シスター-4-
「ちょうど近くまでやってきたので、昔お世話になったこの孤児院によってみたくなったのです。シスターとももう十年以上もお会いしていませんでしたからね。私の顔を覚えていてくれたなんて本当にうれしいです」
つかさはシスターに向かって上面をとりつくろうだけの嘘を並べた。
対して慇懃なほど礼儀正しい知り合いにシスターはきょとんとしていた。
そんなシスターの態度に、つかさは自分の言ったことに何かまずいことでもあったのかとあせる。ここで会話の内容について突っ込まれたらうまく受け答えられる自信がつかさにはなかった。
「つかさ…くん?ほんとうに?」
「……はい」
当たり前じゃないですか。と言うように一言。つかさは質問の意図がつかめずさらに困惑した。
「…変わったわね。よくしゃべれるようになったじゃないの。よかったです 」
そこで始めて理解する。つかさは孤児院にいたころ極度の無口であった。
一日中何もしゃべらないことだってあった。そのときのつかさしか知らないシスターはそのギャップに違和感じたのであった。
「は、はぁ」
つかさはシスターに気取られないようにそっと胸をなでおろした。
「あ、そうだわ、いい紅茶とおいしいお菓子を手に入れたのだけど、もう食べる人がいないの。積もる話もあります。お茶にしない?」
なでおろした胸は再度心臓に悪い高鳴り方をし始めた。
「顔色が悪いわね。こんなおばさんからのお茶のお誘いじゃ不服だったかしら」
本気で落ち込んでいるシスターの誘いをつかさは断ることができなかった。
「いえ、そんなことはありません」
「そう!それはよかったわ」
そういってシスターは礼拝堂に入り口のすぐ横にある司祭室に歩みを進めた。
お茶を飲んでいるときに記憶を消すチャンスをみつけるしかない。
どうやら自体はさらに面倒な方向に進んでいるようだ。




