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異世界での異常な日常

 娼館での生活と言っても、つらいことはない。

 むしろ優遇されている。どこのニートか。

 自分でなんとか起き上がれるようになってからは、トイレには自分で行くようになったし、食事も自分でとれるようになった。

 しかし、それ以外は、至れり尽くせり。

 夜遅くまで、お客さんの相手をする。

 朝はその分遅くまで寝てる。食事は奴隷さんがやってくれる。自分の部屋の掃除は自分でやる。いろいろ残骸が残っていて、やってもらうのがつらい。こぼれ出た分身達のなれの果てをかたずける。

 昼まで軽い運動、そして昼寝。体の手入れ。夜の準備。

 しかし、なぜ夜なんだろう。元の世界でも同じだな。男と女が入れ替わっても、そこは同じなのか?昼は働く人が多いのは同じだからかな?

 基本は疲れを残さず、次の相手をしないといけないからな。


 しかし、こんな生活はいい方らしい。同じ娼館仲間の同僚に聞いた。


「ピンからキリまでいろいろあるからね。」


 同じ娼館内でもランクがあるらしい。

 ここは設備が整っているので、客層もいろいろだ。

 ただ楽しむために来てる人から子供が欲しい女性まで。

 子供が欲しい場合は、実績重視で相手を選ぶ。

 まず、男の子供を産ませた実績のある者。女の子供しか生ませたことのない者。もちろん見目がよく、優秀な男性は高い。

 そして、子供を産ませることができない者は、遊び相手が多い。

 俺の場合は、実績がない分安くなる。しかし、経験がないため実際は未知数。そんな需要もある。はじめてな分、高くなりそうな気もするが、そこは男女の差だろう。目的が子孫繁栄だしな。病気の可能性も少ないので、その分、好んで買う女性も多い。

 遊び相手は、病気のリスクが高い。病気になって去っていく男性は何人かいるらしい。

 この娼館は、しっかりしているため、そのあたりのチェックはしっかりやっている。普通なら1週間、高いお金を払う客には1か月前には、双方検査を実施する。家族単位で買うことが多いから、

 それでも見つからずにトラブルになることもある。病気って怖い。

 でも、一番のトラブルは、何回通っても子供ができないことだ。回数じゃないしな。元の世界でも、不妊症で悩む夫婦が多かった。


 こっちじゃ肉ばっかり食べているから、男が多いと思った。肉食だと、体がアルカリ性になって、男の子が生まれる確率が高い、ような話を聞いたことがあったけど、どうだったかな?

 そう、こっちの食事は野菜がない。朝から晩まで肉、肉、肉。

 元居た世界の小説だと、普通にパンとか出てくるし、米を求めて世界中を旅する、なんて話も多いのに、肉。どうにかしてほしい。


「野菜ってなに?」


 同僚の言葉に唖然としちゃいました。

 小さい頃、野菜を食べなさい、と言われなかったのか?

 こちらの世界では、野菜は貴族や王族の食べ物らしい。


「うち、農家だったから食べたことあるよ。畑が魔物に襲われて、使えなくなってね。家族が生きていくために売られちゃった。」


 珍しいことらしい。魔物に襲われることではなく、農家の男の子が売られるのは。畑が襲われた時は、大規模な襲撃だったために、破産する家も多かったらしい。おかげで彼の家は今も農家をやっている。


 この世界、魔物が多い。

 農家をやるには広い土地が必要で、街のみんなに野菜や穀物を行き渡らせるためには、見渡す限りの農地が必要になる。酪農も同様だ。

 夜も昼も関係なく徘徊する魔物。それを排除するためには、当然、戦いとなる。踏み荒らされる作物。一度あらわれると、相当な範囲が踏み荒らされ、当然収穫はできなくなる。家畜は真っ先に食われる。

 なぜか魔物は獣を襲わない。魔物が畑に陣取り、その周りで悠々と作物を食べる獣達。

 やるせない。

 人々は城壁の中だけで作物を育てるようになった。

 それが今の農業事情。

 おいしい野菜を作る農家は、それだけで貴族や王族に囲われて暮らせる。

 しかし、そんな生活を続けるうちに、本分を忘れ、驕る農家も現れるらしい。


「まあ、自業自得だね。畑仕事は奴隷任せの生活だったしね」


 そんな彼もきれいな手をしてる。農家のせがれとは見えない。


 隠れて作物を育てる人々はいる。うまく栽培できたら、高額で取引される。

 山々に自生している、野菜や果物を採取して生活をする人々もいる。

 この街の人口は知っている人はいなかった。聞いた感じだと、地方都市よりずっと少ない。1万人は超えるけど、10万人はいない。あいまい過ぎ?


 半分以上は食に関する仕事をやっているらしい。

 とは言っても、農家じゃない。魔物や獣を狩って肉を得ている。

 狩りをする者。それを運ぶ者とその者達を守る者。肉を捌く者。料理する者。そんな人たちが、この街の大半を占める。

 城壁を修理したり、武器や鎧を作る人達も多い。

 1万人を超える人たちが肉を求めてさまようイメージ。怖い。


 それより、魔物や獣ってどんだけ湧くんだ?街の殆どの人が肉しか食べないんだろ?どんだけ食べるんだろう?どれだけ狩っているんだ?

 どれだけ狩っても、狩りつくされることはなく、逆に人は減っているらしい。


「何十年か前に、近くの都市が壊滅したんだって。」


 すごく気軽な感じで言われた。

 そういえば、畑が魔物に襲われた話も聞いたな。ここも危ないのか?

 世界を旅してまわる予定だったのに、それどころじゃないのか…。


「産めよ増やせよ政策。だからここも優遇されている。女王様の方針なんだ。」


 子供を作る能力がある男をみんなで共有しよう。

 そんな事できるわけがない。


「彼かっこいいね。貸して。」


「うん、いいよ。」


 そんな感じで貸し借りはできない。病気も怖いしな。

 妥協案が今の娼館施設。

 国が直接運営はできないけど、優遇され、その分しっかり管理されている。だれかが得をしているらしいけど。どっかの貴族らしいけど。

 今はどの貴族も娼館を経営している。


 ところ変われば、っていう感じです。


 それより、この世界、大丈夫なのか?

 俺が死ぬまで持つのだろうか?

 街ごと壊滅しないか?

 自分ひとり、いくら強くなっても、世界で一人しかいないのはつらい。いくらコミュニケーション能力が低くて、ひとりぼっちが好きだと言っても、それはやりすぎ。たまには人恋しい夜もある。

 毎日、一人じゃないけど。通り一遍の関係はあまりストレスにならないから大丈夫だから。

 魔物は増える。

 子供はできない。イコール、人口は増えない。んで、働き手も減るし、防衛手段もなくなっていく。

 人口を増やす資源の男は減る一方。

 正直、摘んでますね。


「産めよ増やせよ…っていう割には、子供見ないな。」


「ここは、さすがに、子供は来ないよ。」


 ごもっともです。


 女王様もいろんな政策を出すが、これといった成果は感じられないみたい。

 産めよ増やせよ政策だって効果が出るのは10年先だろう。

 それにこれまでの風習や、それで一儲け、なんて考える輩がでるのもうまくいかない原因だろう。

 こうなった原因は、きっと、何十年も前にあったと思う。それに対応する手段もあった筈だ。もっと穏やかな手段が絶対にあったに違いない。

 なんで、そんな対策を、俺が来る前に打っておかなかったのか?不甲斐ない。

 なんてね。


 俺一人じゃどうこうできる問題じゃないし、すぐに滅びるわけじゃないし、しばらく静観でいいかな。いいよね?


 この世界の話を聞いたときは、俺がなんとかしないと!という気持ちになった。2日目で萎えた。だって、俺の子供が増えても、子供同士で夫婦になれないし、さらに孫…なんて考えたら、余計ダメ。

 一応、真面目に考えたけど、手段が思いつかない。結局、女王様と同じ政策になっちゃいました。それを先に聞いたからじゃない、と思う。


 改善できるとしたら食事じゃないだろうか?

 うなぎとかマグロとか、乱獲で絶滅の危機とか言われてるんだぜ?こっちの世界でも、魔物が超絶うまい!っていう料理ができたら、絶滅する程乱獲されて、狩りつくされると思う。

 畑の作物だって、すんげーおいしい野菜が採れたら、王族も貴族もこぞって生産しようとして力を貸すに決まっている。民衆も協力して立ち上がるに違いない。

 んなわけないか。

 でも、肉ばっかりの生活はないな。どうにかしたい。


「野菜が食べたい。」


 奴隷さんに言ってみました。


「野菜は高いからな、無理だ。自分で採ってくるしかない。」


「えっ?採りに行っていいの?」


 いいらしい。

 娼館にいるが外出禁止ではない。そういえば禁止と言われたことはない。ただ、そう思い込んでいただけ。

 同僚に聞くと普通に外出してる、とのこと。さすがに街の外に行く男子はいないけど。

 それに、出かけるときは護衛付きとなる。家に連れて帰る独身女性姉妹がいるから。こわいね。

 他にも決まりはあるが、それを守れば街の外にも行けるということが分かった。

 しかし!普通に歩けるようにならないとね。少なくとも、襲われても逃げられるくらいにならないと。

 それと、こっちの世界の野菜の知識も欲しいな。


 楽しみが増えました。


 それにしても、今の異世界ライフは異常だ。普通、ギルドに入って、街の近くの魔物を狩って、レベルアップ、ていうのが定石じゃないのか?こんな生活続けていたら、ダメ人間になっちゃうぞ。

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