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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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027(M) 軍拡を進めよう


 将軍達に今では住む者もいない貴族の館を与える。

 20家を越える貴族の邸宅があったのだが、その内の大きな屋敷を10戸ほど、将軍用として整備し、残りは中隊長達の屋敷に建て替えることにした。小隊長達の屋敷も作ってあげても良さそうだが、それは少し先になるだろう。


「我等に屋敷を下さると?」

「元貴族の家だが、将軍達の館にすれば壊さずとも済みそうだ。10戸ほど残して、他の館は解体して中隊長達の宿舎を作ろうと思ってる。何とか小隊長までは館を用意してあげたいところだ」


「我等が、将軍職を辞めた時は?」

「息子を優秀な将軍に育ててほしい。あまりにもひどい戦をした時には、降格もあり得るだろうが、それを決めるのは将軍達に頼みたいところだ」


 5人の将軍が副官と共にテーブルを囲んでいる。

 新たな中隊を、各大隊が育て始めたところだ。ジャミルが竜騎兵を2個中隊、マデリーが軽騎兵2個中隊の訓練を始めたのだが、将軍達から数人ずつ将来の隊長となれる人物を出して貰っている。


「おもしろい大隊を作っているようですが?」

「今までの部隊は歩兵が中心だったが、騎兵を中心とした部隊を作ろうと思っている。だが、単独での戦はできないだろうな。将軍達が対峙した敵軍の横、背後を突く部隊と思ってくれれば良い」


「今でも、騎兵はおりますぞ。各大隊ともに1個中隊を持っています」

「だが、騎兵の武器は槍と長剣だろう? 新たな部隊は弓と魔法だ。素早く近づいて矢を放ち、敵軍に当らずに引き上げる。場合によっては敵軍に火炎弾を2個中隊が放つことになる」

 

 将軍達が目を見開く。副官達の何人かは驚いて口を開けている者までいるようだ。


「斬新ですな。東西、どこに遣わすつもりですかな?」

「その時に応じて、ということになるだろうな。できれば2個大隊を作りたいが、先ずは1個大隊を何とかしたい」

「かなりの軍拡ですが、資金は? 民を絞れば国内が不穏になりますぞ」


「貴族政治が終わって、国政は広く民間から登用している。直ぐには上手く機能しないだろうが、少しずつ良くなるはずだ。結果を残さねば直ぐに別な人材に変更するからそれなりに頑張っているぞ。

 このための費用は、貴族達に支払っていた金額の1割にも満たない。それに貴族がため込んだ財産で国庫は溢れている状態だ。今なら軍拡ができる!」


 将軍達は、国内の動きには意外と敏感なところがある。

 抱え込む将兵の大部分が貴族とは縁の無い国民だからだろう。国民の不安は直ぐに兵士の士気に影響しかねない。


「将軍の邸宅を10戸ということは、将来的に10個大隊を作るということでしょうか?」

「さすがにそこまでは無理がありそうだ。早急に7個大隊、できればさらに2個大隊というところだろう。騎馬部隊は、隣のジャミルを将軍としたいが、もう1つの大隊の将軍は、将軍達で優秀な人材を推挙してくれ。さらに部隊が増えた時も新たな将軍は将軍達の推挙で決めてくれれば十分だ。

 それと、現在の部隊構成は将軍達の自由裁量に任せる。一個大隊の構成を16個小隊から20個小隊まで増員を許可する。兵種、小隊数は将軍達の自由で良い」


 近隣諸国はどこも大隊規模は16個小隊で作られている。2割り増しの軍隊が衝突したら結果は火を見るよりも明らかだ。


「思い切った改革ですな。これは良く考えませんと……」

「それと、兵役を終える優秀な兵士の選択はどうなった?」

「例の、兵学校ですな。すでに兵役を終えたものを含めて20名を選んでいますぞ。責任者は、第3大隊の元将軍であるガーランド殿を当てるつもりです」


 元第3大隊のガーランド将軍だな。勇猛であるとともに人格者だと聞いたが、俺の計画に同意できるだろうか?

 一度会って確かめる必要がありそうだ。


 将軍達が部屋を去り、残ったのは俺とジャミルだけになった。部屋の端に控えている近衛兵を呼びよせて騎馬兵の訓練をしているマデリーを呼んでもらう。

 

「将軍達は待遇の改善に驚いてましたね」

「軍政を敷く以上、将軍達には協力して貰わないとな。それに、軍政は見掛けだけだぞ。内政は、民間に移管するようなものだ。とはいっても、その長は后であり、手足となるのは将軍達の夫人や娘達になるんだろけどね」


「さらにその下に民間人が入るということですか。民間人を政治に介入させても問題は無いと?」

「地方長官クラスなら問題は無いと思う。とはいえ、法律と行政、それに裁判に関わる最高府に登用はしないつもりだ。その下部組織までなら問題ないし、その多くは国民達の暮らしに直結している」


 町村の暮らしに直結したものなら、町長達に委ねれば良い。さすがに王都は無理があるだろうけどね。

 そこで、議論が付かない場合は夫人達の出番になるわけだ。


「教主の交代も上手く運びましたね」

「あれだけ宝石を上納すれば、本山も動かざるを得ないだろうよ。おかげでかなりましな教主がやって来た。寄付金はかつての半額を提示したが満足そうな顔をしていたぞ」


 とりあえずは半額だ。さらに2割程度増やすことを考えているが、これは教会のシスター達に王国の子供達の教育をお願いすることで決めようと思っている。

 子供達に教会の教えを行う機会を国王が提供するというのだから、向こうももろ手を挙げて賛意を示してくれるだろう。

 だが、これはもう少し先になりそうだ。

 教会が教えるのであれば、教材は教会の経典の一部になるだろう。経典のどの部分を教材に使うかについて、妻とクリスティが慎重に選んでいるはずだ。

 長くなくとも良い。その教材を使って文字を教えるのだ。さらに簡単な足し算引き算を教えればこの世界では十分な教育と言えるだろう。


 軽く扉が叩かれる。入ってきたのはマデリーだ。直ぐに、兵学校の打ち合わせが始まる。

「場所は、かつてのハイレーネン公爵跡地よ。隣の貴族館を兵学校に改造中だから、広さ的には十分だと思うけど」

「校長が決まりそうだ。ガーランド将軍を召喚して役目を与えたいが」


「あの将軍ね。かなり固い感じがするけど、部下には慕われていたわよ。私の知り合いもかなり絶賛してたわ」


 マデリーの友人だというのが問題だな。少女時代にあこがれていた存在ということになる。それほど人物的な問題はなさそうだが、俺達に協力してくれるかどうかは微妙なところではある。

 やはり一度会って、腹を分かつ必要がありそうだ。元将軍であれば、現在の将軍達にも目が届くに違いない。


「一度内々に合うための御膳立てをしてくれないか? 俺の方から出掛けても良いぞ」

「それはさすがに問題だろう。国王が内々に臣下を訪ねるなど聞いたことも無い」


 ジャミルは反対してるが、王国の将来を考えるとそうもいくまい。優秀な兵士をいかに鍛えるかで今後が決まるといっても良い位だからな。


「気にすることは無い。ここにいるんだからな。王国を拡大するためなら身分など構っていられるか」

「なら、俺も付いて行こう。万が一ということもあり得るからな」


 マデリーの御膳立てで、数日後に第3大隊の将軍宅を訪ねることにした。朝食を終えて直ぐだから、向こうも問題は無いだろう。

 馬車に乗り近衛兵1個分隊を引き連れて、貴族街の直ぐ近くにある将軍宅を訪れた。

 貴族館と比べれば簡素な作りだ。

 それだけこの王国では貴族が権力を持っていたということだろう。


 玄関前に馬車を止めると、他の馬車は庭先に入ってこれないぐらいだ。これも問題だろう。やはり大きな館に早く移って貰わねばなるまい。


 近衛兵が俺達の到着を告げると、直ぐに将軍の妻と老婦人が玄関先に現れ、馬車に向かって頭を下げる。

 ジャミルの合図で馬車を降りると、ゆっくりと玄関に歩いていく。


「朝早く済まんな」

「国王様にはこのような館に御越し頂き、末代までの誉にございます」

 

 将軍の妻なんだろう。着飾ってはいるが華美ではない。貴族の夫人と比べれば雲泥の差だ。これぐらいに留めることはできないのだろうか?

 夫人の案内で客間に通される。上座に案内されたところで、侍女が緊張した仕草で俺達にワインのカップを運んできた。


「多忙のおり、こちらから訪問したことを最初に詫びておく。実はガーランド将軍に再び務めをお願いしたいのだ」

「すでに老骨の身であれば、軍務に着くことはかなわぬと思いまする。まして、第3大隊には長男がおりますれば……。まさか! 更迭と?」


 将軍達内での協議は終わっていたようだが、本人には話していなかったみたいだな。

 意外と、煙たい存在なのかもしれない。


「軍務と言えるかどうか、微妙なところだが……。実は兵学校を作ろうと思っている。各部隊から優秀な兵士を20人推薦してもらっている。彼らを使って下士官を育てて貰いたい」

「下士官を育てなさると?」


 俺をジッと見つめながらワインを飲んでいる。

 俺の人物を評価してるということか?


「先の国王陛下は崩御前に私を呼んで、『マルデウスを頼む』と言われましたが、それがこのことなのでしょうかな? 現役を退いた私めに何を頼むことがあろうかと、思案に暮れたことがあります」


「貴族政治を何とかせねば王国が東西どちらかの王国に飲み込まれると案じた結果だと私は思っている。私に残した最後の言葉は、『王国を頼む』だった」


 俺の言葉に、元将軍が頷いている。

 歳は60を超えているだろうが、がっしりした体形には贅肉など無縁のようだ。さすがに金髪は白髪に変わってるが、眼光鋭い眼差しは今でも十分に将軍として部隊を統率することができるのではないだろうか?


「貴族を排斥したなら、王国の治世に影響が出ると思われましたが、それほど混乱は無いようですな」

「それだけ腐っていたのでしょう。今は后が内政を立て直そうと努力しております。将軍の御婦人方にもご協力をお願いすること多々あるでしょう」


 国王という立場を利用するより、年長者を前に会話を知ると言ったスタンスが良さそうだ。現国王ではあるが、王道等俺は知らないからな。


「内々に、何度かお后様に御目通りいたしました。もちろん私共はお后様にご協力いたします」

 老婦人はガーランドの妻なんだろう。歳を経ても美人は得する典型だ。


「そうなると私も協力せねば示しも付きませんな。まして我が家に足を運んでいただけたとなればなおさらのことです」

「ご協力頂けるということでよろしいですな? これで、私の計画も道が開けました」

「計画とおっしゃられましたが?」


 笑顔を作ってこたえると、直ぐにガーランドが食いついてきた。

 簡単に軍拡と新たな兵種の話をする。かなりの人物だから、俺の計画が近隣王国への侵略だと直ぐに気が付いたようだ。


「あと10年若ければ……」

 小さく呟くガーランドの声を聞きながら俺達は第3大隊の将軍宅を後にした。


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