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モニカのアトリエ~硝子の錬金術と妹と~  作者: 雅弌
1章 生贄の英雄石
6/51

ヴァン2


オレ達の暮らすアサセノスやクレアさんの故郷ガーマヴィンはクロノティアという国に属する街だ。

王都の名前もクロノティア。


他国と比べても穏やかな国なので戦争などはよっぽど少ない…のだが、その実態は貴族が権力を持ちすぎて勝手気ままにしているのが理由だったりする。


お兄ちゃんも勝手気ままだよね?うるさい、ちゃんと聞け。


ともかく戦争やら何やらのために税を使うより、日々の生活を豊かに過ごす事しか考えてないのがこの国のトップたちだ。

本人たちの前で言うなよ首が飛ぶから。


そんな国のトップたちが治める国だから…結構貧富の差は激しい物だったりする。

王都付近やアサセノス周辺は税金とかも緩いが、馬鹿な貴族が統治する街は酷い物らしい。


勿論、街が滅んでないという事はある意味で金の徴収が上手く、ギリギリの所で保ちそれが原因で街の中でも豊かな場所とスラム街が合わさったような街もある。


アサセノスは流通の街だから一応は街の長はいるが貴族はいない。

商人の偉い人がそのまま長になっている。

元々は何もない所で、旅人たちが休憩に使っていた平地を便利にしていくうちに出来上がった場所なので歴史としてはまだまだ浅い街だ。


ここに金にがめつい貴族が目を付け最悪な統治をされたら…絶対に大変だ。

まぁアサセノスの長はできた人らしいから、変な事に巻き込まれる前に上手く貴族たちと交渉してるらしいが。



「クレアさんの話しを聞いた時も思ったんだけど…世界って広いんだね。当たり前だけど」

「まぁモニカはオレと出会ってからアサセノスとせいぜい隣街くらいにしか行ってなかったもんなぁ」



今はもうすっかり元気だから忘れそうになるが、モニカは記憶喪失だ。

最初のうちは食器の使い方すらも曖昧で普通の生活を送るのも困難だったほど。


会話の方は記憶より身体で覚えているような事もあるので難しい言葉は知らないが問題なくできたし、握り飯やスープなど簡単に口に咥えられる物なら食事できたから生活にはよっぽど困らなかったが。



「お兄ちゃんも昔は冒険家とか傭兵やって世界中を見て回ったんだよね?」

「そんな大層なもんじゃねぇけどな。治安の良い街を中心に適当に魔物退治してただけだし昔から基本的にアサセノス周辺で生活してたよ」



馬車に乗りながらクロノティアの話しをしているとモニカは世界について興味を持ったのか窓から外を見ている。

馬車についた窓から見える範囲なんて限られているし、王都周辺という事もあって整った見栄えのない道が続いているが…今のモニカはもっと遠くを見ているのだろう。


…まるで冒険に憧れていた頃の自分を見ているようだな、と思うとモニカもいつか冒険家になるかもなぁと考えてしまう。



オレも自由に生きてきた人間だから、できるだけモニカにも自由に生きてほしい。

実際に旅立つ日なんか来たら寂しい…と思う一方で、変にオレに気を使って我慢しないか心配だ。



普段は口うるさく、どっちが保護者か分からないなんて事すら周囲に言われているくらいだが…。

モニカは記憶喪失の自分を拾ったオレに凄く感謝してくれている。

だらしないオレの世話をして真面目な性格になったのもオレに恩返ししなくては、という気持ちがあるからだと思う。


そうなると恩返しの事ばかり考えて自分のやりたい事を我慢しないだろうか。

モニカは真面目で良い子だからお兄ちゃんとしてはそれがとにかく心配。



「わぁ…!お、お兄ちゃん!もしかしてアレが王都!?」

「時間的にそうじゃないか?多分だけど。オレ王都に行ったことねーし」

「だったら見て見て!凄いよ!」



無邪気にはしゃぐモニカに連れられてオレも馬車の外を覗く。


そこから見えた景色にあったのは…大きな城壁に包まれた街。

そして街の周囲には大きな堀があって、まるで海や湖の上に建てられた街のように見える。


とはいえ近くに海なんてないし、おそらくこの堀は人の手によってできた物。

流石に河かどこかから水を引いてはいるのだろうが、これほどの街を作るのにどれだけの苦労や費用がかかったのやら。


流石は王都、と言わざるを得ない。



「スゲーなぁ」

「スゲーねぇ」



兄妹揃って同じ感想しか出てこない。

流石にこんな大きな街を見せられたらオレも昔の冒険心を駆り立てられる。


モニカがいるから魔物とかが出るような危険な冒険に出る事はできないが、今度また観光地へ2人で旅行に行くのもいいかもしれない。


今日やっているのも旅行みたいなもんだけど。


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