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初戦闘!

 奴隷さんが、大張り切りです。


「毒草と見分けが付かないから、専門家がいるな。」


「護衛が必要だな。」


「荷物を運ぶ人が居た方ががいいな。」


「調理道具もあった方がいいかな?」


 クリスタさん、ぶつぶつ言いながらあちこちから人を集めてきます。年よりとか子供がほとんどですけど。


「引退した人とか、見習いばかりだ。護衛は、まあ、あれだな。」


 知ってます。お客さんです。ニコニコと手を振ってきたので、愛想よく手を振り返しました。


「あれ、クリスタさんも行くの?」


「当たり前だ。わたしはお前の奴隷だろ。」


 断定口調です。そんな体なのに、大丈夫でしょうか?

 普段は足を引きずっているけど、いざというときは素早く動けるのは見たことあるけど、心配です。


「おまえよりは動ける。」


 聞いたら、あきれ声で答えてくれました。その通りです。

 これでも、ちゃんと歩けるようになったし、走ることもできる様になりました。たまに転ぶけど。動かし方がわからなくなって、スプーンを落としたりするけど。歩いてて柱にぶつかったりしたけど。

 ん?これってドジっ娘みたい?ひょっとして可愛いあの娘がわがまま言ってる。しょうがないな。みたいなノリ?そんな風に想われてるのかな。そういえば、同行者の目が、若干、温かい目で俺のこと見てるような気がします。

 恥ずかしいな。


 こんなに良くしてくれるのに、奴隷さんでは失礼です。クリスタさんと呼びましょう。



 とりあえず、森まで来ました。

 普通のハイキングです。

 子供、婆さん、若干名の若い女性。最後に俺。20名前後の集団。どんな集まりだ?


「これが人参。」


「これが大根。」


「サツマイモ。」


「玉ねぎ。」


 地面に埋まっている野菜ばかりですね。

 意外と豊富にあります。案内する人の腕がいいんでしょうか。

 聞くと、地上に成る野菜は獣に食べられるので、滅多に手に入らないらしい。ある場所に行くと生えているが、秘密。弟子にだけこっそり教える。その報酬として、老後の面倒を見てくれたり、お金で情報を売買したりするとのこと。


「魔物だ!」


 のんびりムードで野菜採集していたのに。

 護衛の若い女性達が対応する。それに守られる配置で、婆さん、子供たち、それに俺、クリスタ、野菜のことに一番詳しい婆さんがいる。


「がんばれ!」


 子供たちから声援が上がる。

 魔物に襲われているのに、なんかのんびりムードが漂っている。おいおい大丈夫か?


 そんな心配を余所に次々と魔物をやっつけていく。

 見ると、こちらの世界に来た時にお世話になったゴブリンのようだ。…いや、あれより貧弱だぞ。なら、余裕なのもわかるな。あの時も一方的だったからな。


「おかしいな。」


「クリスタさん、どうしたの?」


「子供のゴブリンか?珍しいな。…ただ、数が…」


 そうこう言ってるうちに、どんどん討伐されていく。

 楽にやっつけれるので、いつの間にかどんどん前に進んでいく。つられる形で、子供や婆さん連中も進んでいく。


「ウッドウルフだ!」


 突然、クリスタさんが叫び、横に飛ぶ。


 ウッドウルフが飛んでくる。

 それを見た婆さんも避ける。


「うっ!」


 クリスタが呻く。失敗した、という顔だ。

 俺を一瞬忘れたのだろう。火傷をしていない左側から襲われた、咄嗟の反応。

 それにしても婆さんの反応も尋常じゃない。ほとんどクリスタと同じか、ひょっとすると早いくらい。

 などと落ち着いて見ている場合じゃない。まっすぐこっちに向かってくる。


 ファンタジーな何かによる体の改造はひと段落している。しかし、それは反応速度と思考速度で、手足を早く動かしたり、強い力を発揮したり、殴られても堪えない丈夫な体ではない。今のところは。おかげで、なじむまで吐き気が収まらない状態だったけど。

 おかげでこっちに迫ってくるウッドウルフの様子がよくわかる。

 さて、逃げようかと考えてると体が動かないことに気付く。

 いや、動いているがひどくゆっくりだ。体が重い。


 あれだ。体は反応しているが、早くは動かせない。強化しているのは、感覚だけで、筋力ではないからか。

 それならば、魔力で筋力強化。

 …やっぱり反応しな…くはないか。さっきよりも早く動き始めたが、それでも遅い。いったい、感覚強化はどれくらい早くなっているのか?


 そんなことを考えてると、目の前までウッドウルフが来ている。

 まずい。

 ウッドウルフは左前脚を踏ん張り、右足を上げて振り下ろそうとしている。顔を少し左に向けているのまでわかる。

 俺は右足の軌跡から逃れるため、左足で地面を蹴って逃げようとする。…全然反応しない。早く動けよ、こら!なんとなく左足からは避けられそうな感じだ。

 体が浮き上がりそうだな。浮き上がったところで、勢いに乗ったウッドウルフが突っ込んで来るのが予想される。なので、残った右足で鼻先を踏みつけ左に飛び軌道の外に出ることにした。

 ウッドウルフはバランスを崩し、地面にこすりながら倒れこむ。

 やばい。視界からウッドウルフが消えていく。今はしっぽしか見えない。空中で体勢を保ちつつ振り向く…ない。まわりすぎて地面しか見えない。いや、足の間から体勢を立て直すウッドウルフが見えた。

 いやぁぁ!空中にいるから動けないでしょ。


 再度、ウッドウルフが突進してくる。鼻を蹴ったダメージとかはないのかよ!

 魔力の上乗せがあると思うけど、落下より早い横移動ってどうなのよ?

 なんとかつま先で地面を蹴って正対する。今度は勢いをつけたまま頭突きをぶちかます気らしい。

 また、鼻づらを蹴飛ばしてやる。

 右足を横から蹴りつける。ん?反応した。そりゃそうだ、2回目だし、元の運動性能は、向こうが上だしな。しかし、思考速度はこっちが上だ!

 りゃ?右足が反応しない。しかも、何故か足がつる気配。そんな時だけ反応早えな、俺の筋肉。とりあえず、リセット。ん?お願い、右足さん、攣らないで!

 体を丸める。

 畳み込んでいた左手を伸ばし、ウッドウルフをいなして衝撃を最小限にかわす。その代り大きく飛ばされました。

 クリスタが目に入る。口を大きく開けて、こっちを見てる。早く助けてくれー。


 クリスタ以外の同行者は、もともと遠く離れていた。

 ウッドウルフにクリスタと婆さんがどうにかできるとは思えないけど、少なくとも俺一人じゃ攻撃力が乏しすぎ、どうにもできそうにない。クリスタの持っている剣に期待したい。

 それには近くまで戻らなくては、ならない。それなのに、どんどん遠くに離れていく。世の中そんなもんか。大きく放物線を描き飛んでいきながらそんなことを考える。

 そんな場合ではない。

 俺が放物線を描く間、ウッドウルフは直線で走る。きっちり死角に回り込むように動きやがる。敵ながらあっぱれ。

 今の俺にできること。右手、左手、右足、左足が動き始めるまでは、他の手足を動かすことができない。失敗すると硬直してしまう。たまに成功するけどな。ははは。それと、動き始めてから別な動きをやろうとすると攣る。これも100%じゃないが、発生条件は今は試したくないな。


 何かが飛び上がる音がする。

 仰向けで、頭から地面に突き刺さる様な格好で飛んでいるので、首筋あたりを狙って来るとあたりをつける。なんとか様子を見ようと首を回す。反応できるようにと右手も一緒に回す。

 近い!

 目の前にウッドウルフの口が見える。もっと遠いかと思っていたが、予測が外れる。…音速か?知覚の反応がよくなって、思考速度もも上がっているから、3m先の音が遅れて聞こえてるのが分かる?音のズレも吐き気の原因だったのかな?

 あー、単純にウッドウルフが速いせいもあるな。

 右手で勢いのまま殴りつける。ダメージはなさそうだけど。


 俺からの攻撃のダメージは通らない。

 クリスタや婆さんがここに来るまで4~5回は攻撃をもらいそうだ。また飛ばされるかもしれない。いや、わざとか?俺を狙っている?だとしたらどうして?

 それより、今はこいつの対処だ。時間があると余計なことを考えるな。戦いに集中しないと。

 とどめを刺す必要はないよな。なら、嫌がらせだな。攻撃をいなして、ついでに頭、特に鼻先を木や岩にぶつけてやろう。うまくいけば目をつぶせるかも。

 方針は決まったぞ!


 ウッドウルフが先に地面に着く。反転し、こちらにとびかかってくる間にこちらの体勢を整える。

 相手の様子を見る。こちらが先に動く必要はない。体の動きは劣るが、相手の動きが見えるのだ。後出しジャンケンが有効。

 今回も突進してくるようだ。ポンポン跳ね飛ばしたのが気に入ったらしい。

 こちらも飛ばされる準備をする。ただし、相手の目を狙う。攻撃が通りそうな場所だし。

 相手も気づいて、右手に噛みついてくる。さっきも反応したしね。

 左面がこっちに向けられる。準備していた左手をまっすぐ突き出す。これにも反応する。すごいな。

 軽く飛ぶ。

 頭を下げ、背中で体当たりしてくる。どんだけ反応いいの?素人の俺相手に、どんだけやる気なんだか。

 体を少し丸め背中をかわす。足をのばし、相手の後ろ足付け根を蹴る。さすがに見えないので避けられず、クリティカルヒット。

 そして飛ばされる俺。


 飛んだ先は、クリスタにだいぶ近づいた。あと5m。

 くるくる回った後起き上がる。


「ダイ!」


 おっ、名前を呼んだ?クリスタは何故か俺のことを呼んでくれない。理由はわからないが。

 そんな彼女が決死の形相で駆け寄ってくる。

 その横を婆さんが走っている。決して婆さんの速度じゃない。ここはクリスタを注視する状況なのに、婆さんから目が離せない。異様な光景だ。

 彼女達は早いが、魔物の方が速い。急いで振り返る。

 やっぱり、すぐそこまで近づいてるじゃないか。

 もう一度飛ばされればクリスタ達と合流できる。それがお前の最後だ。

 あれ?なんで、クリスタがやっつけてくれると思ってるんだろ?まずいだろ?


 やり直しが利かない。

 であれば、ダメージが残る様にしないと。

 目を狙う。今度はこっちが先行。

 相手は構わず突進してくる。

 上等!

 右足、左足と体重がかかるのに合わせる。先ほどダメージを与えた左後ろ足に体重がかかる瞬間を狙い動く。合わせて相手も動くが、制御が甘く、勢いが死に、横に動いた俺の体に追いつかない。脇を通り過ぎる位置関係。

 脇を通る速度に合わせ、目を突く。


 通り過ぎたウッドウルフは、見える方の目で俺を見ながら反転する。

 俺に集中しすぎたか、合流したクリスタの剣で後ろからとどめを刺される。

 あっけない幕切れだな。


 でも、クリスタさんの目が怖い。

 なんで俺のこと睨んでいるんだろ?


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