表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
師匠と弟子の旅路録  作者: 蒼理アオ
肆.かつて
65/101

弐拾

 *


 青い空の下、村へと続く道を歩きながら、リオトが口を開く。


「ねぇ師匠」

「なんだ?」

「あの日、師匠がオレにくれた《リオト》って名前…。どういう意味か、教えてください」


 昔は、いつのたれ死ぬかわからないような自分に名など必要ないと思っていた。それでもとうとう手に入れた名前と、彼という仲間ができたことにばかり喜んで、その意味を聞き忘れていた。

 昨夜の夜襲のなかで気絶した際に夢に見て、まだ意味を教えてもらっていなかったことを思い出したのだ。

 彼も忘れていたらしく、顎に手を添えて空を仰ぎながら、そういえば話していなかったかと呟いた。

 名前。あのとき彼からもらった大切な名前。その意味がカイナの口から説かれるまでの間、リオトは期待に胸を踊らせ、瞳を輝かせていた。

 速度を緩め、ゆっくりと歩きながらやがてカイナが言葉を紡ぐ。


「原義は《導くもの》という意味の、昔から旅人のお守りとされている稀少な鉱石の名前をもじったものだ」

「なんて言う名前ですか?!」


 聞かずともすぐに答えを知ることが出来るだろうに、興奮しているリオトはわざわざ先を促す。


「《リヨンダイト》。澄んだ水底のようなとても綺麗な蒼色をしているんだが、」


 言葉を切り、同時に足を止めてリオトに顔を向ける。

 その隣でリオトも足を止め、彼の言葉を待った。


「なによりもまず、お前の瞳の色がそれに似ていた。だからその名を送ったんだ」

「リヨン、ダイト…。それをもじって、リオト…」


 ゆっくり、何度も何度も心のなかで繰り返し、それを大事に握りしめるように胸の上で両手を重ねる。


「気に入ってもらえたか?」


 今まで、泥だらけになりながら、這いつくばって生きていた自分の瞳を綺麗だと褒めてくれた人間なんていなかった。気に入らないわけがない。

 嬉しさと興奮に頬を赤く染めて、とびきりの笑顔で、リオトは頷いた。


「はい!」


 その名を送った理由。

 それに嘘や偽りはない。

 しかし、全てを話したわけではないことを、目の前で無邪気に笑うこの子はきっとわかっていないのだろう。

 その名とリオト自身に、カイナがなにを委ねたのかを。

 そしてカイナが抱いていた迷いと、今も抱き続けている恐怖を。


「行こうか。今頃ディーヴが程よくエンジンを温めてくれているはずだ」

「冷却水ごとオーバーヒートしてなきゃいいんですけどね…」


 きっと宿の部屋の扉を開けるなり、相手が無機質な機械とは思えないほどの人間臭い怒声が飛んでくることだろう。

 苦笑の色を浮かべて、二人は村へと続く道を下って行った。




肆.かつて end


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よければポチッとお願いします cont_access.php?citi_cont_id=272298587&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ