プラントイーター1
「おー!いたいた!居てくれるとオレは信じていた!」
「ん?」
部屋に荷物を置いてパーティーの時間まで宿屋の喫茶店でのんびりしていると宿屋の入り口の方から声をかけられた。
青銅色の、そして傷も目立つ使い込んだ鎧を着こんでいる褐色肌で筋肉質な20代前半くらいの大柄の男だ。
…明らかに高貴な宿屋と雰囲気が合っていない。
というか例のフロントマンのオッサンに呼び止められしまい、なんとも間の抜けた状況だ。
「ちょ、不審者じゃないって!ヴァーン!モニカちゃーん!あとクレアー!オレだー!!!」
「…黙らせるのに一発殴ってくる」
オレは席を外し声の主に向かって飛びかかり踵落としを決める。
腕であっさりガードされるが…まぁ相手も殴られ慣れているからな。
ここにいても他のお客様にも迷惑なので一旦店の外にまで追いやる。
「殴るっていうか蹴ってるじゃん!」
「相変わらずうるせーなクレイオス」
そう。この騒がしい男がクレイオス。
説明もなしにクレアさんにオレを紹介して迷惑かけたり、普通に声がでかくうるさくて厄介なのがこのクレイオス。
なんでこんな所にコイツがいるんだよ。
「今回のパーティーの出席者の護衛に来てたんだけど、王都内は安全だからな。終わるまでヒマしてたんだけど急遽他の仕事も入っちまって、手伝ってほしいんだ!」
「…いや、オレ等もそのパーティーに参加しに来たんだが」
「流石に主役のクレアには頼まねぇよ。お前だけでも良いから手伝ってくれ!」
ちなみに依頼というのが街の地下道に沸いた魔物の退治らしい。
本来なら王都の騎士達が討伐に向かうのだろうが、パーティーには貴族たちも参加するためその警護で人員を割けられないのだとか。
…で、ヒマしていた傭兵のクレイオスに依頼が入った。
沸いた程度の魔物ならそう強いのもいないはずだが、流石に1人では何かあった時に対応できないので連れが欲しいと。
「…こういう時こそ、私のような騎士が動くべきなのに…!」
「あぁー…主役がいないと貴族も流石に機嫌損ねるかもしれないから間違っても魔物退治に行くなよ?」
本来なら魔物退治に付き合ってやる義理もないが…目の前に行きたくても行けず悔しがっている騎士様が1人。
こんな状況でパーティー参加してもオレまで居心地が悪くなってしまう。
とはいえモニカにもせっかくのパーティーを楽しんでほしいし…。
「…分かった、行くよ。クレアさん、モニカの事を頼んでもいいか?」
「構わないが…大丈夫なのか、店主殿?相手は魔物だぞ」
「はいお兄ちゃん装備持ってきたよ。クレイオスさん、お兄ちゃんが道に迷わないようにしっかり目を光らせてくださいね」
「…仕事はえーなモニカ。魔物の方は元傭兵とか冒険家やってた身だから大丈夫だろ多分」
いつの間にかい姿を消していたモニカはオレの武器を持って来ていた。
大剣と、その他小道具。
魔物退治自体は錬金術の材料採取に街の外に出る事もあり、ついでに退治する事もあるので腕は鈍ってないはずだ。
問題はやはり…オレの圧倒的方向音痴。
見知らぬ土地で方向音痴になったら行きも帰りも大変な事になる。
「あ!流石に手を握っていたらお兄ちゃんもふらふらっといなくならないですよ!その地下道まで手を握って歩くといいと思います!」
「なるほどその手が!」
「いやいや、男と手を繋いで歩く趣味はない…って、離せクレイオス!」
こうして、オレは恥ずかしい思いをしながら魔物のいる下水道へと向かう事になった。
…絶対に報酬はふんだくってやる!