邂逅3 -彼との旅路-
彼は戦った。
私はただそれを見ていた。
すぐそばにいて彼をずっと見ていたけど
私は一緒には戦いはしなかった。
だってその必要がない。
それが必ずしも彼のためになるとは思わなかったから。
同時に手を貸すのがいやだったから。
”どうして?”
私は彼に問う。
”なんでそんなことをするの?”
彼は驚いたように眼を見開いて少し笑う。
”だって意味がない。あなたは無限地獄に落ちるために戦っているのと同じだ。そんなことをしてなにになるの?今からでも遅くない。全部投げ出せば…”
彼は目を細めて困ったような表情をする。
”あなたはとても辛そうに見える。意味がわからない。あんなもの守れたって、あんなもの救えたって、あなたが幸せにならなかったら意味がない。だって…だって!”
彼は自分の目的を罵倒されたにもかかわらず先ほどよりもにっこりと笑う。
「やさしいんだね」
そう一言だけ言って私の頭をなでた。
「あいつもキミみたいに優しくなってくれたら僕もうれしいと思っている。ほら笑って?これ食べて!●●の手作りだからさ」
そういって彼はさくさくした甘い食べ物を私の口に放り込んだ。
…おいしい。
私はそれから次の言葉が出なくなってしまった。
優しくなんてない。私はせっかく見つけた私を知覚してくれる人がいなくなってしまうのが怖かっただけ。
やさしい?ちがう。
ちがうよ…。
私は「君の幸せ(あいつ)」に…、
…あいつがうらやましかった。