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異世界に魔法なんてありません  作者: 土口 和
第1章 初めての異世界
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第6話 ぶらり街歩き3

 トーラスが店の奥に入って行った後、晴矢はアリシアに声をかけた。

「アリシアさんはここによく来るんですか?」

「ん?ああそういうことか。残念だがハズレだ、私は戦いに向いてないからな。ハルヤの言いたいことは大体わかる。トーラスとの関係だろう?」そう言ってアリシアは悪戯っぽく笑った。

「あいつはいわゆる幼馴染みというやつだ。腐れ縁とも言うがな。私の実家とあいつの実家が近かったんだよ」

 どうやらこの二人は仲が良いだけのようだ。


 そんな他愛のないことを話していると、奥からトーラスが出てきた。

「お待たせ、これでいいかい?」

 そう言ってトーラスが晴矢に差し出したものは先ほどタブレットで見たデザインのまま、グリップの部分に『haruya』と彫られている二丁の拳銃だった。

「名前はサービスだ。値段は占めて一万イルだな」

「これで頼む」

 そう言って差し出したのはアリシアのギルドカードであった。

「はいよ、ギルドカードね。一括でいいかい?」

「ああ、それでいいぞ」

 後で晴矢がアリシアから聞いた話では、ギルドカードの中にお金を貯めこむことができるらしく、ほとんどの冒険者はお金を持ち歩かずにそのようにしてお金を持ち歩いているらしい。

「店の裏に訓練場があるからそこで試し撃ちをしていくといい。何かあれば言ってくれ、可能な限り修正してやるからな」

 そう言ってトーラスはまた別の客のところに歩いて行った。

「それで、行くか?」

 恐らく訓練場のことを指しているのであろう。銃など握ったことのない晴矢は頷いた。

「よし、こっちだ」

 そう言ってアリシアは晴矢を見せの奥へと連れて行った。


 〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


「……そうそう、主な使い方はそれぐらいだ。よし、撃ってみろ」

 その後店の奥に連れてこられた晴矢はアリシアに武器の使い方を教わっていた。


 このハンドガンは、というよりもこの世界の銃の大半がそうだが、実弾ではなくエネルギー弾を発射するようになっているらしい。よくSFなどで出てくる、引き金を引いたらビームが出てくるようなものではないが、それに近いものではあった。というのもあ一度に長時間発射し続けるほどのエネルギーがないらしいそうだ。拳銃のマガジン(弾倉)に相当する部分にエネルギーカセットと呼ばれる電池のようなものを入れてそこからエネルギーを使用する為である。そして拳銃との最大の違いは発射するエネルギーを変えられるということだろう。例えば足止め用に使ったり、あるいは壁を壊すのに使ったり、その用途によって実際に発射するエネルギーの量を決めることができるのである。


 狙う的は五メートルほど離れたところにあり、ペットボトルほどの大きさであった。

 晴矢は早速先ほど教わった構えーー腕を真っ直ぐに伸ばして構える撃ち方でハンドガンを的に向けた。ちなみに、この構え方は反動がほとんど出ないこのタイプであるからできるものであって、実弾を発射するタイプの銃であればよほど訓練した人でなければ、反動で腕が大変なことになる。


 何はともあれ、彼が発射した一発目は的とは明後日の方向に、二発目は多少近くはなったがといった程度、そして三発目、四発目と続けていくにつれて次第にその精度は上がっていき、二四発目には初めて的に命中したのである。結局、的をきちんと狙えるようになったのは六八発目であった。

「よし、よくやった」

 練習中も何度かアドバイスを晴矢に与えていたアリシアは続けてこう言った。

「次は左手だな」


 その後、晴矢は二時間ほど訓練場で練習させられたという。


 〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


 練習が終わり、トーラスに一声かけて店を出た二人はまたアリシアを先頭に歩き出した。

「次は……あそこに行こうか」

 アリシアは呟くように言ったが、それを聞いた晴矢は、あそこと言われてもどこのことか分からないうえに、先程の練習で腕がクタクタであるので聞く気にもなれず、アリシアについて行った。晴矢自身まさかアリシアがあんなに積極的に指導してくれるとは思いもしなかったのだ。そのおかげで人並みには使えるようにはなったのだが。


 そうして歩くこと約五分、着いたのはコンビニのような店だった。


「ここは?」

「ここに来れば大概の物は揃う、そんな店だ」

 そう言って二人は店の中に入っていった。


「いらっしゃいませー」

 店員の声が店の中に響いた。このような店で店員の声が聞こえるのは、どの世界でも同じらしい。

「とりあえず必要な物だけ買うぞ」

 そう言ってアリシアは店の中を迷うことなく進んで行った。


「まずは、この鞄だな。ハルヤ、好きなのを選べ」

 そう言ってやって来たのはハンドバッグや登山用と思われる大きな鞄など大小様々な鞄が並んでいる場所であった。

 晴矢はその中のひとつ、青いウエストバッグを手にとった。

「ん?それでいいのか?」

「あの、これは一体?」

 アリシアの質問に対し、晴矢も質問で返した。

「ああ、これはなんでも入る鞄だ。まあ、あまり大きな物は入らないがな。その大きさなら人一人分ぐらいなら入るだろうな。仕組みは忘れたが、確か空間を歪ませてそこに入れているんだったかな。基本的には大きい方がたくさん入るが、まあそれぐらいあれば大丈夫だろうな」

 そう言われたのでバッグのタグを見ると『空間鞄ーーポーチタイプ』と書かれていた。

 どのような仕組みなのか気になって中に手を入れようとすると、

「それで、それにするのか?」

 アリシアに声をかけられ、晴矢は意識を現実に戻された。

「えっ?ああ、これでいいです」

「そうか、なら次に行くぞ」

 そう言うと、アリシアはハンドバッグーー先程の鞄と同じ仕組みなのだろう、その中に鞄を入れた。


「次はこいつだな」

 アリシアは目の前で山積みされている箱をいくつか取ってハンドバッグのなかに入れた。

「これは、持っているだけで効果を発揮して、攻撃を防ぐ壁のようなものを作るんだ。ダンジョンだけじゃなくて街中でも役立つことがあるからな。いくつか持っておくといい」

 その仕組みを聞こうとしたが、その前にアリシアがさっさと行ってしまったので仕方なく考えるのを止め、アリシアの後を追った晴矢であった。

街歩きはあと2話か3話で終わります。

その後は、いよいよダンジョンに挑戦するかも。

次話は1月24日19時に投稿します。


お読み頂きありがとうございます

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