プラントイーター2
そこら辺に沸いた程度の魔物なら大して強くない。
そう思ってた時期がオレもありました。
「下がれ、ヴァン!」
「あいよ、頼んだ!」
相手は宙にふわふわと浮く、ゴーストタイプの魔物。
しかも結構強力な魔法を使用してきたのでクレイオスが前に出て防御魔法を使う。
クレイオスの見た目はどう見ても野良傭兵や野良騎士といった格好だが、ゲームで例えるなら聖騎士といった感じの戦い方をする。
性格は馬鹿だが戦いは堅実かつ強固で、誰よりも戦闘の前線に立つ。
味方の盾になりながら簡単な防御魔法や回復魔法で自分を強化して戦い、敵を後ろに通さない。ちなみに武器はオレと同じく大剣。
「うおら!」
クレイオスが魔物の魔法を防いでくれている間に回り込み、魔物に剣を叩きつける。
ゴーストタイプと言っても…現実に干渉できるほどの密度を持っている相手だからな。
自分達の脅威になってる分、相手にも物理ダメージは通る。
「まだくるぞ、クレイオス!」
「左の魔物は任せろ!」
ゴーストタイプの魔物を倒したと思ったら、次はゾンビタイプの魔物だ。
しかも肉体こそ腐っているが結構な筋肉質なのが3体も同時に。
…身体のあちこちに鎖があるあたり、今回沸いたモンスターは元奴隷のアンデットだろうか。
沸いたモンスターというのが死者を操るおそらくリッチーと呼ばれるタイプの魔物で…。
貴族が多いこの街はその分、趣味の悪いヤツも多く奴隷を雇っては苛め抜いて苦しめ抜いて殺された人も多いのだろう。
そして悔しさを持ったまま死んで怨念を持った死者を利用し、リッチーが操っているというあたりか。
…とはいえ、本来ならリッチーもそこらに沸くような魔物じゃないからきなくなってきたが。
『グゥォォォォ!』
「うぐっ!?」
ゾンビとはいえ、かなりの筋肉質な事もあり一撃が重い。
拳を大剣で防いだが、後ろに押しやられてしまう。
…ゾンビ相手に使った事はないから心配だが、やってみるしかないか。
「捕食しろ、プラントイーター!」
オレの仕様する剣は前にクレアが言っていた錬金術を合わせて作ったヘンテコ武器だ。
そしてこの大剣、『プラントイーター』は文字通り剣から植物が出る剣。
しかもかなり大きい食人植物が。
剣の内部に食人植物の苗を仕込んであり、魔力を流し込むと植物が一時的に活性化し口を開いた植物が剣から生える。
そして活性化はしたがいいが、オレはすぐに魔力を送るのを止めると元の苗に戻ってしまうのだが…この植物も生き物だ。
近くにいる生物に噛みついて捕食しエネルギーを蓄えようとする。
『グ、グルゥ!?』
「おらぁぁ!」
プラントイーターがゾンビを捕食するため噛みついたので、剣を振るってクレイオスの側にいるソンビに投げ飛ばす。
この植物は捕食するが…流石にすぐには口の出た状態を維持できるほどのエネルギーを捕食はできない。
正確には口を出した状態にするには栄養を消化する時間が必要なのだが、呼び出したオレが本体にエネルギーを送らないのですぐに栄養を得る前に苗に戻ってしまうのだ。
オレの送った魔力はすぐに活性化するが、植物の補食で得たエネルギーは活性化に繋がらない。
都合の良いこの辺のシステムは…まぁ話すと長いから割愛。
簡単に言えばオレが送る魔力と捕食のエネルギーは別物だから、と理解してほしい。
「ちなみに挙動が某荒ぶる神を喰らう人達の武器と似てますが、全くの別物ですのでご理解ください!」
「誰に言ってるんだ!」
ちなみに植物が捕食時に得たエネルギーは捕食後30秒後までくらいなら斬撃として飛ばす事もできる。
活性化とは別物だがこういう別の使い方もできる。
今みたいに魔物同士をぶつけて一ヶ所に集めた後はエネルギーを飛ばしてまとめて攻撃するのが一連の流れだ。
アンデットのエネルギーもちゃんと捕食できるか心配だったが問題ないな。あとはプラントが腐ったりしないかも。
ちゃんと斬撃を飛ばすまでできたし問題なし。
「ヴァン、また新手だ!」
「うぇぇぇー…」
また新手が来たと聞いて、モニカによく怒られるだらしのない声が出てしまった。
早く片づけられればギリギリでパーティーに参加できるかなと思ったが…これは難しそうだ。