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モニカのアトリエ~硝子の錬金術と妹と~  作者: 雅弌
1章 生贄の英雄石
2/51

硝子の錬金術師1


この世界では魔物がいる事も相まって、魔物や戦争に巻き込まれた孤児は多い。

オレもいろいろ理由があって家族も親戚もなく、1人ですっと暮らしている。


修道院とかでは孤児を引き取って面倒を見ていたりもするから、モニカを押し付ける事もできたが…自分もずっと1人だったからだろうか。

寂しかったからか、彼女を引き取る事を視野に入れてしまった。


とはいえいきなり見ず知らずの男と暮らすのも困惑するだろうから彼女の意思はちゃんと確認した。

修道院に行きたければ行っても良いが行かなくても良い。好きにしてくれとモニカには言ってある。

ただ、修道院だろうとオレの元であろうと貧乏な暮らしには変わりないだろう。


孤児は多く、収入も少ない孤児院。

そして単純に収入の少ないだけの雑貨屋。

モニカは後者を選んだ。つまりオレと一緒に暮らす事を。



突然小さい子供を引き連れて帰ってきたオレを近所はロリコン扱いしてきたが……。

まぁ基本的にオレの周囲は良い人ばかりだ。


着なくなった子供の服を譲ってくれたりして、周囲の人も良くしてくれるからかモニカも自然と元気になり笑顔を見せるようになった。


……今ではちょーっと元気が過ぎるくらいだけど。



「お兄ちゃん!店番サボってないでちゃんと働いてよ!」

「うぇぇぇー…」

「変な声出してないで店に戻る!」



店から少し離れた場所にある広場に設置されたベンチでぼーっとしているとモニカが突然現れ、店に引きずり戻される。

初めて会った時の大人しさは何処へやら。今や見事に元気の塊で、服装も派手さはないが可愛らしい。


出会ってからもう少しで1年。

痛みきった金髪は一度綺麗に切られ、今ではセミロングくらいにまでは伸びている。

すんごく、サラサラで光を反射しているかのよう。

妹分じゃなければ惚れていたかもな。



「どーせ今日も客なんて少ないし、店番くらいモニカだけでもなんとかなるだろ?」

「その少ないお客様も店主がいなかったら戸惑うでしょ!」



いやもうホントに元気。

お兄ちゃんことオレがのんびりとしている性格しているから、自分がしっかりしないとでも思ったのか…随分しっかり物な性格になっている。

元からなのかもしれないが…それは確認しようがない。


ともかくオレとは違って真面目な性格だから店の掃除や料理洗濯。ほとんど任せっきり。

近所の人達にはオレがモニカに養ってもらっているんじゃないかと言われる始末だ。



「それに今日はちゃんとお兄ちゃんにお客様だよ!」

「うぇぇぇー…」

「変な声出さないの!」

「だってオレ宛ての客ってロクなのじゃねぇだろ…」



昔の冒険者仲間の友人に錬金術師がいてカッコイイなと思って錬金術を習ったのがきっかけで早数年。

錬金術は使い方によっては大金をつかめる可能性があるので技術に関して門外不出なところがあって勉強するのも大変だが、その錬金術師はオレが友人の友人という事で使わなくなった入門書を譲ってくれた。


まぁ流石に友人の友人なんてただの赤の他人だし、錬金術の極意なんて教えてくれるはずもなく。

入門書を譲ってくれるだけでもラッキーといった感じだった。


とはいえ入門書でも簡単な魔法薬の傷薬を作る事くらいはできた。

そして錬金術師が店を開いていると噂になって、店を開くくらいだからよっぽど凄いのだろうと期待してやってきた客が残念な顔をして帰っていく。


…まぁ品揃えのバリエーションを増やすために錬金術を覚えただけのようなもんだしな。


そしてそんな残念錬金術師のオレに残念な二つ名がついて『硝子の錬金術師』なんと呼ばれてしまうようになった。

某漫画の鋼のなんとかとは全然比べようもないほど残念だ。


硝子のように脆い、割れやすい道具しか作れないという意味らしい。硝子の錬金術師というのは。


…流石に怒ってもいいよな?と思わずにいられないが噂やら何やらが付けた二つ名にどう怒ればいいのやら。

確かに大した物は作れないが、質はしっかりとした物を作っているつもりだから脆いとか割れやすいと勘違いされるのは心外だ。


というか風評被害で売れる物も売れなくなる…。



「とにかくお客様を待たせてるんだから早く来る!」



モニカに腕を引っ張られて店に戻る事になった。

これ以上反抗してもモニカに勝てるとは思わないし。


最初オレの元に来た時は記憶もなくて、生活にも困って、近所の人にも人見知りしていたというのに…ホントに1年でよくこんな元気になったもんだ。


そして真面目で口うるさく。

記憶喪失だから明確ではないが、歳は11か12くらい。


なのにいつの間にかしっかり者になってお兄ちゃん家では権力なさすぎるよ。



「ほら、ぼーっとしないの!中ではお客様が待ってるんだからピシッとする!」



いつの間にか我が家兼、工房兼、雑貨屋についていたようで、店用の扉の前で服装をモニカに整えられる。

私、お母さんじゃないんだけど…と言われつつもよれた服を直してもらう。


そういえば雑貨屋というか…オレも残念錬金術師としてだが名も売れてきたようだからそろそろアトリエとして改名した方がいいかなぁ。

錬金術師は自分の工房をアトリエと称するのが定番のようだし。

残念でも何でも名が売れているのは良い事だし、もうちょい錬金術を売りにしてもいいかもしれない。


オレとモニカの二人で経営しているワケだし──『モニカのアトリエ』なんていう店名はどうだろう。

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