行った。

 翌日。久しぶりに町の宿に泊まる。王都に近いせいか、だいぶ大きな町だ。

 手に入れた銀の皿を2枚売り払って、手元の銀貨を増やしておく。贅沢に食事を取って、明日に備えた。


「15本も毒消しを使うのか?」

「装備ベルトのポーチを満杯にしとくんだ。1本は別に持っていろよ。王宮に出掛ける前に飲むからな」

「この即効性のやつか? かなり高いんだよな。中々持つことなんかできなかったんだが……」

「今では、そうでもないだろう? 武器も予備を持つんだぞ。どうせ取り上げられるからな」

「けっこう、愛着があるんだけど……」

 ミレニアは残念そうに装備ベルトを見てるけど、命には代えられないからな。

 

 王都に向かう荷馬車があると聞いて、銀貨1枚で乗せて貰う。体力は温存しとかないとな。

 王都を取り巻く城壁には東西南北に門がある。その北門から俺達は王都に入ることになった。


「止まれ! 勇者の一行だな。お前達で最後になるぞ。確か……、勇者リオンで良かったか?」

「魔族の宮殿まで辿り着いたんですが、国王の帰還命令で戻ってきました。深手を負いましたので、直しながら今になった次第です。国王への報告は明日と言う事でよろしいでしょうか?」

「ああ、それで良い。一応凱旋に違いないからな。たぶん好きなだけ飲めるはずだ」


 門を守る部隊長に嬉しそうに笑いを作ると、向こうも笑顔を返してくれた。

 勇者一行がその後どうなったか、この連中は知らないようだ。


「泊まる宿はどこにするんだ?」

「ミーシャが教えてくれた。東の門の通りに面した大きな宿屋だと言ってたぞ」


 王都に入ったのは、これで2度目だからね。俺達は田舎者だから、こんなに人が溢れていたら息が詰まる。早めに王都を抜け出したいところだ。


 ミーシャが教えてくれた宿は直ぐに見つけることができた。東西南北の門から続く大通りがあるから直ぐに分る。ついでに問題の王宮も見ることができた。コキュートス並みの大きさじゃないか? これを作るのにどれだけ民間から税を巻き上げたんだろうな。


「ジャミルの紹介だ。5人になる」

 宿に入って、人の好さそうなおばさんにそう告げると、直ぐに鍵を渡してくれた。食事は運んでくれるそうだ。

 大きな部屋はリビングを真ん中に左右に寝室がある。ミーシャの言い付け通りに言ったんだけど、良くもこんな豪華な部屋を用意してくれたものだ。いったいいくら明日払う事になるんだろう?


 その夜、豪華な食事に舌鼓を打ち、食後のワインを楽しんでいると、小さく扉がノックされた。

 ケーニッヒが長剣を持ってゆっくりと扉を開くと、ミーシャが入ってきた。


「素敵な部屋でしょう? 場合によったら最後の晩餐になるからね。それで、昔の仲間が5人に貧民街から2家族を集めたわ。おかげで荷馬車は3台になったけどね」

「十分だ。それで待ち合わせの場所は?」

「東門の外で待ってるわ。出て行く連中の素性は確かめないのよ。門番は王都に入る者達を見張ってるからね。馬も2頭揃えたけど」

「もし、明日の夕刻まで待って俺達が東門を出なければ、廃村の連中とどこか辺境の村で過ごせば良い。金塊を1つ渡してあるはずだ」


 どうなるかは分からないからな。みすみす殺されたくはないが、王都を脱出できる保証もない。ミーシャには色々と世話になってるからそれ位は良いだろう。


「ちゃんと来てよ。それじゃあ、明日!」

 俺達に手を振って出て行った。残ったのは俺達5人だ。ゆっくり休んで明日に備えよう。本来の俺達の武器はミーシャに渡したから、途中で買い揃えた安物の武器をベルトに着ける。ベルトの内側にも鎖を巻き付けた。幅広のベルトの外からは見えないだろう。


 翌日の朝食は質素なものだった。いつもは携帯食料だったから、パンとスープに果物が付いてれば俺達には十分だ。

 食事が終わったところで、即効性の解毒剤を皆で飲む。互いに頷き合って椅子から腰をあげる。

 宿のおばさんに宿代を払おうとすると、すでに受け取っていると教えてくれた。理由は聞かないでおこう。どうやら、この宿は裏の顔も持っているらしい。


 通りを王宮に向かって進む。

「いよいよだな。お前に任せるから上手くやってくれよ。暴れる時には任せとけ」

「まったくだ。今夜も美味いワインを飲みたいからのう。それには体を動かすのが何よりじゃ」

 やる気満々だな。

 だけど、上手くことが進めば穏便に王都を出ることができるぞ。



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