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ガルーダとのお話し

 突然、頭の中に響く声。

「誰?」

 周りを見渡しても、特になにもない。

「上を見上げてごらん。」

 言われるがままに見上げる。

 暗闇に慣れると、鳥の羽のようなもので覆われた何かが見えます。それよりも、横を見たほうがわかります。周り一面、鳥の羽に覆われた天井で覆いつくされている。

「鳥?」

「そうだ、ガルーダとニンゲンからは呼ばれている。」

 正式?な名称は、他にあるらしい。なんとなく伝わってきたが、言葉にすることはできない。

「このようにニンゲンと話すのは久しい。何故か、みな黙ってしまうからな。」

 周りを見渡すと、確かに動くものは見えない。あれほど寄ってきた魔物も来ない。それより、彼女たちが少しも動かない。気絶しているようだ。

「体から魔力?が抜け出ているようだけど。抜け出るというより、通り抜けているような…?」

「食事ちゅうだからな。」


 ガルーダの食事。

 ある範囲の魔力を食事代わりに吸い込むらしい。クジラがプランクトンで腹を満たすようなものか?

 小さい頃、普通の魔物や獣達と同じように肉や木々を食べていたらしい。小さいころというのがどのくらいの大きさなのか気になったが、よくわからなかった。

 大きくなってくると、口から食べるだけでは体を維持することができなくなり。代わりに魔力を直接取り込むようになっていったということだ。

「この辺りは、特に良質な魔力に恵まれていてな。」

 なので、頻繁に訪れていたらしい。

「うまい魔力じゃが、足りなくてな。しばらくこんようにしてたのじゃが、どうしても味わいたくて久しぶりに来てみたのじゃ。」

 どのくらいの割合で来てたのだろう。この森が魔力が乏しいのはこの鳥のせいだろうな。とすれば、人が何日もかかって移動する距離の魔力を吸い尽くしたことになる。

「食べ過ぎないようにしたほうがいいんじゃない?」

 思わず言ってしまった。

「ははは、そうかの?ニンゲンがいうには何十年に一度くらいだからな、いいではないか。」

「何十年って、どれだけ生きてるの?」

 相手がこんななのに、なぜか気安く話すことができる。じいちゃんと話し方が同じだからかな?不思議だ。

「忘れてしまったな。昔は仲間もたくさんいたから、魔力が薄くなったのはそのせいかもな。」


 最後のガルーダ。

 ひょっとすると、今の俺と同じ?異世界から来た人は俺ひとリ、だろうし。ハーレム状態、なんだろうなあ、とは思うがしっくりこない。仲間のような感じがしない。前の世界での自分の暮らし方からすれば、彼女達とは結構話した方だけど。へたすると半年分は話しした気がする…。なんか、悲しくなってきた。

 しかし、このガルーダ、ずっとひとりだったのか?


 聞くと、寂しくなかったらしい。

 もともと世界中を旅してまわるのが好きだったから、と普通に答える。

 その昔、大海原を飛び回り、自分と同じくらいの大きさの魚と語り合った。

 極寒の、雪と氷の世界での話。沈まない太陽をずっと見つめていた。暗くなった世界でも色とりどりの星々とオーロラを腹がすいて倒れる寸前まで見ていた。

 たどり着くことはできなかったが、高く高く飛び上がり、太陽を目指したこともあった。

 なんの気まぐれか、砂漠に水を運び、大森林に変えたこともあった。

 山を削り、平原に変えることもした。

 時には魔力を使い、時には魔力を使わず、魅力を感じるままに、飽きれば途中で放り出すことも度々あった。

 そして、ガルーダだけではなく、いろいろな生物が死につつあることも。この世界は死にかけているらしい。


 そんな話を聞いているうちに、たまらなくなった。

 うらやましい。

 たとえ死にかけている世界だろうが、世界中を見て旅するガルーダがうらやましい。

 自分も…。

 ハーレムが、異世界から来た、なんて思い始めた自分がつまらなく、とても矮小な感じがしてきて、たまらなくなる。


 いろんな話を聞くうちに日は暮れてしまった。

 その間にこのあたりの魔力はあらかた吸い尽くしてしまったらしい。

「残念だがお別れだ。」

 ガルーダがいるだけで、周りの魔力を吸い取ってしまうらしい。長年、魔力を糧として生きてきたため、そんな体質になったのだろう、とのことだ。

「ここの魔力はだいぶ減っているが、吸い尽くすのはおしくてな。次の機会のためにとっておきたい。」

 そうか、残念だな。と返す。

「また、会えるかな?」

「お前さんの魔力は変わっている。魔力に乗せてお前さんの声を届けてみろ。すぐにわかる。飛んでくるよ。」

 まずは、魔力の使い方を覚えないとな。

「わかった。」


 来た時とは違い、静かに飛び立つ。

 こちらに気を使ってもらったらしい。

 ずいぶんと高く舞い上がる。星空に浮かぶ雲よりも高く飛び上がり、その巨大さがようやくわかる。大きく、大きく、山の周りをまわり、ガルーダが飛び去っていく。

 夜なのに、その大きさ故か地平線に消えるまでその姿を見ることができた。

 彼女たちと会って魔法の話を聞いた時よりも、ゴブリンが襲ってきたときよりもファンタジーを感じた。

 それよりも、自分もこの世界を旅してみたいと思ってしまった。

 山の頂で、一面の星空の下、この思いは止められそうもない。

 自分のわがままに彼女たちは突き合せられない。

 彼女達との結婚はどうやって断ろう。

 一人旅かな。

 旅するには、この世界のことをもっと知らないと。

 生きていくにはどんな知識が必要かな。

 食事なんてしばらく作ったことがないな。

 旅にはどんな荷物があればいいんだろ。

 怪我とか病気とはどうしよう。

 魔法を覚えればどうにかなるかな?少なくとも助けにはなるだろう。

 地理は…気ままな旅になるから別にどうでもいいが、世界情勢は知らないとな。戦争とかには巻き込まれたくないからな。

 なんてことを星空を見上げながら思っていた。


 魔法かぁ。使えるようになりたいな。

 と思いつつ、手に力を入れると、いつもより力が入り、うっすらと光りだす。

「…」

 驚きつつ、さらに力を入れる。

 そういえば、俺が気絶しなかったのって、もともと魔力ゼロの状態だったからかな?なんて思いながら、星空を見続けていた。


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