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ヘルメス  作者: 捺耶 祭
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西野しおり-2-

 すべて済まし、家を出る時間はいつもどおり。


 肩口くらいまでで切りそろえた髪には何の手も加えず、少し目立つ赤いピンで片方の前髪を留める。


 吉田先生には「切りなさい」と言われているけど、男の先生はわかってくれているのだろうか。髪は女の命なんですよ?


 いまどきの高校生にしてはすこし地味かもしれない。


 校則で染めたりとかはできないから、そういうのはまだしも。少し癖のある髪にはストレートパーマをかけたりしないし、ワックスやスプレーだって使わない。


 内緒で薄く化粧するのが流行ってるけど、化粧だってしない。


 自慢できるようなことではないけど、あまり飾り立てしないのはわたしのモットーなのだ。


 若さという名のみずみずしさが溢れ出る高校二年生なのだから、今はそれを精いっぱい生かさなくては損である。


 けして、けしてずぼらなわけではない。


 それに綺麗な二重はちょっとした自慢でもあった。自分で言うのもなんだが、「原石」と言うやつではないだろうか(これも自慢できるようなことではないけれど)。

 

 といっても、クラスではあまり目立つほうではなく友達だって多いわけじゃないわたしは、磨いたって綺麗になる保障などどこにもないのだけど…。


 朝の澄み切った空気が好きであるので、今日もわたしは少し早く家を出る。するといつものようにわたしは"つかさくん"に出会うのだ。


 家を出てすぐの曲がり角。そこを右折すると彼の姿が今日も見えた。一見利発そうなその顔に、後ろから見ないとわからない寝癖頭が特徴的な彼の名は日野つかさ。


 わたしとは幼馴染で、小さなころはよくおままごとをして遊んだものだった。


 しかし、実のところつかさ君は込み入った家庭事情の持ち主で、現在自分の親でない人に育てられている。なんでも捨て子らしかった。


 わたしはそんなこと気にせずに遊んでいらせたが、当の本人はそうでもなかったようだった。


 年を重ね、物事を理解するにつれ、つかさくんは自分の外に見えない壁を作りはじめ、とうとうわたしとも遊ばなくなってしまったのである。


 彼にとってそれはあまり重要なことではないのかもしれない。


 幼少期の私はただでさえ口数が少なく、すこしばかり浮いた存在だった。だから、数少ない友人のひとりと疎遠になってしまうことは、少なくともそのときの私には耐え難いことだった。


 今日も時間どおり、わたしは彼の十メートル後ろを歩く。

 果たして何度目であろう。高校に入って二年目の秋。

 こうやって彼の後ろをついて歩くのは、登校日と同じくらいの数だと思う。

 彼は気付いているのだろうか?

 もし気づいているならどう思っているのだろうか?

 ストーカーとか思われていたらちょっとショックだ。

 気づいているとしたらなぜ振り向いてくれないのだろうか。

 またあの幼いころのように、となりを歩いてくれないのだろうか。


 ____いや、彼は気づいていないだろう。昔からそうだった。とっても鈍感で、どこか危なげな前しか見てない背中。ほうってはおけない存在。


 初めて会った時みたいに微笑ってくれないし、今じゃまともに話してもくれない。


 気づいてくれないのは少しさびしいけど、心の中にいる彼が昔のままでいてくれていることが確認できるようで反面うれしくもあった。


 ちょっとカナシイ言いワケかもしれない。でもこの微妙な距離がいまはとてもいとおしい。


 ジレンマではあったけど苦にはならなかった。


 乙女心は難しいのである。



 異性の描写は、個人の異性に対する先入観や理想が入り混じってしまうので、なんとなく手垢のついたわざとらしい文章になってしまいます。

 今は私も少し大人になったつもりでいますが、この小説の原案を書いたのがもう5年も前ですのでやっぱり青臭いですねw

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