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壱
リオトはふと背後を振り返った。
なにかの気配を察知したからだ。
日もすっかり暮れ、辺りは闇に支配されているため、茂みの向こうや木々の奥は何も見えないが、少し離れた野営地の焚き火の灯りがまだ届く距離だった。リオトは確かにその耳に聞いたのだ。茂みが揺れる音を。
拾い集めた大きさも太さも疎らな木の枝を足元に置くと、目を凝らしながら仕込みナイフを服の袖から出し、ゆっくりと近寄る。
二メートルほどの間合いを開け、ジッと茂みを見据え、師からの教えを思い出しつつ、ナイフを構える。
そのとき、茂みから光が漏れた。明るい、青白い光。しかしリオトにはその光が詠術により発生するものとは違うものに見えた。
───あの光は、確か…?
刹那、茂みの中からなにかがリオトに向かって真っすぐに、素早く手を伸ばす。
「っ!!?」




