竜殺しの辺境伯なのに、竜の娘を守りたいそうです
竜殺しのアーヴェル・ノルヴァルト辺境伯は、今日も部下に怒鳴り散らしていた。
「まだ竜の子孫は見つからぬのか。お前たちは無能か」
北の城の執務室に、低い怒声が響いた。
アーヴェルは、漆黒のマントをまとっている。
竜の皮で作られたと噂される、不吉なマントである。
鋭い目つき。
冷たい声。
近づく者すべてを威圧するような気配。
そして彼は、かつて最後の銀竜を討ったとされる男だった。
人々は彼を、竜殺しの辺境伯と呼んでいる。
「なんとしても見つけねばならぬ……」
アーヴェルが低くつぶやいた時、扉の外から慌ただしい足音が近づいた。
「辺境伯様!」
伝令が膝をつく。
「竜の子孫と思われる娘を見つけました」
アーヴェルの目が、わずかに見開かれる。
「どこだ」
「王都、エルフォード伯爵家の令嬢です。名はリリアナ」
アーヴェルは、しばらく黙った。
そして、かすれるように言った。
「……娘であったか」
その声は、怒りではなかった。
十年探し続けたものを、ようやく見つけた者の声だった。
*
リリアナ・エルフォードは、伯爵家の娘として育った。
正確には、祖父であるエルフォード伯爵の屋敷で育てられた。
母は若い頃、愛する人と駆け落ちし、リリアナを生んだのだという。
けれど、父の記憶はない。
母も、リリアナが幼い頃に亡くなった。
ただ一つ、母は何度も言っていた。
「お前には、竜の血が流れている」
それは、優しい声ではなかった。
恐れと、祈りが混じった声だった。
「知られてはなりません。絶対に。人に知られれば、お前は王家に殺されます」
幼いリリアナには、その意味が分からなかった。
けれど十三歳の春、彼女は知った。
背中が熱を持ち、皮膚の奥から何かが押し出されるような感覚がした。
鏡の前で衣を脱いだ時、そこには小さな白銀の羽があった。
月光を集めたような、薄く美しい羽。
リリアナは声も出せず、ただ震えた。
それから彼女は、侍女を遠ざけるようになった。
着替えも、湯浴みも、できるだけ一人ですませた。
背中の開いたドレスなど、絶対に着なかった。
部屋から出ることも少なくなった。
祖父母は、そんなリリアナを心配していた。
「リリアナ。お前が人前を好まぬのは分かっている。だが、社交界のデビューだけは出てくれぬか」
祖父の声は穏やかだった。
祖母も、リリアナの手を優しく握った。
「伯爵家の令嬢として、一度だけでいいの。どうか、顔を見せてちょうだい」
リリアナは断れなかった。
祖父母は、いつも優しかった。
母を失ったリリアナを、孫として守ってくれた。
だから彼女は、うなずいた。
「分かりました、おじい様、おばあ様……」
地味なドレスにしよう。
髪飾りも控えめに。
誰の視線も集めなければいい。
そう思っていた。
*
同じ頃、北の城に新たな報告が届いた。
「リリアナ嬢が、王都の社交界でデビューするとのことです」
アーヴェルは立ち上がった。
「舞踏会に行くのか」
「はい」
「王家に奪われるわけにはいかぬ」
彼は漆黒のマントをつかんだ。
「私も王都へ向かう。すぐに準備しろ」
部下は青ざめた。
「辺境伯様が王都へ行かれるのは危険です。王家は今も、あなた様を警戒しております」
「分かっている」
アーヴェルは短く答えた。
「だが、私が行くしかない」
「何をなさるおつもりですか」
アーヴェルは窓の外を見た。
北の空は低く、雪雲が山を覆っている。
「助け出す」
部下は、しばらく返事ができなかった。
「……竜の子孫をですか」
「そうだ」
アーヴェルは、漆黒のマントを羽織った。
「彼女を守るために、この地へ連れてくるしかない」
*
王都の夜会は、まぶしいほど華やかだった。
高い天井からは無数の灯りが下がり、白い大理石の床には貴族たちの影が揺れている。
音楽が流れ、笑い声が広間に満ちていた。
リリアナは、その隅に立っていた。
薄い灰色のドレス。
飾り気の少ない髪。
背中を完全に覆う上着。
目立たない。
誰にも見られない。
そう願っていたのに、不意に視線を感じた。
広間の入り口に、一人の男が立っていた。
黒髪。
鋭い灰色の瞳。
背の高い、冷たい雰囲気の男。
けれど彼を最も目立たせていたのは、肩から流れる漆黒のマントだった。
リリアナの背中が、ぞくりと震えた。
まるで、体の奥に眠る血が反応したようだった。
男もまた、まっすぐリリアナを見ていた。
怖い。
そう思うのに、目をそらせなかった。
彼が近づいてくる。
「少し、話してもよいか」
低い声だった。
リリアナは戸惑いながらも、うなずいた。
「はい」
「リリアナ・エルフォード嬢で間違いないな」
「……はい。失礼ですが、あなたは?」
男は一瞬だけ黙った。
「アーヴェル」
それだけ言った。
辺境伯とは名乗らなかった。
リリアナも、目の前の男が噂に聞く竜殺しの辺境伯だとは気づかなかった。
ただ、不思議だった。
彼のそばにいると、背中の熱が静まる。
隠している羽が、怯えなくなる。
「あなたは、王都の方ではありませんね」
リリアナがそう言うと、アーヴェルは小さく笑った。
「よく分かったな」
「空気が違います」
「空気?」
「北の風のような……」
言いかけて、リリアナは恥ずかしくなった。
変なことを言った。
そう思ったのに、アーヴェルは真面目な顔でうなずいた。
「君は、風が分かるのか」
その言葉に、リリアナの胸が跳ねた。
まるで、自分の秘密を見抜かれたようだった。
その時だった。
広間の空気が変わった。
王が現れたのだ。
その隣には、宮廷魔導士たちが並んでいた。
中でも老いた魔導士が、杖をつきながら広間を見回す。
そして、突然叫んだ。
「陛下。この場に、竜の気が満ちております」
音楽が止まった。
広間が凍りつく。
貴族たちがざわめいた。
「竜だと?」
「まさか、王都に?」
老魔導士の視線が、アーヴェルに向く。
「そこにいる男……そのマント、その気配。竜の力を隠しておるな」
広間中の視線がアーヴェルへ集まった。
誰かが叫んだ。
「竜殺しの辺境伯だ!」
リリアナは息を呑んだ。
この人が。
竜を殺したという、あの辺境伯。
けれど老魔導士は、さらに目を細めた。
「いや……もう一つある」
その視線が、リリアナへ向いた。
「娘。そなたからも、竜の気がする」
リリアナの血の気が引いた。
背中が熱くなる。
だめ。
ここで羽が出たら。
王の目が鋭くなった。
「捕らえよ」
兵が動いた。
リリアナの足はすくんだ。
その瞬間、アーヴェルが彼女の前に立った。
「触れるな」
低い声だった。
だが、その一言で兵たちは動きを止めた。
アーヴェルの漆黒のマントが揺れる。
次の瞬間、マントの下から黒い翼が広がった。
広間に悲鳴が上がる。
「竜だ!」
「辺境伯が竜になった!」
アーヴェルはリリアナを抱き上げた。
「すまない。説明は空の上でする」
「えっ」
返事をする暇もなかった。
窓が砕ける。
夜風が吹き込む。
アーヴェルはリリアナを抱いたまま、王都の夜空へ飛び立った。
黒い翼が風を切る。
地上の灯りが、足元で小さくなっていく。
リリアナは、ただ彼の胸元にしがみつくことしかできなかった。
初めて、異性に抱きしめられている。
それも、竜殺しと恐れられる辺境伯に。
怖いはずだった。
けれど、彼の腕は強く、乱暴ではなかった。
落とさないように。
壊れ物を抱くように。
リリアナの体を大切に支えてくれている。
竜殺しだと思っていた男の腕は、思っていたよりもずっと優しかった。
そのことが、リリアナを一番混乱させた。
彼の胸元から、規則正しい鼓動が聞こえた。
それにつられるように、リリアナの心臓も激しく鳴る。
これは恐怖なのか。
それとも、別の何かなのか。
リリアナには分からなかった。
地上で怒号が上がる。
矢が飛ぶ。
魔法の光が追ってくる。
けれど、黒い翼は夜を裂いて進んでいく。
王都が小さくなっていく。
リリアナは震えながら、アーヴェルの胸元をつかんだ。
「あなたは……私を殺すのではないのですか」
アーヴェルは空を飛びながら、静かに答えた。
「殺すために十年探したのではない」
「では、なぜ……」
「君を守るためだ」
その声に、嘘はなかった。
二人は、王都から離れた森に降り立った。
リリアナの足は震えていた。
アーヴェルは、漆黒のマントを外し、彼女の肩にかけた。
そのマントに触れた瞬間、リリアナは息を呑んだ。
それは冷たく、重く、けれど不思議と懐かしかった。
「このマントは……」
「竜の皮で作られている」
リリアナは身をこわばらせた。
アーヴェルは、彼女の反応を見て、静かに首を振った。
「奪ったものではない。託されたものだ」
「託された……?」
アーヴェルは、森の奥へ視線を向けた。
「十年前、王国は最後に残った銀竜を討つため、北の山へ軍を送った」
彼の声は淡々としていた。
だが、その奥に深い痛みがあった。
「竜は争う気などなかった。だが、竜とはあまりに大きな存在だ。羽ばたくだけで竜巻が起こる。息を吸うだけで、山が焼ける」
リリアナは黙って聞いていた。
「竜に人を害する意思はない。けれど人にとっては、それだけで災害だった。兵たちは竜を恐れ、攻撃した。銀竜は逃げようとした。ただそれだけで、軍は全滅した」
アーヴェルは自分の手を見下ろした。
「生き残ったのは、私だけだった」
森の風が、黒い羽を揺らす。
「その時、銀竜の声が頭に流れ込んだ。声ではない。言葉でもない。だが、確かに思いが伝わった。私は驚き、念じるように答えた。すると、銀竜と会話ができた」
リリアナの胸が、強く鳴った。
アーヴェルは言った。
「銀竜はこう言った」
そして彼は、銀竜の言葉をそのまま語った。
「われらは人を害するつもりなどない。
竜は、戦いを好まぬ。
だが、人がわれらを害とみなすなら、仕方あるまい。
人の世に、われらの居場所はなかったのだ。
かつてわれは、人を知るために、人の姿となったことがある。
その時、人の娘と出会い、子を成した。
だが、われが人の姿でいられる時は短い。
その娘と添い遂げることはできなかった。
わが子は、今も王都にいると聞いている。
けれど、われはもう探しに行けぬ。
人の姿に変わる力はもうないのだ。
わが子は、人と竜の血を持つ子。
人の中で生きる道を、探してやってほしい。
それが叶うなら、われの命など惜しくはない」
リリアナは声を失った。
母が言っていた。
お前には竜の血が流れている、と。
父の記憶はない。
母は、愛する人と駆け落ちして自分を生んだ、と聞いていた。
では、その父とは。
「その銀竜が……私の父……?」
アーヴェルは静かにうなずいた。
「おそらくは」
「おそらく?」
「銀竜も、子の名までは知らなかった。ただ、王都にいると聞いていたと言った。私は十年探した。竜の血を持つ子を。ようやく見つけたのが、君だ」
リリアナは、自分の背中に意識を向けた。
恐ろしいものだと思っていた。
隠さなければならないものだと思っていた。
けれどこれは、父から受け継いだものだった。
会ったこともない父が、最後まで案じてくれた証だった。
「銀竜は、自らの血を私に与えた」
アーヴェルは続けた。
「竜にとって、血を与えることは命を渡すことだ。銀竜はそのまま死んだ」
リリアナの目から涙が落ちた。
「私は、その遺骸を王家に渡したくなかった。だから一部をマントにした。王家は、私が竜を殺し、皮を剥いで力を奪ったと思い込んだ」
「それで、竜殺しと……」
「そう呼ばれた方が都合がよかった。恐れられていれば、王都の者は北へ近づかない。竜の子孫を守るには、その名が必要だった」
リリアナはアーヴェルを見上げた。
怖いと思っていた。
竜殺しだと恐れていた。
だが目の前の男は、竜を殺したのではなかった。
竜の願いを背負った人だった。
「なぜ、王家はそこまで竜を恐れるのですか」
リリアナがそう尋ねると、アーヴェルの表情が少し険しくなった。
「王家は、竜と人の血が混ざることを恐れている」
「血が混ざることを……?」
「かつて、この国の王家には竜の血が流れていた。人と竜の血をあわせ持つ者こそ、本来の王の血筋だった」
リリアナは息を呑んだ。
「けれど、長き王宮の争いの中で、その血は失われた。少なくとも、今の王には竜の血がない」
アーヴェルの声が低くなる。
「だから現王は恐れている。竜の血を持つ者が現れれば、自分は正統な王ではないと示されるかもしれないからだ」
「だから……竜を?」
「災厄と呼び、狩り続けた。竜の血を持つ者を、次の王になり得る存在として根絶やしにするために」
リリアナは言葉を失った。
自分の羽は、ただの呪いではなかった。
隠さなければならない異形でもなかった。
王家が恐れた、古い血の証だった。
「君が捕まれば、自由はない」
アーヴェルは静かに言った。
「王家は君を殺すだろう」
リリアナは震えた。
アーヴェルは少しだけ視線をそらした。
「だから、危険でも来るしかなかった」
「なぜ、そこまで……」
「自由に飛び回れる場所を、君に与えたかった」
「私に……?」
「北なら、君は羽を隠さずにすむ」
アーヴェルは、自分の黒い羽を見た。
「それに、私も孤独だった」
その言葉は、とても小さかった。
リリアナは目を瞬く。
「孤独……?」
「私は竜の血を飲み、竜の力を得た。だが、人でも竜でもなくなった。誰にも理解されず、誰にも近づかれず、竜殺しと恐れられてきた」
アーヴェルは苦笑した。
「君が娘だとは、見つけるまで知らなかった。ただ、竜の血を持つ者がいるなら、守らねばならぬと思っていた」
リリアナは黙って聞いていた。
アーヴェルは少しだけ気まずそうに、彼女へ目を向ける。
「それと……逃げるためとはいえ、突然抱き上げたことはすまなかった」
リリアナの頬が、かっと熱くなった。
先ほどの感触を思い出してしまう。
強い腕。
近い胸元。
聞こえた鼓動。
「い、いえ……あれは、助けていただいたので……」
声が小さくなる。
アーヴェルは真面目な顔のまま続けた。
「私は君を王家へ渡すつもりはない」
「私は……あなたに守られる価値など……」
「ある」
アーヴェルは強く言った。
リリアナは目を見開く。
「君は、銀竜が命と引き換えに願った子だ。だが、それだけではない」
彼は少し言葉を探し、それから静かに続けた。
「今夜、君を見て分かった。私の中の竜の血が、君を守れと言っていた」
リリアナは驚いた。
その言葉は、命令のようで、祈りのようでもあった。
「竜の血が……」
「君のそばにいると、私の中の力が静まる。初めてだ。竜の血を飲んでから、ずっと荒れていたものが、君の前では静かになる」
リリアナは、自分の胸に手を当てた。
彼のそばにいると、自分の羽も怯えなくなる。
それは、同じだった。
「私も……あなたのそばにいると、背中の熱が怖くありません」
アーヴェルの灰色の瞳が、少しだけ揺れた。
その時、遠くで角笛が鳴った。
王都の追手だ。
アーヴェルは空を見上げる。
「王国は攻めてくるかもしれない」
リリアナは震えた。
「私のせいで……」
「違う」
アーヴェルは遮った。
「彼らは、君を恐れている。竜の血を持つ君が、本当の王の血筋かもしれないと恐れているだけだ」
彼はリリアナに手を差し出した。
「それでも、私は君を守る」
リリアナは、その手を見つめた。
逃げるために飛ぶのではない。
隠れるために羽を出すのでもない。
自分の意思で、この人と空へ行く。
けれど、彼女はまだ飛び方を知らなかった。
「私……飛べません」
小さく告げると、アーヴェルは少しだけ意外そうに瞬いた。
「羽はあるのにか」
「出すだけで怖くて……ちゃんと飛んだことはありません」
「なら、教える」
アーヴェルは当然のように言った。
リリアナは驚いた。
「今、ですか?」
「今だ。追手が来る」
アーヴェルは黒い翼を広げた。
「羽で空を叩こうとするな。風に体を預けろ。力を入れすぎれば落ちる」
「そんなことを言われても……」
「手を出せ」
リリアナがおそるおそる手を伸ばすと、アーヴェルはその手を取った。
大きな手だった。
先ほど抱き上げられた時と同じ、強くて、けれど優しい手。
「落ちそうになれば、私が支える」
その言葉に、リリアナは息を吸った。
背中が熱くなる。
白銀の羽が、ゆっくりと広がった。
最初の羽ばたきは、不格好だった。
体が傾く。
足が地面を離れかけて、すぐに戻る。
息が詰まる。
「怖がるな」
「怖いです!」
「なら、私だけを見ろ」
リリアナは、アーヴェルを見た。
灰色の瞳が、まっすぐ彼女を見ていた。
冷たいと噂された瞳は、今は少しも冷たくなかった。
一度、二度、三度。
白銀の羽が、風を受ける。
体が、ふわりと浮いた。
「……飛べた」
リリアナが呟くと、アーヴェルはわずかに笑った。
「まだ飛んだとは言えない。領地まで練習だ」
「厳しいのですね」
「心配するな。私が助ける」
その言葉に、リリアナの胸がまた高鳴った。
けれど今度は、恐怖だけではなかった。
アーヴェルが先に空へ上がる。
リリアナはその手を取ったまま、ぎこちなく羽ばたいた。
風が羽の下に入り込む。
体が軽くなる。
地面が少しずつ遠ざかる。
「前を見る」
アーヴェルの声がする。
「はい」
「息を止めるな」
「はい」
「怖ければ、私の手を離すな」
「……離しません」
黒い翼と白銀の翼が、夜明け前の空に並んだ。
森の向こうから、追手の灯りが近づいてくる。
だがリリアナは、もう地上だけを見ていなかった。
空がある。
自分にも、行ける場所がある。
二人は北へ向かって飛び始めた。
王都の灯りが消えていく。
山の向こうに、淡い朝日が昇り始めていた。
北の空は広かった。
冷たく、澄んでいて、どこまでも続いていた。
リリアナは初めて、隠すためではなく、恐れるためでもなく、自分の羽で風を受けた。
隣では、竜殺しの辺境伯が飛んでいる。
その黒いマントは、戦利品ではない。
最後の竜が命とともに託した、願いの証だった。
竜殺しの辺境伯。
けれど本当は、竜を殺した男ではなかった。
竜の血を飲み、竜の願いを背負い、竜の子孫を探し続けた人だった。
リリアナは朝日の中で、そっと笑った。
もう、羽を隠さなくていい。
もう、自分を呪わなくていい。
白銀の翼は、北の空でまばゆく輝いた。
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