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ヘルメス  作者: 捺耶 祭
33/45

古泉 忍-1-

 

 数学教師が黒板用の巨大なものさしで俺のすぐ前の机をたたく。


 ガンッという音とともに居眠り中だった俺の知ってるヤツがおきた。


「授業中に居眠りとはいい度胸だな。優等生はなにやっても許されるのか?この学校は 」


 さすがに驚いたのかそいつは体を一度びくりとさせたのち、数学教師の方をにらむ。


「なんだ日野、その目は?何かいいたそうだな」


 教室は昼下がりの授業の和やかさから一転、教室は緊張に凍った。


 厳しいと定評のあるこの数学教師が生徒の授業態度について、机を物差しで叩くというパフォーマンスでわざわざ授業を中断させて言及するというのはよくあることであった。


 無論、目的はだらけた生徒への注意と周りの生徒への牽制。


 進学校のため、ここで教師に反抗して教室を出て行く者や冷やかしたりするものはいない。とはいえ、このひと時の緊張でさえ残暑の緩んだ大気が満ちる近頃の教室では日常であった。


 しかし、この教室の中にいる人間のなかで「なんだ、いつものことか」などと思ったものは一人もいないだろう。


 なぜなら今日居眠りで注意されたやつは普段から優等生として有名な日野つかさなのだから。


 内心、あの数学教師だって、顔には出していないが小さな衝撃を受けているはずだ。


 あいつは、子供を盗みにきた狩人を見る虎のような目つきで数学教師をにらんでいた。


 どんな夢を見ていたのかは知らないが、相当続きの気になる夢だったのかかなり機嫌が悪い。


 トモダチの俺から見るにあれは相当キレている。


 理由はわからないが、数学教師の厳しい態度に対してではないだろう。でもあいつのことだ。


 すぐに…


「いいえ。すみません。昨日少々夜更かしをしてしまいまして、…クマでもできていましたか?」


 「優等生」の皮をかぶって無難に対処する。頭のいいやつだ。そう思わざるをえない。


 馬鹿なやつだ。


 逆にそう思わざるもえない。


 身を切るほどの無理して他人に合わせ続けるなんて疲れる生き方しあがって。あいつがいったいどうしてあんなふうになっちまったのか、不謹慎ではあるが俺には興味がある。


 俺はあいつのトモダチだ。


 どちらかというと「友達」と書いてトモダチではないかもしれない。


 しいて言うなら「同類」と書いてトモダチであろう。



書くぜーーーー!

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