それはそれでなんか……
「おかえり……どうしたの?」
戻ってきた顔馴染みの顔が浮かない。
成人してからの出会いだ。
お互い心を隠すのはうまいものだけど、だからこそこんなに寂しそうな顔を見ると驚いてしまう。
「何かあったの?」
心配して尋ねる。
けれど、相手ときたら随分と長い間黙っている。
まぁ、別に構わないけれど……時間なんて無限にあるし。
なんて思っていたらようやく口を開いた。
「会ってきたんだ……」
「うん、楽しみにしてたよね。久しぶりだって」
「あぁ、そしたらな。俺のことなんて完全に忘れちまってたんだよ」
「そりゃ――」
良かったじゃん……なんて言葉が続くわけもない。
なにせ、行く前は『忘れて幸せになってくれていると嬉しい』なんて口にしていたのに、その実本当に忘れられているのは流石に想定していなかったのだろう。
「幸せそうだったの?」
「あぁ、とっても……」
「なら、良かったじゃん。ね? ね?」
「うん、良かったけれど……だけどさぁ……それはそれでなんか……」
うじうじとし始める。
こうなると厄介だ。
なにせ、私達には無限の時間があるのだから。
「いいじゃんいいじゃん! 恋人が幸せなんだから! 喜んでやるのが男ってもんでしょ!」
「そうだけど、それはそれで……あぁ……」
ため息をつく。
本当。
死人に口なし、なんて誰が言い出したのやら。
それが真実ならどんなに良かったことやら。
少なくとも私ら死人は今日もこうして一喜一憂しているのだから。




