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ここは異世界

 毎晩、熱にうなされていた。40度超え。食事ものどを通らず、水もそこそこしか飲めない。いや、台所に行く体力もなく水も飲めなくなった。そんなこんなで4日目の夜、意識が朦朧となりながら眠りに落ちた。これで最期かとぼんやり考えながら。


 目を覚ます。体はだるいが熱っぽくはない。

 「生きてる…」

 「そうだ、生きてるぞ。まず、水を飲め。」

 思わずつぶやいた一言に返事が聞こえる。家族に連絡した記憶はないのに、誰かが心配して看病いに来てくれたのか?

 目を開ける。…木が見える。外。

 熱のせいだな。夢だな。寝よう。

 「大丈夫か?」

 声の主は寝かせてくれないようだ。心配そうな声でささやかれる。そんな声で聞かれたら応えないわけにはいかないかな。

 「熱は下がった、と思う。でも体に力が入らない。」

 「そうか。とりあえず、水でも飲んで落ち着け。スープでも飲むか?」

 「ありがとう」

 と、返事はするが気持ちはこもっていない。相手の格好に驚いて。青い黄色の模様のレザーアーマーというやつを着て、腰には剣を下げているのは、なぜに?

 興味はあるが、非常に眠い。まだ、日は高いのに。

 意識を失いながら、思う。ファンタジーものの世界みたいだ、と。


 気が付くと誰かが言い争っている声が聞こえる。日が傾いている。

 「…だから、先を急ぐ。理由は承知してる筈」

 「でも、置いていくわけにはいかないと思わないの?」

 「もともとそのつもりだった筈。」

 にらみ合っている。俺、置いてかれちゃうのか。薄目を開けて様子を見る。

 「目覚めたみたい~」

 さっそく気づかれた。

 「おはよう~、ダイく~ん」

 青い鎧に白い線が入っている。確かに名前は大五郎だが、なぜ名前を知っている。

 「ダイン君。とりあえず水分をとれ。」

 違った。俺はダインという名前らしい。いつ改名したんだろ。

 青い黄色模様のレザーアーマーの女に 「ありがと」と言おうとしたが、むせた。のどが張り付く。水を受け取りゆっくりとのどを潤す。ぬるくてまずいな。のどにはやさしいな。

 飲み終わってから礼を言う。周りの空気が重い。俺のせいなのか?とりあえずおいて行かれるとまずいような気がする。周りを見渡すと森の中だし、荷物は持っていない。食糧も水もないし、体調も悪いし、できれば連れて行ってほしい。

 「日も暮れるし、野営しないといけないのは確かだな。ダインも起きたし。歩けるか?」

 「ゆっくりなら歩けると思います。」

 一応丁寧に対応する。おいて行かれてはたまらない。

 「ふん」

 青基調の皮鎧に緑の縁取りが入っているメガネっ娘、ガラが悪いぞ。

 「ウィンディー、その態度は悪いぞ。」

 「…すいません。」

 リーダー風の女に返す。でも態度は変わらない。

 なんか、心が痛い。


 青鎧の一団が出発する。説明も、挨拶も、何もなし。

 不思議だね。

 こっちは、みんなのことは知らないのに、向こうはこっちを知っている感じがする。あんまり仲良くないような気がするけど。女5人に男一人だからしょうがないのかな。

 これくらいの空気は読めるので、コスプレ調な衣装には突っ込まない。剣みたいなのぶら下げているし。剣みたい、であってほしい。剣はやだな。でも、下げた感じが、すごく慣れた感じなのは気のせいかな。気のせいと思いたい。

 とりあえず歩き出す。

 周りは木々がまばらに生えていて、その間に苔が凄いことになっている。その割には草はあまり生えていない。凄いのは木の一本一本が信じられないくらい太い。屋久島の原生林を思い出す。サイト情報だけど。

 先頭が淡い青に赤いワンポイントが入った女。俺のことを置いていくわけにはいかないと思わないの?とかばってくれた。ポイント高い。背も高い。赤いショートヘアがかっこいい。

 次がウィンディー。メガネっ娘なのに、置いていくと言われた。メガネは関係ないな。

 3番目がリーダー(俺認定で)、俺と続く。

 5番目が青に白淵の線が入った皮鎧を着ている青い髪の女。リーダーと同じ髪の色。

 6番目が同じ青基調の皮鎧だが、でかいな、いろいろ。背も高いし、金髪が映える。金の模様が入っている。髪に合わせて作っているのか。

 みんなに守られる形で進む。逃げられないようにしているのか、なにかから守っているのか。こんなところじゃ、逃げないよ。体力ないし。

 本当に体力ないし。みんなぐんぐん歩くし。体調不良のせいにしたいけど、歩くの早いよ。これでも山歩きは何回も行ったことがあるし、一緒に行った奴に後れを取ったことはない。人並みには歩けるほうだとおもう。けど、この一団の歩みは早い。

 頑張って歩くけど、頑張るけど。みんなが俺に合わせて歩いてくれてるなんて思いたくはない。


 少し歩くとみんなが突然止まる。

 「ゴブリンだ!」

 えっ?まじ。

 「ノア、ウィンディー、ダインを守れ!」

 とりあえず、金模様の娘さんがノアさんと判明しました。走れないから、待機します、っていうわけにもいかないよね。男の子だし。でも、武器は欲しいかな。

 とか、思っている間に、リーダー以下3名が走り出し、ゴブリンに一撃。早い。

 一撃を入れてからゴブリンを見つけた。木の陰にいたのによくわかるな。

 戦闘は木の陰になってよくわからないが、ザシュザシュと音が聞こえる。バキッとかボキッとかゴン、なんて音も聞こえる。

 みんな強いのかな。一方的にやっつけている感じ。キャーとか悲鳴が聞こえてこない。

 木の反対側からなんか出てきた。

 お猿さん?毛がないし、緑色っぽい。地球だったら映画撮影でも無理かな。特撮じゃあれは無理だよね。CGなわけないし。

 なんて驚いている間にノアちゃんが走り出す。ちょっと遅れてウィンディーも走る。こいつは呼び捨てでいい。

 2人とも早い。30m位離れていたけど、向こうを向いてリーダー達と戦っているゴブリンの元にたどり着き、あっという間に切り捨てた。生き物を殺しているのにまったく躊躇がないな。そんなもんなのか?

 戦いを観戦していると後ろで音がする。

 振り返ると緑色の物体がハアハアいいながら近寄ってくる。

 「っくんじゃねー!」

 叫びながら蹴ってしまった。相手が低いせいか、顔面にあたる。一応体を狙ったのに、タイミングがずれたみたい。相手もよけるの失敗したみたい。

 もう一匹が体当たりしてくる。片足じゃ立っていられない。倒れる。痛い。でも、相手も同じで、一緒に倒れる。あっ、同じじゃないな。転がっている。痛い。こっちが痛がっている間に、相手は起き上がろうとしている。まずい。足を延ばして、一蹴り。ころんだな。ざまみろ。

 「伏せてろ!」

 2匹と俺が地面でじたばたしてると青の軍団がやってきた。あっという間にゴブリンを切り伏せる。誰とは言わないが俺まで切り捨てないでくれよね。一番近かったし。一番に駆け寄って助けてくれたけど。近くで剣が振り回されるのは怖い。これからは呼び捨てにしません。ウィンディー様と呼びます。

 「大丈夫か?」

 リーダーが駆け寄ってきてくれました。

 「ケイト、ごめん。油断した。周りにはなにもいなかった筈、なのに。」

 リーダーの名前は、ケイトさんと…心のメモ帳にメモメモ…

 「うん、今度からは気をつけてくれ。」

 「わたしもだ。すまない。」

 おっ、ノアさんがしゃべった。話せないのかと思った。予想を裏切らない渋い声です。

 「お怪我はありませんか~」

 「大丈夫です。痛かったけど、血はでてないみたいなので。」

 おしりとか足とか背中を触って確かめる。

 「そうですか、よかったです~。あと~、とどめをさしたのはインディーさんですよね~。」

 「その筈。わたしが一撃を加える前まで動いていた。」

 「そうか、よかった。」

 何がよかったんだろ。よくわからない。でも、なにか聞ける雰囲気はないし、皆も話もせず、ゴブリンの後始末をする。時間もないしこのまま放置だそうだ。いろいろ寄ってきそうだが、夜が近い。近くに泊まれる小屋があるそうだが、まだ歩くそうだ。暗い夜道を歩くのはさすがに怖いので、先を急ぐのに賛成です。

 無駄口も言わずに、みなさん、黙々と歩きます。

 こっちも疲れてるので、置いて行かれないように、がんばって歩きます。

 でも、だれか、今の状況を説明してくれ。

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