第4話 ぶらり街歩き1
予想よりずっと長くなってしまいました
ギルドで別れた後、晴矢はアリシアに付いて最初に召喚された場所ーーアリシアの研究所に戻ってきた。
研究所に着いて一息つくと晴矢が切り出した。
「それで、話ってなんなんだ?」
「それはハルヤ、君のことだ。ハルヤお前は何者だ?」
「何者でもないよ。この世界ではただの迷子人さ」
「ふむ、だったら元の世界……えっと、ニホンだったか? ではどうだったんだ?」
「どうもこうも、向こうではただの学生だったよ」
「だったらどうやってここに来た?」
「それが分かれば苦労はしないな、これはあくまで仮説だが、お互いの世界が相互干渉しあったんじゃないかと思っているんだけどね」
「ほう、聞かせてくれ」
「アリシアさんは僕がここに来る前に世界を繋ぐ研究をしてたんだよね。実はぼくも同じようなことをしていたんだ。」
「つまりお互いに同じタイミングで世界を繋いだからハルヤがこっちに来た、と?」
「そういうことだと考えるのが自然なんじゃないか?」
「「ふむ、確かに筋は通っている。だがどうやってそれを証明する?」
「無理だね。だから仮説なんだよ」
そう言って二人はどちらからともなく溜息をついた。
「なら次だ、あの緑色の測定結果に何が心当たりはあるか?」
「全くないよ。確かあれは赤と青で表現するようになっているんだよね?」
「ああ、そうだ。あれはもともと私の祖父が作ったものでな、ダンジョンに入る人を制限するために作ったと祖父から聞いたんだよ、あれは光で表しているってな。ここまで聞いて何か気づかないか、ハルヤ?」
「まさか光の三原色……そうか、そういうことか。だからあんなに緑色に反応したのか……」
「そう、光の三原色の赤、青、緑。その内の二つの色を用いて残りの一つの色を出すことはできない。だからあの色は元から何かを測定するためにあったんだろうね」
「ところであの機械はなにを計っているんだから?」
「あれは、確か……そうだ身体能力と集中力で測っていたはずた」
「身体能力が高ければ剣に、集中力が高ければ銃に、かな?」
「ああ、それで合っている。だが、緑は何を示している?今まで一度も出なかっただぞ」
「そうだね、世界中どこを探しても持ってなくて、僕だけが持っているもの……ダメだ、分からん」
「こればっかりはいくら考えても仕方ないさ。ガルシアがなんか持ってくるだろうね」
アリシアはそう言って苦笑した。
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その後、晴矢とアリシアの腹の虫が仲良く鳴いたので、アリシアの提案で二人は街の食堂に行くことにした。
店は大通りに面して建っており、よく見ると店内は非常に賑わっている様子だった。
店の看板には大きな文字で『バレンツ食堂』と書かれていた。
「ハルヤ、ここが私のよく行く店だ。ここの飯は美味いぞ」
そう言いながらそそくさと店の中に入っていったアリシアの後を追うように、晴矢も店の中に入っていった。
「いらっしゃいませ、2名様ですか?」
入るなり、日本のファミリーレストランのような対応を受け若干驚いた晴矢であったが、今更このようなことにいちいち驚いていられないと気持ちを切り替えた。
二人が案内された席は所謂テーブル席というようなものでテーブルに向かい合って座るようになっていた。
二人が座ると、案内してきたウェイトレスが
「メニューが決まりましたらこちらのボタンを押してください。」と、言った。
この店はやはり日本のファミリーレストランと変わりないようだ。
晴矢はどの料理を頼むべきか分からなかったのでアリシアに全て任せ、注文した料理が届くまでの間に二人は話し出した。
「この店は、チェーン店なのか?」
これは晴矢の疑問である。
「チェーン店?なんだいそれは?」
「えっと、店の外観とか内装をある程度統一して、メニューとかもだいたい同じものを出す店の事なんだけど……」
それを聞いたアリシアは、
「なるほどな、大企業の地方支社みたいなものか」
「ニュアンスはあってると思うけど……」
根本的に何かが違うとは言えない晴矢であった。
「この店に限らずこの辺り一帯の店は基本的に個人経営になっているはずだ、確か政府がこの辺りを開発するときに補助金を出して店を作らせたんだったかな。最もその分、店の入れ替わりも激しいがな。この店はこの辺りが出来た時からある店らしいから安心しろ」
どうやらこの辺りは商店街のような感じで、店が潰れるとそこに新しい店が入るためシャッターにならないそうだ。
厳密には、この近くに住宅街があるためいつでもここが賑わっいるのだが、そんなことは知りもしない晴矢は、人気のある店だけが残り続けているのかと考えていた。
すると、会話が途切れたのを見計らってか否か、ウェイトレスが食事を運んできた。
「おまちどうさまでした、フェッツエとフルプのセットです」
その料理は日本で言うところのピザとスープであった。ピザのようなものには具が乗っておらず、スープはコーンスープのような見た目だった。晴矢は、そういえば入口の看板の横にフェッツエレストランと書かれていたのを覚えていたので、この場合フェッツエがピザ、フルプがコーンスープのことだろうと目星をつけていた。
「アリシアさん、このフェッツエ? の上に乗っているものはなんですか?」
「ん? ツエルのことか? もしかして、マノウアレルギーだったか?」
「い、いえ。そういう訳ではないんですが……」
「そうか、なら食べろ。ここのフェッツエは美味いぞ」
どうやらチーズのことをツエル、牛乳のことをマノウと呼ぶのだろう。
晴矢は、少し迷った末に、フェッツエの方から手を出した。
フェッツエは具なしのピザそのものだった。食べると口に広がるのはチーズの味であり、これぐらいなら家でもできるのではないかと思ってしまった。しかし、チーズの味自体は悪くなく、寧ろ日本では中々食べられないような部類の味であったのだが、そのあたりに詳しくないハルヤはそんなこととは露知らず、フェッツエを完食するのであった。
またフルプは日本のコーンスープと同じ、それも自販機でも飲めそうなものであったということも晴矢には衝撃だった。晴矢には両極端な店であるとの感想をこの店に抱いた。
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食事の後アリシアは店の前で晴矢にこの後どうするかを尋ねた。
「ハルヤ、この後どうしたい?」
「そうですね、この辺りをもう少し見てみたいのですが、いいですか?」
「ふむ、街の散策か。それも悪くない。よし、案内してやろう」
そう言ってアリシアは、晴矢を連れて街を歩き出した。
タイトル詐欺です。街歩きなんてしませんでした。次回からはきちんと街歩きします。
今回は食事回ですが、私の食べ物の描写が下手で申し訳ありません。
本文にもある通り、フェッツエがピザですがこのフェッツエという単語は日本のピザに相当するため、マルゲリータなどが出てきた場合にはまた名前が変わります。
ちなみにアリシアはフェッツエ好き
お読み頂きありがとうございました