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パパになる

 娼館は、昼間は暇だ。

 雑事は奴隷がやるし。

 まあ、たまに昼から、ということもあるが、基本的に夜忙しくなる。

 なので魔力について考える時間は腐るほどある。


 折角のファンタジーな世界なので、ファイヤーとか使いたい。できないものはしょうがないが、誰に聞いても答えは同じ。


「そんなファンタジーなことできないよ。」


 強化魔法を使っている段階で十分ファンタジーだろ!と突っ込みたい。

 しょうがないので、今できる身体強化に挑戦していく。

 でも、あまり一気にやると痛い目をみるので、少しずつだ。これが大事。


 今回は聴覚に挑戦だ。

 音を感知する仕組みはよくわからない。しかし、小さな毛がそれぞれに対応した音程に反応し、それが電気信号となって脳に伝達されるのは知っている。

 しかもこの小さな毛は、一度破損すると治らない、と記憶してる。まずはこれを治す。そのうえで、より微細な音の大きさの違いもわかるようにする。毛の数も種類も増やし、より細かな違いを判別できるようにする。


 次に音の方向に対する感度もあげたい。

 細かな違いはわからないかもしれないが、超敏感になった皮膚感覚で音も拾うことができるんじゃなかろうか、と思う。実現できれば、ゲームのような感知スキルの出来上がりだ。

 音よりも電気の方が桁違いに早い。超音波も十分検知することが可能だと思う。蝙蝠みたく音波だけで敵の位置が分かれば、暗闇とか、物陰の敵も確認できるようになるだろう。壁の向こうもわかるようになるかもしれない。


 この世界、魔力の強化はあるが、スキルがない。ないなら作るまでだ。知識は、あるしな。


 感覚は強化できても、処理する脳も鍛えないといけないな。それが、…魔力でどうこうできるイメージはわかない。ひょっとするとできるかもしれないが、地道に繰り返し習得していこうかと思う。

 スキル習得。習熟度アップ。うんゲームの世界だな。


 というわけで、昼間の暇な時間を使って練習。男どもしかいない中庭で日向ぼっこをしながら周りの音を聞き分ける。

 聞こえるレベルは調整できるようにイメージした。うまく働いているようで、徐々に感度をよくすると遠くの音が聞こえてきた。近くの音が大きすぎるので、脳内でフィルターを掛ける。お、できた。

 クリスタの声が聞こえる。


「…それは、できない。」


 ん、だれかと言い合ってる?


「またまた~、みんなやってることだよ。」


「いつも静かなクリスタが、「わたしが面倒をみる!」なんて大きな声出したときは、みんなびっくりしてたから、十分その気なんでしょ?」


「なんのことだ。」


「えっちしたんでしょ?」


「んな、や。」


 う~ん、俺のことを話してるのかな?

 それにしても、みんなやってるって。えっちって。


「禁止はされてるけどね。やってない人いないよ。四六時中一緒なんだし、夫婦より密度濃いって。しかも一夫一婦よ!貴族でもいないって、こんなの。」


「そうそう。」


 3人か?

 聴覚スキルを磨くため、会話に集中する。決して盗み聞ぎしたいわけじゃない。なんてだれに言い訳してるのやら。


 たわいもない会話が続く。異世界でもガールズトークは変わらないのか。女主導の世界のようにも思うけど、女性はどこでもこんなんなのか。


「まあ、こんな生活も、女王様が奴隷制度を作ってくれたおかげだしね。」


「そうだな、こんな火傷でも生きていけるのは奴隷制度のおかげだ。できれば女王様の役に立ちたい。」


「ははは、私たちじゃ、なにもできないよ。」


「そうだな。」


 女王様、ありがとう。

 俺からもお礼を言いたい。

 それにしてもこの街の女王様、いろいろやっているようだ。

 この奴隷制度のほか、産めよ増やせよ政策だっけか?

 普通なら働けず、飢えるしかないような生活弱者を奴隷制度として救う。

 その奴隷を働かせる場所を提供する。

 生活弱者は男にもいる。事故で稼ぎ主である女性たちがいなくなった家。これだけ魔物が多い世界だ。立ち行かなくなる家も多いと思うよ。


「ひょっとして、この前のも女王様のおかげ?」


「そうだな。娼館の女主に最初は断られたけど、その後許可されたし、更に支援もしてもらえたからな。

 聞いてみると、娼館のオーナーに聞いてくれたらしい。それが何故か女王様の耳にまで届いて、野菜の達人を紹介してもらったからな。街の外にでるだけでは、あの量は収穫できなかったな。」


「いいなあ。結構儲かったんでしょ?」


「まあ、そうだな。リスクはあるが、制度化しようとしてるらしい。隠居した者たちを使うなら問題ないそうだ。あと子供たちも。」


 ということは、あんなことって、俺たちが最初ってことか。


「女王様は、男も自由に街中を歩ける様にしたい、なんてことを夢見てるらしい。」


「えっ?そんなことまで教えてくれたの?」


「はは、面白いことをしでかしてくれたお礼かもな。」


 だからなのか。少し前からひとりでも街中に行けるようになっていた。

 とは言っても、外出するのは俺一人だが。奴隷を伴っても、外出する男はいないけどな。みんな出不精だな。なんてな。



 ということで、ばあさんの店に行くことにした。

 あそこの野菜はうまいのだ。高いので少ししか買えないけど、99%肉だけの食生活はいまいちだ。娼館でも野菜は出るが、あの野菜は忘れられない。目の前の野菜は平らげるけどな。


 歩いていると、見知った顔が近づいてくる。以前、相手した客の一人だ。名前はなんと言ったかな?


「ダイ君、こんにちわー元気みたいだね。」


「こんにちわ。」


 うわー、向こうはきっちり名前覚えている!

 あれ?おなかが少し…


「気づいた?子供できたの。ありがとね。」


 子供ができた。おれの子供だ、ろうな。それなのに、相手の名前がわからない。とても申し訳ない。


「おめでとう!」


 とりあえず、無難に祝福の言葉をあげる。


「こんなところで一人だとさらわれちゃうよ。」


 気を付けます。と返事する。それにクリスタ、奴隷や女主の許可はとったことを伝える。


「へー、信頼されているんだね。ひょっとして強いの?」


「逃げ足だけは速いんですよ。」


「そうなんだ。子供にも期待しちゃうな。」


 おっ、お母さん的な発言。さすが女性。子孫のことを考えている。男じゃ、こうはいかない。しばらくできないな、とか考えちゃう。名前も知らない相手なのに。


 無難な話をして別れた。

 彼女の他にも同行者はいたが、挨拶くらいしか声を交わしていない。

 妊娠した女性の立場が強い?

 子供の父親だからか?みんな遠慮したのかな。


 彼女と別れた後で、何気にダメージがあるのに気づく。


「子供かぁ…」


 あれだけやっているのだから、こうなるのは必然だが、目の当たりにすると堪えるな。今まで実感がわかなかったけど、気が付いたら血縁者がいっぱいだ。

 血縁者に意味があるか悩みどころではあるが。

 転生ではなく、トリップでもなさそうだ。どちらかというと憑依に近い。子供ができたとして、どこまで自分との繋がりがあるのかと思ってしまう。

 そもそも、異世界の実感がわいていない。この世にいるのに、まだゲームをしてる感じが残っている。子供ができても、まだその延長にある。

 でも、元の世界のこともだいぶ思い出さなくなってきた。なつかしさはあまりない。もともと自分は、薄情な性格だと思っていたけど、ここまでとは思っていなかった。

 段々とこの世界が自分の世界だと感じるようになるのだろうか。



 もの思いに浸りながら歩いていると違う道に迷い込んだようだ。

 しかもいつも歩いている通りより人通りも少ない。空家の通りに来てしまったようだ。


「迷子かい?送っていくよ。」


 ごつい感じの女性たちが周りを取り囲む。いかにもって感じのテンプレな状況。

 しかし、これまで、この世界でいい人たちにしか会っていない。ひょっとすると彼女たちもいいひとの部類に入るのでは?人を見た目で判断しちゃいけないしね。


「野菜を買いに来たんです。」


「野菜なら我家にいっぱいあるよ。分けてあげるから一緒においで。」


 いらない、と言っても引かない。徐々に詰め寄ってくる。

 なだめすかす感じの誘いの言葉がいまいちだ。もともとついていく気はないが、勘弁してほしい。

 しつこいが実力行使する感じはしない。見た目はごついのでちょっと怖いけど、子猫好きのヤンキーが子猫を捕まえようとしてる感じ?

 自分で想像して鳥肌が立つ。子猫って自分のこと?


「一緒には行けない。娼館で働いているんだ。気に行ってくれたら来てね。」


 そう言って、頬をひとなでし、脇を通り抜けていく。

 ごつい顔をしているが女の子だ。頬が赤い。


 適当に歩いているとばあさんの店に着く。

 野菜を仕入れて帰途につく。

 帰ったら、クリスタに怒られました。黙って出かけてはいけません、と。

 すいませんでした。

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