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ヘルメス  作者: 捺耶 祭
11/45

日野つかさ-6-

 「お前,さっきオレの願いがどうとか行ってたよな」

 

 つかさの問いにヴァンはにっこりと笑んで

 

 「はいっ」


 と応じる。


 「どういう意味なんだ」


 ヴァンは何を言ってるんだとでも言いたげに、あどけない表情でつかさの顔を覗き込んだ。


 「そのまんまですよ?いったとおりの意味です。あなたの願いを叶えてあげます」


 「どうやって叶えるっていうんだ。お前が普通の人間でないことはわかる。さっき消え

てたしな。でももしかしたら何かのトリックかもしれない。なにより確証がない」


 このような質問はつかさ自身,自分の前にいる異様にはまったく無意味であると理解していた。驚くべきことに、つかさはこの異様な事態を許容していた。


 ヴァンは自身にとってただの変質者ではない。


 つかさの求めているものなのだと。


 待っていたのかもしれない。つかさにはそうとすら思えた。


 「うわっ!質問攻めですか?」


 同じような言葉を吐いていたヤツが朝にいた気がする。


 質問ではあったが,その答えはこのときあまり重要ではなかった。


  ただ,確証が欲しいだけ。

 「そこのトランクの中のもので叶えます。それより,普通の人間じゃない…ですか。ボクってそもそも人間なんでしょうか?むーーー」


 つかさにとってはどうでもよく、わかるはずもない事でヴァンは首をかしげていた。


 「そのトランクが開かないんだろう。その中のもので叶えることができたとしても開かないんじゃ話しにならない」


 ヴァンはかしげていた首を元に戻しいきなり「そうだ!」といってにつかさに問うた。


 「あなたは何を望んでいるのですか? 叶えて欲しいことはなんですか?」


 「オレの質問に答えろ」


 「いいから いいから」


 自分の質問を無視されつかさは少し苛立った。しかし、たのしそうでもあり、逆らうことを許さない迫力を含んだ双眸に見つめられ、従わざるをえなかった。


 「オレは…捨て子なんだ。小さいころに捨てられた。四歳のときにな。でも捨てられたとわかった時のショックなのか、そのときのオレにしかわからないがオレにはそれまでの記憶がない。親の顔さえ覚えていない」


 「それで?お願いは『オレを捨てた親でも親は親なんだ!だから会いたいんだ!』とかですか?安っぽい涙を誘うTV番組に出れますよ?このごろそういうの多いみたいですしねっ?」


 いすをカチャカチャいわせながらゆっくり回転して遊んでいるヴァンは、いたずらっぽくそういった。


 冗談で馬鹿にされている。つかさはそう感じたがあまり苛立ちはしなかった。


 そのとおりだ。そんなくだらない望みなんかじゃない。


 つかさはヴァンを無視して続ける。

 

 「オレは何も信じることができなくなっていた。きさくに話しかけてくる友人たち,義親,幼馴染,ここでいまたっている世界さえも嘘をついているように見える。

もうこんなのには疲れたんだ。世界がどう見えていようとオレは生きていかなければならない。極論である死に逃げるのは何の意味もない。人はひとりではいきていけない。だからオレは昨日も,今日もこれからも信じられない他人を頼って生きていかなければならない。そんなのもうごめんだ。オレにとっての十二年は地獄のような日々だった。だからオレは望む。ひとりだけの世界を___ 」


カチャ


「!」


 何かの開く音がした。それはあまり軽快に、しかし錠が凝ったつくりであることを容易に推察できるほど重厚な美しい音であった。


 「ほら!ひらきましたよっ」


 ヴァンは楽しそうに言った。つかさは外見を見る限りまったく変わりばえのないトランクに近寄ってゆっくりと手を添える。そして、上蓋を持ち上げた。


 トランクはあっさりと開き、中には一丁の拳銃が収められていた。


 漆黒を魅せる美しい全貌に金色の模様が入った拳銃。それがこの世の構造物でできていそうであるという点においては、何の変哲もない金属の塊。


 リボルバータイプのその銃は、この平和な日本においてはかなり場違いであり確かに非凡であった。


 つかさは恐る恐るそれを手にとってみる。


 ____重い。


 手にとってはじめて涌いた感情は、感動とは無縁のものであった。



 文体が中ニ臭いのは仕様です。(ということに…)

 意図的にと言っても、ちょっと恥ずかしいです。

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