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二人の勇者の物語  作者: paiちゃん
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019(R) 軍隊がやって来た


 霧吹きで原料を混ぜながら湿り気を与える。これで火薬が粒状化するのだが、最初だからダマが大きくなってしまうのは仕方がない。

 乾燥させる前に、すり潰すことになりそうだ。

 小さなカップで材料比率を変えながら最適な組み合わせを探すのに苦労したけど、一度分かってしまえばこっちのものだ。

 20日も過ぎると、小さなタルに3個分の火薬を作ることができた。


 次はいよいよ銃の試験だ。館の東の空き地を使って銃の固定用の杭と、50mほど先に数枚の板を立てて的を作る。

 照星と照門も作ってはあるが、きちんと調整出来てはいない。試射すればずれがどれ位かを見ることもできるだろう。

 

 小さな容器を3種類作って貰い、その容積で火薬の量を調節することにした。

 銃を杭に縛り付けて、トリガーの紐を石壁まで伸ばす。これなら銃が暴発しても被害は少ないんじゃないかな。


「大げさな奴じゃ。それで、どうやるんじゃ?」

 バドスの言葉が俺の作業を見守る連中の一致した想いに違いない。


「少し面倒なんだ。先ずは、この筒の中にこの粉を入れる。次はこの棒で、3回ほど軽く突いたところで、この球を入れるんだ。最後にもう一度突いたところで準備完了になる。……少し離れてくれよ。俺だってあの壁まで下がるぐらいだからな」


 皆でぞろぞろと広間の壁の中に納まったところで、鏡を使って状況を見守ることにした。女性達が小さな鏡を出したのを見て、剣を鏡代わりに覗いている者もあらわれたぞ。

 紐を引く前に、再度皆の様子を見る。直接壁から顔を出している者はいないようだ。


「始めるぞ。絶対に外をみるんじゃない!」

 そう言って、鏡を見ながらトリガーに連結した紐を強く引いた。


ドォン!

 大きな音がして、銃口から白煙が出る。銃は壊れなかったようだな。

 皆で的に歩いて行き、板にめり込んだ鉛玉を眺めた。

 板厚を確認しながら、その威力に驚いているようだ。


「これなら当たればひっくり返るな。プレートアーマーも凹んでしまうだろう」

「あの音なら相手も驚くんじゃないかしら? ひるませられるならそれだけでも効果があるわ」


「次の発射をしてみるぞ!」

 次は、火薬の分量が5割増しになる。これで銃が壊れなければ十分に役立ちそうだ。

 今度の試験では分厚い板が貫通してしまった。

 同じ距離からクロスボウでボルトを打ち込んでも刺さりはするが、貫通することは無い。銃はクロスボウを超える威力があるということが確認できたわけだ。


「これは杭に縛って使う物じゃない。こうやって構えて発射するんだ!」


 俺が手本を見せたけど、発射の衝撃はかなりのものだ。少し、火薬の量を減らしても良いのかもしれない。

 何人かが試射したところで、ネコ族とイヌ族の連中が不平を言い出した。

 確かに彼らの体力では問題だろう。

 バドスが小型の銃を作ると言っていたから、彼らも納得してくれたのだが、バレルを長くすれば十分に使えると思うけどね。発射時のショックを上手く受け流す持ち方も考えなくてはならないんじゃないかな。


 試射が終わったところで、広間に集まり銃について皆が意見を出し始めた。

 やはり最終的にはクロスボウを銃に変えたいというのが大部分の意見になる。


「少なくともクロスボウの倍の射程だ。今作っている筒の長い銃なら発射時の衝撃もさほどないじゃろう。あれは筒が短いのと片手で撃つから衝撃が大きいんじゃ」

「数丁作ればドワーフ族に持たせられる。火薬の量が少ない小型の銃を作れば防衛隊にも配布できるだろうし、筒の長い銃を作れば北の玄関の防衛はかなり容易になるだろう。

それにだ、さらに大きな物も作れるはずだ。敵の攻城兵器を破壊できるだろう」


 俺の話にバドスの目が輝く。まったくドワーフ族の職人技は腕を振るう機会をいつも探してるってことじゃないのか?

 とはいえ、大砲は構想段階だ。小型のピストルタイプと火縄銃のような長尺バレルの2種類の銃を今は作れば良いだろう。

 火薬を入れる小さな革袋や、鉛玉を入れる袋だって装備品として作らねばならない。

 中々面倒な仕事が出てきそうだ。

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 畑に草が芽吹いてきた。農家の人達が有機肥料を耕した畑にすき込んでいる。一か月も過ぎれば、麦の種を撒くことになるんだろう。

 子供達も、ブドウ畑や、キャミーが買い込んできた果物の苗の近くに穴を掘って肥料を埋めている。

 今年は実らなくとも、来年には期待できそうだな。子供達のおやつに丁度良いかもしれない。

 畑の方も開墾がかなり進んでいる。昨年開墾した畑に今年は種を撒けそうだから、昨年よりも穀物の収量が増えることは間違いないだろう。

 まだまだ自活できそうにもないが、買い込む穀物が年々減れば十分だと思う。

 

 のんびりと広間でパイプを楽しんでいると、ミーシャが駆けこんできた。確か、近くの町まで買い物に出掛けたはずなんだが、何かあったのだろうか?


「大変よ。王国軍がこっちに向かってるみたい。王都を2個大隊で出発したらしいんだけど、あちこちの辺境領主を粛清しているらしいわ」

「まだ、南の町には来てないんだな?」

「ええ、その話をお店で聞いて直ぐに帰ってきたの」


 商人達の情報網は王国軍の諜報部門を上回るからな。となると騎馬隊ではなく徒歩の兵士を伴っているということになる。まだ王国軍が姿を現さないから町は普段通りということだろう。あの町を傘下に収めている領主の居城はどこなんだろうな?

 そっちは今頃はハチの巣を突いた騒ぎになっているはずだ。


「あまり慌てることも無いが、今来ている商人達には騒ぎが収まってから来るように伝えてくれ」

 俺の話を聞いて、直ぐにミーシャが館を飛び出していった。

 騒ぎが大好きな感じもするけど、直ぐに行動してくれるのはありがたいところだ。

 そうなると、今夜の話題はその話になりそうだ。

 少し、対策を考えなければなるまい。


 その夜の会合はいつもより人が多いが、改めて伝える必要が無いから、この場合は都合が良い。


「どうやら、やって来たようだ。たぶん、南の町を治める領主を最初に攻撃するだろう。その後が俺達になる。とはいえ、この島を東に2日も歩けば隣国の領地だ。大軍を率いてくるのは問題だろう。敵軍が2個中隊ほどであれば十分に勝ち目がある」


 焚き火の周りに集まった連中を前に少し離れた板を背にして話を進める。背後の板にはこの島の略図が描かれている。皆に配置を説明するには都合が良い。

 後ろの略図を杖で示しながら説明を続ける。


「少なくとも数日は平和だろう。内陸の倉庫と馬を島に移動することになる。これはハリウスが指揮してくれ。農夫を数人手配してほしい。運べるものは全て島に移動だ。時間があれば焚き木も集めてほしい。明日の干潮時間に十分注意してくれよ。

 次に、バドス達は北の玄関の強化を行ってくれ。門を破られないように、材木の準備も必要だ。石垣の上に作った小さな広場に簡単でも良いから屋根を作ってくれ。でないと敵の矢を防げないからな。

 ミーシャ達は、子供達を連れてこの位置だ。ここなら島に近づく船が見えるだろう。もしも船で来られたら背後を取られかねん。

 オリックは10人を連れて北の玄関、残った防衛隊を2つに分けて農夫と一緒に左右の崖を守ってくれ」


 以前に場所を一度話しているから、簡単におさらいをすれば十分だろう。

 問題は武器になるな。


「ワシ等は長銃を使う。一応クロスボウも用意するが、それで良いな?」

「それで良い。石垣の上も基本は銃を使う。銃を撃てない者はクロスボウを使ってくれ。とはいっても、白兵戦もありかねん。必ず用意しとくんだぞ」


 食事は農家のおばさん達が賄ってくれるそうだ。子供達は教会の神官が責任を持ってくれるらしい。

 これで、問題は無いだろうか?


「これを作って貰った。ミーシャに1つと、オリックに1つを預けておく。遠くが見える仕掛けだが、俺が1つ持つから残り2個が余る。役目を考えて必要であれば渡すぞ」

 

 簡単な望遠鏡は倍率が5倍ほどだ。相手の武器を早く知るには都合が良い。

 各自が必要性を力説しているけど、どちらかというと興味本位が優先しているようにも思える。最後はくじ引きということで収まってくれたが、早めに何個か作ることになりそうだ。


「問題はカートリッジだ。長銃用が300、短銃用が200だぞ。さらに作らねばなるまい」

 カートリッジは火薬と球をあらかじめ紙の筒に入れたものだ。魔石から出る炎は容易に紙の筒を焼き切って中の火薬を爆発させてくれる。


「作っても100個には届かないから、それを使い切ったら、袋から火薬と球を入れることになりそうだ。あまり急いで作ると碌な事にはならんだろう。それに左右の広場にはバリスタがある。これをバリスタのボルトに着ければ攻城兵器を持ち出されても何とかなるし、兵士どもを纏めて始末出来る」


 木筒に火薬を入れて導火線を繋ぎ、周囲を鎖帷子で覆った即席の榴弾だ。バリスタのボルトの先に取りつけたものを3本ずつ用意してある。それを小さくした手榴弾も何個か作ってあるから石垣の下に押し寄せてきても対処できるだろう。

 それに、干潮時に渡れる時間は限られているからな。もたもたしていると、押し寄せる波で溺れてしまう。


「カートリッジは使い切っても良い。次の戦までにたっぷりと作れるからな。だが今回の戦は、現状で凌いでもらいたい」


 翌日は朝早くから準備が始まる。

 俺達も北の玄関に向かって、邪魔にならない場所にテントを張っておく。

 場所が狭いのが難点だな。少しでも生活できるように大きくしておく必要がありそうだ。

 

 干潮時間までだいぶ時間があるのだが、対岸に馬や農夫達が集まっている。

 ようやく干潮が始まると、道がまだ出来ていないにも関わらず、こちらに向かって進んできた。

 ということは……。こちらにやってくる軍隊を確認したということだろう。

 先行した偵察部隊なのだろうか?

 農夫達がどうにか北の玄関の門を潜り終えた時に、対岸に数騎が見えてきた。

 こちらをジッと眺めているが近寄っては来ないようだ。

 しばらくの間、にらみ合いが続くことになりそうだな。


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